研究概要
分子集積デバイスグループでは、有機化合物を中心とした、革新的な材料・プロセス・デバイス技術の開発によって、産業界のニーズに応えることを目指しています。
特に、分子や微粒子の自己組織化、結晶や液晶などの規則性、界面の特異性、光物理・光化学的性質を駆使した独自性の高い研究開発を目指しています。
材料・プロセス・デバイス技術は、それぞれが互いに密接に関連しています。
当グループでは、これらを一貫した研究として実施可能であることが特徴です。下記に、それぞれについての主な研究について述べます。
材料技術
次世代の有機デバイスやプロセス材料のための基盤技術として、光に応答して劇的に物性が変化する光機能性有機材料や、発光性材料の研究に取り組んでいます。
分子設計を工夫することにより、固体における光反応効率を向上させ、光で固体と液体間を可逆的に相変化する化合物(光で溶ける有機材料)、光で動的な機能を発現する結晶(光で移動する結晶)や高分子材料(光で曲がる高分子)を開発しています。
また、固体表面に生じるシワを活用した材料を開発しています。これらの新規材料開発を進めるため、有機化合物や無機ナノ粒子の合成技術を駆使しており、その中でフロー型マイクロ波加熱装置等も活用しています。
プロセス技術
有機分子の自己組織化現象や、光と物質の相互作用を利用するプロセス開発を行っています。
例えば、分子の自己組織化を利用することによって形成するナノレベルの微細なパターンの観察・自在制御と、その産業プロセス利用を目指しています。
他方、光を利用した製造プロセスとして、白色パルス光を用いた焼成プロセスにより、エッチングレス無電解めっき膜の密着性向上と新規パターニング法を開発しています。
この方法を用いると、基材へのダメージを抑えつつアニーリングや溶融接着等が可能になります。
デバイス作製に欠かせない薄膜形成技術として、蒸着等の真空プロセスや塗布等のウェットプロセスに加えて、摩擦転写法により配向した高分子薄膜の形成が可能です。
また、材料の界面・表面特性や、力学特性の評価を通してプロセス技術の最適化を実施しています。
デバイス技術
有機材料の光学的・物理的な特性や、分子の異方性や微細構造を高精度で制御することにより、新しい電子および光学デバイスの開発を行っています。
例えば、光の波長変換技術として期待されている光アップコンバージョン材料の開発を行っており、この技術を利用すると長波長の光(例えば緑色光)を短波長の光(例えば青色)に変換することが可能です。
また、界面の特異的な性質を利用することにより、液晶の分子配向や微粒子の配列を制御した薄膜デバイスの作製が可能です。
これら薄膜デバイス作成プロセスについて、分子レベルでの理解を深めるため計算機シミュレーションに取り組んでおり、材料・プロセス・デバイス設計にフィードバックしています。
保有する技術・装置
・有機合成(低分子・高分子)、精製
・フロー型マイクロ波加熱装置による有機合成
・光学顕微鏡、偏光顕微鏡、共焦点レーザー顕微鏡
・プローブ顕微鏡(AFM、STM)
・液晶材料の評価
・薄膜作製技術(真空プロセス、ウェットプロセス、摩擦転写法)
・分光計測(透過および反射紫外可視分光光度計、赤外分光、ラマン分光)
・熱分析(DSC、TG/DTA)
・液滴法による接触角測定
・Wilhelmy Plate法による表面張力測定・動的接触角測定
・白色パルス光照射装置
・分子動力学シミュレーション
・X線回折装置(単結晶)