機器を利用したSEM断面試料作製

事例No.

OK-0039

概要

複合材料の内部をSEMで観察するためには、内部の構造を露出させる必要があります。一般に、ゴムや樹脂は常温で柔らかく、熱による影響を受けやすいため、液体窒素で冷却してから、イオンミリングで加工したりウルトラミクロトームで切削したりして断面を作製します。このような手法によって作製した観察面は平滑性に優れています。

お困りごと・要望

複合材料の断面試料を作製したい。
断面作製中の試料の変形や熱による損傷を抑えたい。

事例提供機関

分析方法

1.イオンミリングによる断面作製
 イオンミリングでは刃物(ダイヤモンドナイフ等)を用いないために、機械的なダメージを受けにくいという特徴があります。分析写真はHIPS/CaCO3ブレンドを液体窒素で冷却しながら、Arイオンビームで断面加工して得られた断面のSEM画像です。
2.ウルトラミクロトームによる断面作製
 ウルトラミクロトームによる断面作成は、イオンミリングによる断面作成と比較して、所要時間が短いという特徴があります。分析写真はPP/HIPSブレンドを液体窒素で冷却しながら、ダイヤモンドナイフで切削して得られた断面のSEM画像です。
 PP/HIPSブレンドはC、Hのみで構成されているため、SEM像ではコントラストがほとんどない平坦面となります。そのため、四酸化ルテニウムをHIPSに、四酸化オスミウムをHIP中のブタジエンと反応させ(電子染色)、SEM像にコントラストを付与します。

分析結果

1.イオンミリングにより平坦な面が作製されており、長辺は10μmを超えるCaCO3粒子が観察されています。比較的大きい無機物を含む場合も、イオンミリングで平滑な断面を得ることができています。
2.PPにHIPSが分散する海島構造を形成しています。左の画像は、四酸化ルテニウムがHIPS全体を染色するため、PP/HIPS中のHIPS粒子全体が明るく観察されています。一方、右の画像は、四酸化オスミウムがHIPS中のブタジエン粒子を染色するため、PP/HIPS中のHIPSに含まれているブタジエン粒子が明るく観察されています。このように、適切な電子染色剤を使用することにより、構成元素が似通っている高分子複合材料でも、高分子種ごとの分散構造が観察可能になります。

関連装置

適用可能な材料

樹脂・ゴム一般