地球化学研究グループ

 

研究課題

地球化学標準試料の研究

研究紹介

元素の地球化学的挙動の解明には、岩石・鉱石・堆積物などの地質試料を正確に化学分析する必要がありますが、地質試料中には様々な元素が含まれ、化学分析の際には各元素が互いに影響しあうため、正確な化学分析を行うためには、目的とする試料と主要な化学組成が良く似た、目的元素の濃度が決められている標準物質を用いることが必要不可欠です。

地球化学標準物質
地球化学標準物質データベース

当グループは1964年以来50年にわたって地質関連試料の標準物質を作製し、世界各国の研究機関との共同研究により、化学組成や同位体組成、年代値の信頼性の高いデータを定め公表してきました。この標準物質は世界中で活用されており、分析の正確さ及び精度を高める標準として大きな貢献をしてきました。

近年、標準物質は国際的な基準であるISOに対応することが必要とされるようになってきたため、GSJ発行の岩石標準試料についても、ISOに対応した「標準物質生産者としての認定(ISO Guide34 & ISO 17025)」を取得し、新規に作製する標準試料についてはISOの規定に則った認証標準物質(地球化学標準物質)として供給を行っています。これら地球化学標準物質の開発に至るシナリオと今後の発展については、岡井(2016)Sinthesiology. 9(2), 60-72. をご覧下さい。

また、長年にわたる標準物質作成への取り組みが高く評価され、平成22年科学技術分野の文部科学大臣表彰において、科学技術賞(開発部門を受賞しました。

ISOに対応した新規認証標準物質

火成岩シリーズ

  • JA-1a:安山岩(箱根山)
  • JB-2a:玄武岩(伊豆大島三原山)
  • JB-3a:玄武岩(富士山)

堆積岩・堆積物シリーズ

  • JSO-1:土壌(黒ボク土)
  • JSd-4:河川堆積物
  • JCp-1:サンゴ(ハマサンゴ)
  • JCt-1:シャコガイ(オオジャコ)

 

地球化学図の研究

研究紹介

地球化学図とは、地殻表層の広域元素濃度分布図のことです。対象元素は鉛、ヒ素などの有害元素を含む53元素で、自然のバックグラウンド値を表しています。元々は鉱床探査のために用いられた手法ですが、現在は主に環境評価のための基盤データとして用いられています。平成17年には、この研究業績が高く評価され、環境賞の優良賞を受賞しました。全国地球化学図作成に至る研究シナリオについては、今井(2010)Synthesiology. 3(4), 281-291 をご覧下さい。

Crの地球化学図ヒ素の地球化学図

地球化学図データベース

  • 陸域地球化学図:日本全国から約3000個の河川堆積物を採取し、元素分析を行い作成しました(1試料/100-120km2)。地質や鉱床などが地殻表層の元素濃度分布に与える影響を一目で理解できる図となっております。

  • 海域地球化学図:日本周辺海域から約4900個の海洋堆積物を採取し、元素の分析を行い作成しました(1試料/60-80km2)。既存の陸域地球化学図と併用することで、陸から海への元素移動過程評価などに用いられています。

  • 精密地球化学図:従来の地球化学図に比べ空間精度を10倍向上させた精密地球化学図です。現在、関東地域の精密図が公開中です(下記参照)。

 

最近のトピック(関東地方の精密地球化学図)

クロム地球化学図について、従来図と精密図の違い

従来の地球化学図の空間分解能を10倍に向上させた、関東地方の精密地球化学図を作成しました。従来の地球化学図は、自然のバックグラウンド値を把握することを目的としていたため、明らかに汚染されている堆積物は採取しませんでした。一方、精密地球化学図は、空間分解能の向上に加え、あるがままの元素濃度分布図の把握を目的としました。そのため、元素によっては従来図と精密図の見え方に違いがあります。

 

地球化学図の応用

日本の自然放射線量 (地質学会HP)

地球化学図は環境汚染・資源探査評価の基礎データだけでなく、様々な分野に応用されています。最近では、福島第一原発事故の際に、カリウム・トリウム・ウランの地球化学図から計算によって見積もられた自然放射線量マップが、放射線影響評価に用いられました。

最終更新日:2016.06.10.