液体窒素冷却割断によるSEM断面試料作成

事例No.

OK-0038

概要

SEMにより複合材料の内部構造を観察する場合には、内部の断面を露出させる必要があります。凍結状態で切断する手法で試料断面を作製するには、専用の装置を用い、長時間かけて観察試料を作製する必要があります。一方、液体窒素中で凍結した状態で力をかけて試料を割ることができれば、短時間で観察試料を作製することができます。そこで、試料を短冊状に切り出し、両側から切り込みを入れて液体窒素中で冷却したのち、両端を治具でつかみ割断します。

お困りごと・要望

手軽に断面SEM試料を作製したい

事例提供機関

サンプル

試料1 天然ゴムシート
試料2 ポリエチレン(PE)/ポリアミド(PA6)ブレンド

分析方法

1. 試料を扱いやすい大きさにして、割断位置に合わせ切り込みを入れます。
 サンプル画像1はイメージです。実際の割断試料の形状は、試料の厚さ、使用する器具の大きさ、作業者の力に合わせて調整します。
2. 試料を液体窒素に投入し、十分冷却します。
3. 治具の試料と接する部分を液体窒素に浸して冷却してから、1の切り込みの両側をつかみ、一気に割断します。
4. 試料を室温に戻します。
5. 必要に応じて電子染色、導電性コーティングを行います。
 今回、サンプル2(PE/PA6ブレンド)は、りんタングステン酸でPA6を電子染色しました。
6. SEM観察を行います。

分析結果

1の天然ゴムシートの破断面からは、中に含まれていた炭酸カルシウム粒子の大きさ、分散状態の他に、CaCO3の脱落痕も観察されます。
2の二次電子像では、1μm程度の球状粒子と凹部があり、凹部は球状粒子の脱落痕と考えられます。反射電子像では直径1μmの領域が明るく観察され、これはリンタングステン酸で染色されたPA6と考えられます。
同一視野の二次電子像と反射電子像を比較することで、このPE/PA6ブレンドは、PEを海、PA6を約1μmの島とした相分離構造をとることがわかります。

関連装置