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坂東 誠二氏 (住友精化株式会社)、平成24年度日本粘土学会技術賞受賞!!

 

 

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平成24年9月7日に開催された平成24年度日本粘土学会総会(会場:梨花女子大學、韓国)の表彰式において、住友精化株式会社の坂東誠二氏が「技術賞」を授与されました。「粘土を主成分とした不燃フィルム材利用の開発」を行った業績が認められたものです。同賞は、粘土関連産業において重要な技術的貢献をしたものに贈られる賞であり、Clayteam会員である坂東氏の受賞は、Clayteamにとっても大変喜ばしいニュースです。なお、平成24年11月13日に開催される"The 3rd International Symposium on Advanced Composite Materials / The 11th Clayteam Seminar"(主催:Clayteam、会場:産総研臨海副都心センター)では、同社見正大祐氏による講演が予定されております。

 

 

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平成24年度日本粘土学会技術賞
坂東 誠二氏

住友精化株式会社 精密化学品研究所

 

業績:粘土を主成分とした不燃フィルム材利用の開発

 

内容:

 

近年、様々な分野において有機高分子フィルムに代わる耐熱性、寸法安定性、ガスバリア性等に優れた高機能フィルム材料が求められている。例えばフレキシブルデバイス基板材料では、耐熱性、機械強度、絶縁性に優れたポリイミドフィルムが多く用いられているが、さらなる耐熱性の向上、熱伝導性の向上、線膨張係数の低下、誘電率の低下等が求められている。また太陽電池バックシートにおいては水蒸気バリア性のみでなく、さらなる熱伝導性の向上、耐候性の向上、高い難燃性(不燃性)が求められている。

 

産総研が開発した「クレーストⓇ」は高いガスバリア性、耐熱性、不燃性を持つため、多様な分野、特に食品・医薬品包装材料、ディスプレー・太陽電池用透明耐熱シート、太陽電池バックシート、フレキシブル基板、水素シール材などへの利用が期待されている。しかし、機械的強度が不足であり、厚膜の作製が難しく、ロール品としての連続合成が難しい等の問題があった。

 

そこで被推薦者らは、多くの粘土とプラスチックを組み合わせて試作を行い、ポリイミドに関する知見も合わせ、従来の粘土膜と比較して飛躍的に取扱い性が向上した耐熱フィルムを見出すことに成功した。ポリイミドと粘土としてタルクを主成分とするこのフィルムの作製には、従来の同様のフィルム作製で用いられてきた非膨潤性粘土と異なり、高い固液比の原料ペーストを作ることができ、厚膜の作製も可能である。また、タルクが安価であるのでフィルムも安く供給できる。また、このフィルムはプラスチックフィルムでは達成されない、耐熱性、不燃性、寸法安定性、柔軟性等の特性を同時に有しており、さらに熱伝導性も一般的プラスチックに比べ数倍から十倍程度優れていることも確認された。ロール品の連続生産の目途も付けており、このフィルムを「タフクレースト」と名付け、サンプルを約30件の企業や大学、公的機関に提出している。

 

フレキシブルプリンテッドエレクトロニクス用基板においては耐熱性と熱寸法安定性が必要であり、耐熱性の高いポリイミドフィルムでも寸法安定性が低いため使用が難しく、良い基板材料が無いのが現状である。「タフクレースト」はポリイミドより優れた耐熱性と寸法安定性を有しており、価格が銀の
1/120と安価な銅の配線を可能とするため、この分野の発展が期待される。

 

太陽電池バックシートにおいては、既存品は耐候性や水蒸気バリア性の性能を満たすため接着剤を含む異種類のプラスチックフィルムの多積層構造となっている。太陽電池の寿命はこの接着層の劣化が元になり進むと考えられている。「タフクレースト」は一層で全ての各種性能を満たすためこのような劣化が物理的に起こらない。また「タフクレースト」は
85℃、85%RHの高温耐湿試験で6500hr
でも性能劣化が無いことを確認している。太陽電池の長寿命化(約3倍)と信頼性向上が期待されている。現在、実際に「タフクレースト」をバックシートとして用いた太陽電池モジュールを作成し、耐久性試験を行っている。

 

今後、蓄電池、エレクトロニクス用材料などに有用な材料として広範な展開が期待される。