「自分達の“軸”・“価値”を 見つけるブートキャンプ」を経て――
リーダーとして得られた気づきと成長(前編)

産総研 人間社会拡張研究部門 小島一浩氏が提供している変革プログラムが2025年6月にヤマハ発動機にて開催された。テーマは「自分達の“軸”・“価値”を 見つけるブートキャンプ」。デジタルエンジニアリング部に所属する30代以下の社員22名に向けて行われた本キャンプから半年――参加者はどのような気づきを得て、それを仕事に結びつけているのでしょうか。前編では、部長である平野氏がキャンプを開催した理由と、リーダーに選ばれた4名が「しおり」作りを通して得た気づきについて聞きました。
<座談会の参加者>
デジタルエンジニアリング部 部長 平野啓典氏(左から3番目)
同部 設計情報管理グループ 深見扇智子氏(左)
同部 技術強化グループ 葭本翔梧氏(左から2番目)
同部 情報基盤グループ 福沢遼氏(右から2番目)
同部 設計管理グループ 須山滉人氏(右)
産総研 人間社会拡張研究部門 小島一浩氏(右から3番目)
デジタルエンジニアリング部 部長 平野啓典氏(左から3番目)
同部 設計情報管理グループ 深見扇智子氏(左)
同部 技術強化グループ 葭本翔梧氏(左から2番目)
同部 情報基盤グループ 福沢遼氏(右から2番目)
同部 設計管理グループ 須山滉人氏(右)
産総研 人間社会拡張研究部門 小島一浩氏(右から3番目)
※カッコ内はタイトル下にある写真の位置
プロ組織をめざしてブートキャンプを開催
――まず、平野部長がブートキャンプの開催を決められた理由と目的を教えてください。
平野:私たちはヤマハ発動機株式会社という製造業の会社におりますが、デジタルエンジニアリング部は製品を設計や開発する部署ではなく、設計・開発を行う社員の業務が円滑に進むように整える、いわば間接部署です。業務パフォーマンスのさらなる向上をめざし、今中期の目標として「ステークホルダーのシン・課題を解決できるプロ組織への変容」を掲げました。それぞれがプロとして自分の軸と価値を語ることができるようになれば、ひいては組織もプロになると考えたことが、ブートキャンプの開催につながっています。
――目標にある「シン」とは、どのような意味でしょうか?
平野:「シン」としたのは「深」「新」「真」「芯」など、さまざまな意味合いを持たせ、各自に考えてもらうのが狙いです。
――実際にブートキャンプを開催した際は、どんな目的を掲げましたか?
平野:産業技術総合研究所の小島さんと相談して、ふたつの目的を置きました。ひとつめは「Who I am」、つまり自分が何者であるかを語ることができること。もうひとつは「セルフ・リード」で、誰かに言われるのではなく、自分で自分をリードして奮い立たせ、仕事ができること。いずれもプロであるために求められることですよね。本来、小島さんが産総研で提供している8カ月くらいかけて行うプログラムを2日間に凝縮したので、「私はこういう価値観を持っているな」「自分はこれを軸にして生きているな」と気づけるところまでをゴールと考えました。
――参加したメンバーの基準を教えてください。
平野:今回、これからを担う中堅である30代以下の社員に限定しました。「40代以上はもうプロでしょう?」ということで(笑)。デジタルエンジニアリング部内のグループで、今後リーダーとして引っ張っていってほしい4名をリーダーに任命し、当日は4チームに分けて開催しました。開催場所は会社のそばではなく、あえて泊まりがけでないと行けない横浜に移し、ウィークデーの2日間をかけて業務として参加していただきました。
――どのようにチーム分けをされたのでしょうか?
平野:以前から、各グループ内でのコミュニケーションは取れているけれど、隣のグループが何をしているのかわからないという声も挙がっていたので、今回はあえてグループをシャッフルしてチームを組んでもらいました。
平野啓典氏
しおり作りを通して高まった結束力
――では、ここからはリーダーとなった4名の方々にもお話に参加していただきましょう。
初めてブートキャンプ開催のお話を聞いたとき、どのように感じましたか?
福沢:これまで人事部の研修に参加したり、テクニック的な研修を受けたりする機会はありましたが、デジタルエンジニアリング部主導の研修というのは組織として初めての試みで驚きました。しかも、内容を教えてもらえないから、何をするかわからない(笑)
初めてブートキャンプ開催のお話を聞いたとき、どのように感じましたか?
深見:何をさせたいんだろう?と思いました。リーダーとして研修前に平野さんから説明を受けたときも、「Who I am」なんて誰でも考えられるんじゃないの?って。しかも業務時間内に2日間も研修って、どんなことをするんだろうと不思議でした。。
葭本:ブートキャンプの前にまず、私たち4人で集まって「しおり」を作りました。よくある遠足のしおりみたいな、行動計画表ですね。そこに研修の目的を足したもの。参加者に見せたら「何をする場なんですか?」って質問がたくさん来ましたね。こちらも情報を持っていないので、答えられないのですが(笑)。
深見:私たちデジタルエンジニアリング部の仕事は自分発信のものではなく、サポートの役割が多いので、いつも目の前には進むべき道がある。だから、道がないところに放り込まれると困ってしまうんですよね。「なんのために行くの?」って。

――みなさんでしおりを作る際は、どんな話し合いをされたのでしょうか?
福沢:私たちのほうで決められることがけっこうありました。(産総研の)小島さんからの提案で、自社製品に触れるアクティビティを入れるという指定があったのですが、どんな場所で何に触れてもよかったので、それを選ぶところから始めましたね。あとは場所も、近いほうがいいメリットと離れたほうがいいメリット、両方を相談して横浜に決めて。
葭本:横浜であれば自社製品であるeBikeを体験できるので、横浜にしましょうと。
福沢:あとは「お弁当どうする?」とかもね……。半分以上は旅行代理店の仕事をやった感じです(笑)。
須山:全部で3回くらい集まって話し合いましたね。同時に、しおりに掲載するメッセージも作成していきました。
「他己紹介」を経て自分の強みが見つかる
――しおりを作りながら、皆さんの結束力も高まったのでは?
葭本:そうですね、まず私たちはチーム名を「ファースト・ペンギン」にしたんです。ブートキャンプでは誰も内容がわからないなかで進めることになるので、最初に崖から海に飛び込むファースト・ペンギンのように、自分たちが最初に飛び込むようにしよう!と考えてつけました。
福沢:しおり作りのときは、あえて役割分担はせず「仕事は自分から奪え!」と言って(笑)、自分でやりたいことにどんどん手を挙げて発言するスタイルでした。だから、自主的に取り組めたのだと思います。
深見:しおり作りの段階で、(産総研の)小島さんから「他己紹介※」のワークをもらったことで、気づけたこともありました。私は須山さんとペアだったのですが、他己紹介で「没入できること」と言っていただいて……。それまではゲームに熱中しすぎるなど、猪突猛進なところを短所だと思っていたのですが、これも強みなんだと気づけました。
※ 3分間の自己紹介をした後、それを聞いた相手が内容を1分にまとめ、ほかの人に紹介するワーク。自己紹介の途中で話を遮ることはせず、質問は溜めておく。
須山:私も同じでした。それぞれのスキルを書き出すとき、ほかの3人のことは書けるのに、自分のことが書けなかったです。でも、みんなが書いてくれたことで「こう見えてるんだな」と気づくことができました。
講師を務めた産総研の小島一浩氏(中央)を囲んで
深見:他己紹介では「傾聴」というスキルも身につきましたね。いつもなら、相手が話しているときに質問したり、自分の解釈を入れたりしていたのですが、自分を抑えることで相手から引き出せることってこんなにあるんだなと驚きました。私はこれまで話を遮って、みんなの考える時間を奪っていたのかも、自分の進めたい方向に無理やり引っ張っていたのかも……と気づくことができました。
葭本:あと、みんなで話し合ううちに、私たちリーダーの目的として「成長を促す」ということが意識にすっと入ったのもよかったです。今まで「私が、私が」と前に出て、自分が成長するぞ!という気持ちで働いていたのですが(笑)、今回は「促す、育てる」ということを目的としたことで、結果的にブートキャンプでのみんなの成長につながったように感じます。
須山:みんなでしおりを作りながら「こういう目的でやろう」とすり合わせられて、4人が同じ方向を向いて進められたので、発言もしやすかったですね。業務の打ち合わせでも、改めて目的を明確にして方向性を合わせることが大切だと気づきました。あと「相手の発言を否定しない」というルールを設けたのも、心理的安全性を保つことができてよかったです。
――みなさんが作ったしおりを見て、平野さんはどう思われましたか?
平野:初めから完成度の高いしおりができてきたので、安心しました。この4人に任せてよかったなと思いましたね。
後編では、実施されたブートキャンプの内容について掲載いたします。