国立研究開発法人
産業技術総合研究所
中国センター
■ウェブサイト | :機能化学研究部門 | https://unit.aist.go.jp/ischem/ |
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:有機材料診断グループ | https://unit.aist.go.jp/ischem/ischem-omd/index.html | |
:セルロース材料グループ | https://unit.aist.go.jp/ischem/ischem-clm/index.html |
■ 所在地:
〒739-0046 広島県東広島市鏡山3-11-32
機能化学研究部門
佐 藤 浩 昭
Sato Hiroaki
研究部門長
出身 | 神奈川県 |
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- 得意な材料評価技術
- 高分解能質量分析法を用いた分子構造解析
企業連携を進めるうえでのポイントは何ですか?
まずは、企業の方とコミュニケーションをとって、どこに課題があるのかをしっかりと見極めることです。私たちは、目の前の課題に対するご要望やご相談にそのまま応えるのではなく、その課題の本質や企業活動上の制約まできちんと見極めて解決策を提案することを心がけています。課題解決の提案は研究者としての知識経験と洞察力が試される知的ゲームだと思いますので、簡単ではありませんがとてもやりがいがあります。
水 門 潤 治
Mizukado Junji
副研究部門長
(兼務)
出身 | 東京(新潟生まれ、鹿児島育ち) |
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- 得意な材料評価技術
- 高分子材料の劣化メカニズム解析
材料診断プラットフォームについて教えて下さい。
材料診断プラットフォームでは、様々な先端分析機器を駆使して樹脂やゴム材料等の総合的な分析評価を行います。その結果に基づいて材料特性を左右する構造情報や不具合の根本的な要因を明らかにして、開発指針や解決策を企業にご提案することを目的とします。私たちはサプライチェーン上の様々な企業との連携実績をもとに、産業界が抱える共通課題を俯瞰できることが強みです。材料診断プラットフォームによる企業連携を通じて、我が国の産業競争力の向上に貢献したいと考えています。
高分子材料の劣化解析について教えて下さい。
樹脂やゴム材料の劣化メカニズムの解析には、高分子特有の複雑な分子構造や高次構造、添加剤などの配合を理解する必要があります。高分子材料が熱や光などにより劣化すると、構造や組成が変化するため分析や解析が更に難しくなります。材料診断プラットフォームには、ミクロの化学構造からマクロの物性まで幅広い分析評価技術と専門知識を持つ研究者が集まっていることが強みです。企業の皆様と密接に連携して分析・評価を行い、結果を踏まえた議論を通じて劣化に関する課題の解決を目指します。
有機材料診断グループ
青 柳 将
Aoyagi Masaru
研究グループ長
出身 | 東京都 |
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- 得意な材料評価技術
- NMRを用いた化学構造分析
有機材料診断について教えて下さい。
プラスチックやゴムなどの高分子材料の構造と、耐久性や劣化状態などの相関について、化学的な解明を行っています。NMRなどの装置を利用し、低分子モデル反応や精密化学構造解析技術を活用する架橋反応、熱酸化反応メカニズムの解明などを通じて、企業の方がお持ちになった課題の解決や材料開発を支援します。私たちのグループには、様々な分野の専門家がいます。材料「診断」と呼ぶのは、医師のカンファレンスのようにグループで課題を共有し、話し合い、そこから様々な測定を組み合わせることで解明を行うからです。産総研・つくばセンターなどと協力し、専門的に解析を行います。
有機材料診断のやりがいについて教えて下さい。
例えば病院でも、医者と患者の信頼関係がないと診察もスムーズにいきません。相談に来られた方との信頼関係を築きながら課題を解明し、答えが出た時に「ありがとう」と喜んでいただけるのが嬉しいです。企業の方を阿吽の呼吸で支援できたらと思っています。
長 谷 朝 博
Nagatani Asahiro
主任研究員
出身 | 大阪府 |
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- 得意な材料評価技術
- ゴム材料の成形加工、複合材料の微細構造解析
主に行っている材料評価技術について教えて下さい。
各種密閉型混練機やオープンロールを用いたゴム混練技術を駆使し、ゴムを母材としたブレンド材料や複合材料の開発に取り組んでいます。作製した材料の微細構造を原子間力顕微鏡や電子顕微鏡で観察し、微細構造制御による材料の高性能化や高機能化を図っています。各種顕微鏡による微細構造観察の際には試料の前処理加工が必要ですが、クライオウルトラミクロトームによるゴム材料の面出し、超薄切片の作製も行っています。
どのような企業の方に、貢献できると思いますか。
産総研に入所する前は、ゴム産業が盛んな兵庫県の公設研でゴム材料に関する試験研究に取り組み、中小企業からの様々な技術相談に応えてきました。これまでの技術相談で培った経験や技術をもとに、企業の方々のゴム分野のお困りごとにお応えします。また、ゴムの混練・成形加工のためのプロセス設備、化学構造解析や耐久性評価のための分析・評価設備が整備されたことから、これらの設備の活用と様々な分野の専門家による総合的な材料診断により、企業の皆様が抱えている技術課題の解決につなげていきたいと考えています。
花 岡 寿 明
Hanaoka Toshiaki
主任研究員
出身 | 愛媛県 |
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- 得意な材料評価技術
- 熱分解GCMS、LCAに基づいたCO2排出量評価
主に行っている材料評価技術について教えて下さい。
熱分解GCMSは、高分子材料の化学構造や添加剤の有無を評価する技術です。測定サンプルを加熱し、分解することで得られる破片の情報を集め、高分子材料および添加物の化学構造を予測します。測定サンプルは、基本的に複雑な前処理が不要であり、0.1~0.2 mg程度の非常に少量で測定可能です。少量サンプルの化学構造が知りたい、添加物の有無、その構造が知りたい場合に威力を発揮すると考えています。
今後連携してみたい企業や産業があったら教えて下さい。
CSRやESG投資の機運が高まっており、今後はバイオマス由来の高分子材料を積極的に普及させる必要があるのではないかと考えます。原料が変わると、製造工程も変わり、含有物だけでなく、製造コスト、CO2 排出量も変わります。プロセスシミュレーションに携わった経験もあります。バイオマス由来の高分子材料を扱う産業において、品質管理だけでなく、製造コスト、さらにサプライチェーンも含んだCO2 排出量の評価など、ご相談いただきたいです。
藤 本 真 司
Fujimoto Shinji
主任研究員
出身 | 山口県 |
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- 得意な材料評価技術
- 顕微赤外分光分析、主成分分析、二次元相関分析
主に行っている材料評価技術について教えて下さい。
顕微赤外分光分析などを担当していますが、シミュレーションの分野での経験があるため、数学的な処理を行い、多角的な視点から相関関係を見つけ出す分析を行うことが得意です。通常、スペクトルを眺めただけでは見えない材料中での複雑な現象も、主成分解析や二次元相関などの数学的な処理を用いるとピーク間の相関関係などがあぶり出されて、解明することが可能になります。また、単一の機器だけではなく様々な分析機器から得られるデータを複合して判断する必要も出てきます。昨今ではそのような大量のデータから重要なデータをマイニングしながら診断を行うことも可能になってきています。産総研の材料診断では、ビッグデータを解析する「材料診断インフォマティクス」の研究も進んでいます。
材料診断についてどのような思いがありますか。
趣味は音楽活動なのですが、いろいろな楽器の音が重なることで、曲の持つ世界観が広がっていきます。企業の方が「一人ではできない」何かを共に発展させていくことができるのが、産総研の材料診断だと思っています。
渡 邊 宏 臣
Watanabe Hiroomi
主任研究員
出身 | 埼玉県 |
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- 得意な材料評価技術
- 力学物性解析、表面・界面分析技術
主に行っている材料評価技術について教えて下さい。
昨今、技術の革新に伴い、材料がどんどん「薄く」なっています。そういった薄膜になると、材料の信頼性や安全に深くかかわる力学強度試験が、通常の引張試験機では実施できません。そこで、金属の張り出し変形性を調べるために使われるバルジ試験を応用し、薄膜に特化した力学物性解析を行うことができる装置を開発しました。この装置を使うと、従来の手法では強度を計測できないサブミクロン以下の厚さの薄膜や破けやすい薄膜、さらには非常に柔らかい薄膜でも、力学物性を知ることができます。
どのような企業の方に、貢献できると思いますか。
例えば、燃料電池の電解質膜やリチウムイオンバッテリーのセパレーター、各種の分離透過膜など、高分子やセラミクスさらには金属等の材質に関わらずナノな厚さの薄膜や破けやすい薄膜、柔らかい薄膜を解析されたい際には、ぜひご相談いただければと思います。測定についてだけでなく、評価装置の作り方や、解析におけるノウハウもお話させていただいています。
藤 田 康 彦
Fujita Yasuhiko
主任研究員
出身 | 滋賀県 |
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- 得意な材料評価技術
- 光を用いたナノレベルの化学構造解析法の開発と応用
主に行っている材料評価技術について教えて下さい。
材料の化学構造の分析法として、光を利用した分光法が広く利用されています。バルク〜ミクロンまで、様々なスケールでの分析が可能であり、その有用性は言うまでもありません。ところが近年、材料の高度化に伴い、空間分解能が不足するケースが出てきました。例えば、SDGs実現に重要な機能性材料では、内部のナノ構造化が機能性発現の鍵と言われています。そこで私たちは、ナノメートルの空間分解能をもつ、新しい分光法を研究開発しています。AFM–IR法と呼ばれる最新の手法では、100ナノメートルを切る非常に高い空間分解能が達成できており、高分子などの各種材料の微視的な化学構造解析が可能です。
どのような企業の方に、貢献できると思いますか。
先端ナノ計測はフロンティアであり、創意工夫でさらなる発展が見込める分野です。将来的には、新規材料開発を足元から支える基盤分析技術にもなり得ます。ナノ計測で社会を変えるという信念のもと、日々研究開発に取り組み、お困りごとの解決に貢献します。相状態や界面をもっと微細に構造解析したいなど、お力になれるケースもありますので、ぜひお気軽にご相談ください。
伊 藤 祥太郎
Ito Shotaro
主任研究員
出身 | 神奈川県 |
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- 得意な材料評価技術
- ポリマーの反応メカニズム解析・構造解析
主に行っている材料評価技術について教えて下さい。
ポリマーの反応メカニズム解析や構造解析を行っています。お客様の分析対象は複雑な混合物のため分析が難しいことが多いのですが、鍵となる硬化反応などの架橋メカニズムや生成物の構造解析を行うために、合成技術を駆使して「モデル反応解析」を行っています。モデル反応解析では、ポリマーの架橋部位などを低分子化合物のモデル材料で置き換えて、実際のポリマー材料と類似した反応を再現します。実材料に比べ生成物の詳細な構造解析が可能で、反応メカニズムを調べることが容易になります。
どのような企業の方に、貢献できると思いますか。
モデル反応解析は、複雑な混合物からなるゴム材料や塗料などの熱硬化性樹脂の架橋反応メカニズムの解析に役立てることができます。また、添加剤を加えたら硬化反応が阻害されてしまった、などのお困りごとの原因究明にもモデル反応解析が有効です。さらに、架橋部位の分解反応をモデル化すれば材料のリサイクル条件を検討することも可能では、と考えています。
セルロース材料グループ
榊 原 圭 太
Sakakibara Keita
研究グループ長
出身 | 静岡県 |
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- 得意な材料評価技術
- ナノセルロースの化学構造解析・形態観察・表面分析
セルロース材料グループの特徴について教えて下さい。
ナノセルロースは木や草、農産物等のバイオマスに由来する持続型資源であり、石油由来資源の代替や削減、炭素固定化など、サーキュラーエコノミー社会実現のための重要な素材と位置付けられます。そうした中、セルロース材料グループでは、ナノセルロースの製造から構造・物性評価、機能解析、複合化、応用展開まで一貫して研究開発することをモットーとした、「作る-知る-使う」のサイクルによる技術開発を推進しています。さらに、企業様や大学・公的機関様とともにナノセルロースの社会実装を目指す協働・協業の場である「なのセルロース工房」の運営に携わっております。
セルロース材料の材料診断について教えて下さい。
ナノセルロースや高分子複合材料に関して、電子顕微鏡や原子間力顕微鏡などによる幅や長さなどの形態観察や表面観察、NMRやIRなどによる化学構造解析、レオロジーなどの物性解析など、多角的・複合的な視点から詳細に分析しています。詳細な分析を行うことで特性発現のメカニズム解明に繋がるため、他材料との違いの解明や次の材料設計の立案などに貢献しています。
井 上 誠 一
Inoue Seiichi
主任研究員
出身 | 東京都 |
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- 得意な材料評価技術
- 熱処理によるナノ構造炭素化物の製造
主に行っている材料評価技術について教えて下さい。
ナノセルロースや、バイオマスなどを熱処理した際に得られる成分(炭素化物)の分析などを主として行っています。ナノセルロースは非常に小さく他の素材より比表面積が大きいというメリットがあり、吸着剤としておむつや消臭剤にも利用されています。ナノセルロースの構造は熱処理によって凝集する特性がありますが、ナノ形態のまま炭素化させることを目指した研究も行っています。これらの炭素化物は、電気や電子など多彩な分野で利用できる新しいナノカーボン材料として期待されています。
企業の方にメッセージをお願いします。
天然素材というのは、地球環境にやさしい素材です。プラスチックの利用をやめようという動きが進む中で、ナノセルロースのような天然由来で環境調和型の素材を利用するためには、一定のコストがかかることは否めません。「ナノセルロースを使ってみたいけど」とご相談を受けることが多いですが、材料、用途のみならず、コスト面についてもご一緒に考えていきたいと思っています。
熊 谷 明 夫
Kumagai Akio
主任研究員
出身 | 兵庫県 |
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- 得意な材料評価技術
- QCMを用いたナノセルロースでの評価
- 各種顕微鏡を用いた材料の形態・構造解析
主に行っている材料評価技術について教えて下さい。
QCM(水晶振動子マイクロバランス)はナノグラムオーダーの微小な重さを量る装置です。このQCMのセンサーの表面にナノセルロースの薄膜を均一にコートする技術で、ナノセルロース上における微細な吸脱着や、その表面で起こる化学反応の分析などを行っています。様々な原料からナノセルロースが作られていますが、その表面を構成している成分の分析や、色素や材料系の成分の吸脱着、準じて洗剤による汚れの脱離なども分析することが可能です。また、QCMは化学反応による重さの変化をリアルタイムで検出するので、物質同士の相互作用や、化学反応の速度についても知ることができます。
どのような産業に貢献できる技術ですか。
セルロースは補強材として樹脂と組み合わされることも多いですが、親・疎水性の違いから多くの課題もあります。QCMを利用すれば凝集しやすいナノセルロースを元の形状のまま、対象の物質と吸着させ、相性を見ることができます。ナノセルロースの特徴をしっかりと活かしながら、必要な機能を発現させた材料を設計する際の大きな一助になると思います。
神 内 直 人
Kamiuchi Naoto
主任研究員
出身 | 京都府 |
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- 得意な材料評価技術
- 透過型電子顕微鏡(TEM)を用いたナノ構造解析
主に行っている材料評価技術について教えて下さい。
原子分解能TEMを駆使し、ゴムや樹脂などの複合材料のナノ構造を観察・分析しています。樹脂材料は電子線照射に対して非常に敏感であるため、ダメージが最小になるような観察条件の検討を行っています。このダメージレス観察法を駆使し、TEM観察からは、フィラーの形状や分散状態、マトリクス樹脂のラメラ構造、フィラーとマトリクスの界面構造をナノスケールで明らかにします。また、EDSやEELS分析からは、元素分布や化学結合状態を評価します。さらに、トモグラフィー法やマイクロ電子回折(ED)法により、複合材料の三次元構造を再構築することにも取り組んでいます。
どのような企業の方に、貢献できると思いますか。
フィラーの分散状態や界面構造など、ナノ構造の知見に基づいた高性能な複合材料の新規開発を目指される方にご相談いただければと思います。異なる性能を示す材料や劣化前後の材料の構造・元素分布を比較検討することで、新たな設計指針が得られます。また、ゴム・樹脂材料だけでなく、無機材料を研究してきた経験も持ち合わせているため、広い視点で貢献できると思います。
引 間 悠 太
Hikima Yuta
主任研究員
出身 | 埼玉県 |
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- 得意な材料評価技術
- 樹脂成形加工プロセスのインライン分析と結晶化挙動解析
主に行っている材料評価技術について教えて下さい。
樹脂複合材料の成形加工中に、装置内の材料をインライン分光分析する技術を開発しています。成形中の材料の化学構造や組成の変化をリアルタイムで測定できます。そのため、成形条件や材料配合を変化させた際に、成形装置内で何が起きているかを迅速に調べることができ、成形条件の最適化や品質管理に利用できます。また、超高速示差走査熱量測定という方法を用いて、実際の成形加工プロセスに相当するような急冷過程で、樹脂がどのように固まるかを調べています。この方法を用いることで、結晶核剤等の機能性添加剤の開発や、複合材料の成形性評価に利用できると考えています。
どのような企業の方に、貢献できると思いますか。
樹脂メーカー、樹脂製品メーカー、成形機械メーカーなど、樹脂材料の成形加工に関わる企業の方々へ広く貢献できると考えています。近年では原料樹脂や添加物などの多様化、複雑化により、成形中に生じたトラブルの原因解明や、適切な成形条件の探索がますます大変になってきています。分析データを解析し、成形加工プロセスへとフィードバックすることで、材料開発・製造の高速化や省資源化に貢献できます。-state NMR法の特徴です。また、セルロースは人工透析膜やキラル分割カラムでも利用されているので、この分析法で吸着や分割のメカニズムを解明することで医療分野などにも貢献していけるのではと思っています。
齋 藤 靖 子
Saito Yasuko
主任研究員
出身 | 長崎県 |
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- 得意な材料評価技術
- セルロース・木材の化学構造分析
主に行っている材料評価技術について教えて下さい。
これまで溶液NMRでの分析が困難だったサンプルの化学構造解析を行っています。主に扱っているセルロースは、汎用溶媒に溶けないため分析が難しいとされていますが、gel-state NMR法を採用し、サンプルの調製法と測定条件を工夫することで精密構造解析を可能にしました。この方法は元来、植物の細胞壁を分析する方法として提唱されたものですが、これに改良を加え、疎水化したセルロースや樹脂、ゴムを測定する方法を新たに見つけています。分析結果をもとに、目的に適したセルロースの化学修飾法や反応条件の改良法を提案しています。
今後、どのような産業に役立つと思いますか。
例えば有機顔料や架橋ポリマーなど、溶媒には溶けない材料の構造解析はぜひご相談いただければと思います。化学修飾による可溶化処理のような、手間のかかる工程が不要なのがgel-state NMR法の特徴です。また、セルロースは人工透析膜やキラル分割カラムでも利用されているので、この分析法で吸着や分割のメカニズムを解明することで医療分野などにも貢献していけるのではと思っています。
中 山 超
Nakayama Koyuru
研究員
出身 | 北海道 |
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- 得意な材料評価技術
- 分光分析、多変量解析、劣化分析、安定化技術
主に行っている材料評価技術について教えて下さい。
固体核磁気共鳴分光器(NMR)、赤外分光器(IR)で、プラスチック複合材の構造解析を進めています。ここで得られたスペクトルを多変量解析に供することで、これまで見過ごしていた構造・物性情報を取得し、材料を評価しています。他にも、プラスチック複合材の最適な成形加工条件をデータ駆動型アプローチによって評価し、適したプロセス条件を提供できる手法を開発しています。また、プラスチックの疲労特性を評価することで、リサイクル・リユース性能の向上をめざしています。
どのような企業の方に、貢献できると思いますか。
これまで汎用性プラスチックだけではなく、生体高分子(シルク、セルロース)を取り扱ってきました。生体高分子を構造材料として使用するために、複雑な劣化機構を多変量解析によって明らかにし、その後、機械学習を用いてその安定化技術の開発に取り組んできました。また、固体NMRを用いて植物由来の生体高分子繊維の構造解析や配向分析を分析してきました。これらの知見でゴム、プラスチック、食品メーカーに貢献できると考えています。
部門長として何を心がけていますか。
研究は「一人一人」が主人公です。部門メンバー皆に高いモチベーションで従事できる研究環境を提供するのが私の役割と考えています。また、社会の要請に応えられる適切な研究テーマを考える意識付けや、部門メンバーを外部機関へ派遣して視野を広げるなど、部門内の人材育成にも力を入れています。中国センターおよびつくばセンター両拠点の部門メンバーが緊密な一体感を持ち、そして、研究者個人の能力を高度に結集したチームでの突破力を駆使することで、企業連携を通じた社会課題の解決を最重要テーマとして取り組みます。