両親媒性ポリマーで血管内皮をコーティングし免疫反応を抑制
寺村裕治研究グループ長らの研究グループは、スウェーデンのiCoat Medical社とウプサラ大学と共同で、腎臓の血管内皮を両親媒性ポリマーでコーティングすることで、移植後に起こる虚血再灌流障害を抑制する技術を開発しました。
腎移植は重症の腎疾患患者が人工透析を回避できる唯一の治療法で、移植した腎臓が長期にわたって患者の体内で生着することが重要です。そのためには移植時に起こる、臓器の損傷を引き起こす免疫反応を抑制する必要があります。本研究では、ポリエチレングリコール(PEG)とリン脂質との結合体である両親媒性高分子、PEG脂質によるコーティング技術を腎臓内の血管内皮表面に適用し、移植後の免疫反応の一つである虚血再灌流障害が抑制されることを、ブタを用いた動物実験により明らかにしました。
虚血再灌流障害を抑制できる薬剤は見いだされておらず、移植外科の経験と手技に大きく依存しています。開発したコーティング技術はヒト腎移植の生着率向上に寄与すると期待され、現在、本技術を活用した臨床試験を進めています。
なお、この技術の詳細は、2025年9月24日に「American Journal of Transplantation」にオンライン掲載されました。
※詳細は図下のプレスリリースをご覧ください。

プレスリリース
共同研究機関
- iCoat Medical社、ウプサラ大学(いずれもスウェーデン)
投稿論文
- 掲載誌:American Journal of Transplantation, 24th September 2025
- 論文タイトル:A new principle to attenuate ischemia reperfusion injury in kidney transplantation
- 著者:Ali-Reza Biglarnia*, Yuji Teramura*(*equally contributed), Sana Asif, Claudia Dührkop, Vivek Arnand Manivel, Elin Manell, Patricia Hedenqvist, Anneli Rydén, Felix Sellberg, Karin Fromell, Sabine Hammer, Markus Huber-Lang, Kristina N Ekdahl, Marianne Jensen-Waern, Bo Nilsson