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ヒ素による地下水環境の汚染(地質汚染)を原因とする健康被害はアジアを中心に広範囲に生じています。ヒ素で汚染された地下水を浄化できる微生物、例えばヒ素蓄積細菌が存在する場合にはバイオレメディエーションに有効に利用できると期待されます。私たちは、海洋細菌のMarinomonas communis がヒ素に高い耐性を持ち、かつヒ素を高濃度に蓄積できることを世界で初めて発見しました。この微生物はヒ素を積極的に体内に取り入れ、細胞膜や細胞質にもヒ素を取りこんでいました。2010年にNASAのグループが、系統的に近い微生物がヒ素だけを与えた場合(リン酸を与えない環境で)にも増殖できることを報告しましたが、このようなヒ素蓄積細菌は、基礎研究としての先端研究であるとともに、これからの環境バイオテクノロジーに有効に利用できると期待されます。
参考文献:Takeuchi et al. (2007) Journal of Biotechnology 127, 434-442. |
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6.微生物を利用した天然ガス田地域の低コスト地質汚染浄化法の開発
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高濃度のメタンを含むガス田地域では、断層などを通じてメタンが地表近くまででてきており、農作物への影響や爆発リスク、地球温暖化の観点で問題になっています。一方、このようなガス田地域の浅層地下水では、地下から供給されるメタンと大気や表層水から供給される酸素が共存するため、好気性メタン酸化細菌が多く存在する場合があることがわかりました。好気性メタン酸化細菌は揮発性有機塩素化合物を分解する能力を持っていることから、この好気性メタン酸化細菌を豊富に含む天然資源を有効に活用した低コストな地質汚染浄化法が可能と考えられています。これが可能になれば、汚染浄化が促進されるだけでなく、問題視されていた表層メタンを有効に活用することができます。現在この技術を実用化するためのさらに詳細な研究を民間企業と共同で行っています。
参考文献:Takeuchi et al. (2004) Environmental Geology 45, 891-898. |
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7.陸域地下圏における微生物による嫌気的メタン酸化の発見
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メタンは主要な地球温暖化ガスの一つです。海底地下圏では深いところでメタン生成菌によって生成されたメタンが、表層に達する前に嫌気的メタン酸化古細菌(ANME)によって酸化され、大気への放出が大きく抑制されていることが知られています。一方、陸域地下圏における嫌気的メタン酸化活動についてはほとんど知られていませんでしたが、私たちの研究により、海底のANMEとは系統的に異なるサブグループの古細菌(ANME-1aFW)が、淡水を含む沖積層の陸域地下圏において嫌気的メタン酸化に関与していることが明らかになってきました。これまでに淡水環境ではバクテリアによる嫌気的メタン酸化が生じていることは知られていましたが、古細菌による嫌気的メタン酸化の詳細を解明したのは初めてです。これらの微生物が陸域地下圏の炭素循環においてどの程度寄与しているのか、興味深いところです。
参考文献:Takeuchi et al. (2011) Environmental Microbiology 13(12), 3206-3218. |
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8.共生培養を用いたメタン生成菌による水素同位体分別の評価
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多くの油田やガス田、メタンハイドレートには、微生物によって作られたメタンガスが含まれています。それら微生物起源のメタンの水素同位体比は、環境によって様々な値を取ることが知られています。これまで地球化学的な研究によって、メタンの水素同位体比は微生物によるメタン生成経路の違いを反映していると解釈されてきましたが、微生物を用いた培養実験では自然環境中の値と大きく異なる結果しか得られていませんでした。私たちは、自然環境を模擬した共生培養によってメタン生成実験を行いました。メタン生成菌による水素同位体分別を調べた結果、共生培養によって作られたメタンの水素は水から来ていることが分かりました。また、メタンと水の水素同位体比の関係は、淡水環境で作られるメタンと水の水素同位体比の関係に類似していたことから、共生培養がより忠実に自然を模擬した系になっていることが分かりました。
参考文献: Yoshioka et al.,(2008) Geochimica et Cosmochimica Acta 72, 2687-2694
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9.バイオマーカーによる生息メタン生成菌のバイオマス評価法の開発と適用
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水溶性ガス田や海底のメタンハイドレートができるプロセスを解明するためには、メタンの生産者であるメタン生成菌が地下にどれくらい分布しているのか知ることが必要です。その手がかりとなるのは、掘削等で得られる地下の堆積物試料に含まれるメタン生成菌の全体量、バイオマスです。私たちは脂質分析によってこれを評価する方法を開発しました。メタン生成菌はヒドロキシアーキールという特徴的な膜脂質成分を作ります。この成分は、菌が生きている間はリン酸や糖などが結合した極性ヒドロキシアーキオールとして存在します。極性ヒドロキシアーキオールは、そのままでは揮発性が低く、ガスクロマトグラフで測定できません。私たちは、堆積物の溶媒抽出で得られる全脂質をシリカゲルカラムで分画し、極性の高い画分を、塩酸を含むメタノールで加水分解することで、極性ヒドロキシアーキオールをモノフィタニルグリセロールエーテルに変換し、ガスクロマトグラフで定量する技術を確立しました。
参考文献:Oba et al., (2006)Organic Geochemistry 37, 1643-1654.
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10.水溶性天然ガス田における地下微生物によるメタン生成活動
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千葉県や新潟県などには水溶性ガス田が分布し、メタンを主な成分とする天然ガスが産出されています。それらのメタンの起源については、ガスの組成や同位体分析などの地化学的な研究によって微生物によって作られたと推定されていますが、実際、地下における微生物の分布や活動についてはほとんど分かっていません。私たちは、微生物起源と考えられている水溶性天然ガス田において、堆積物や地層水を採取し、そこに含まれている微生物やメタン生成活動について調べています。これまでのところ、ガス田の地下にメタンを作る微生物が生息し、メタンを作る活性があることが分かってきています。これらは、昔メタンガスを作った微生物が細々と生き延びているのか、現在もなお微生物がメタンを作り続けているのかを明らかにしたいと考えています。
参考文献:Mochimaru et al., (2007) Geomicrobiology Journal 24. 93-100.
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近年、地下深部に微生物(地下微生物と呼びます)が分布していることが分かってきました。私たちは、千葉や新潟の水溶性ガス田の地下に微生物、特に、メタン生成菌がいないか調べています。地下は太陽光が届かないので光合成もできず物質の流れもほとんど無い環境なので、表層の微生物とは異なった系統の微生物が存在していると考えられ、微生物学的にたいへん興味深い環境です。一方で、水溶性ガス田には微生物が作ったメタンが溜まっていることから、ガス田の成因を解明するためには、どんな微生物がいるのか知ることはとても重要です。私たちは、千葉の水溶性天然ガス井から、メタノール、メチルアミン類を利用する新種のメタン生成菌を発見しました。この菌の他にも千葉のガス田からもう1種、新潟のガス田から1種、新種提案予定のメタン生成の分離に成功しています。
参考文献:Mochimaru et al., (2009) IJSEM 59, 714-718.
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