触った、つかんだ、押した、デジタルで
体感を実現する、世界初の3D触力覚技術!

中村則雄の画像

中村さんの研究を体験すると、誰でもスゴイ、どうなっているの?と思わず自分の指先を見てしまいます。
指先にあるのは、キャラメルほどの小さな箱型デバイス。この箱を握ると、空中で前後にググッと引っ張られたり、押し下げると反発して手がフワフワ浮き上がったり、引っ張りすぎるとプッツンとゴムが切れたように感じられます。今、世界から注目される中村さんの世界初の技術デジタル体感
スマートフォンなど、指で触れる・操作する装置が増えている現代、リアルな感触・体感の利用範囲は無限大です。シリコンバレーにも拠点を展開した中村さんのもとには、今、世界中のグローバル企業が体感の魔法を求めて押し寄せています。

部門付 
中村 則雄なかむら のりお 博士(工学)
株式会社ミライセンス(産総研技術移転ベンチャー)ファウンダー 取締役 CTO

研究のはじまり

人間には五感がありますが、従来の情報端末では視覚と聴覚に留まり、映像に触れることも押すこともできませんでした
バーチャルリアリティ(VR・仮想現実)研究者の中村さんは、この触覚や体感経験を表現したいと研究を始めましたが、ロボットアームやジャイロのような大掛かりな装置が必要であり、日常製品として実用的なものにはなりませんでした。
中村さんは、物理的な力の再現が主流だった科学界において大胆な発想の転換を図り、脳における認知的・情報的に等価な再現に挑戦しました。ジャイロを用いた工学者としてのモノづくりの成功体験を捨てさり、先入観に縛られることなく、脳科学・感覚心理学者としてのひらめきから本質に迫ることで、物理的再現ではなく、脳科学的な再現として、最終的には、脳が、触れた、押したと感じれば良いのではないかと!?
これが現在の、世界を驚かせた大発明の糸口でした。

ジャイロを用いた初期のメカニカル装置を手のひらに乗せている写真
ジャイロを用いた初期のメカニカル装置

触れる本質とは何か

中村さんは、感触やものの存在感は、指先に触れたという圧覚、表面のデコボコ、ザラザラ感などの触覚、押した時の手ごたえ感である力覚の3つの組み合わせで表現できると言います。感覚器官という人の複数のセンサに対応したこの3つ基本感覚を、光の三原色にかけて、中村さんは三原触と呼んでいます。
この3つを表現できる画期的な技術デジタル体感は、脳を如何にだますのかという、知覚・認知の科学と物理・工学的な技術から生まれました。
振動や電気刺激などの脳をだます可能性がある感覚刺激をいろいろ試し、小さな振動子による刺激発生デバイス、脳をだます特別な刺激パターン、そして感覚と刺激パターンとの関係を表したデータベースの構築により、何もない空中で手が引かれたり、押し返されたり、硬い平面パネルがへこんで感じられたり、驚きの体験を作り出してしまいました。この技術は、広く強い特許が世界で確立しています。

2014年、中村さんはこの技術を中核に、体感の未来を実現するためにミライセンスと名付けたベンチャーを設立、米国のシリコンバレーにも活動拠点を設け、世界展開に乗り出しました。

提示装置を手に持ってをデジタル感触体験している写真
デジタル感触を体験
ミライセンスCESブースで中村氏が海外の訪問者に説明をしている写真
世界展開(ミライセンスCESブース)

世界は触覚であふれている

中村さんは、触れるということは人間の根源的な欲求行為なのに、これまで情報端末や映画、ゲームでも視覚と聴覚が中心でした。表現の世界に触覚を加えることで、人間の体験を拡張するイノベーションが起きると言います。
デジタル体感には、無限の応用があります。
例えば、医療・福祉などでの、右へ左へと、優しく手で導くように道案内や動作誘導してくれる、スマートフォンやスマートウォッチによるナビゲーション。
自動車やキオスク端末における、形状やボタンを押しこんだ感覚が体感できるディスプレイ画面やタッチパネルによる直観的でインタラクティブな操作感。
映画やゲームなどでの登場人物の動作や衝撃が体感できる身体性の拡張は、より能動的な体験を促進し、エンターテインメントの次元を変えてしまうことでしょう。
これらは、人間の特性に関する精密なデータ、いわゆるディープデータにもとづいて、知覚・認知や行動情報をモニタリングし、環境や装置を適切に制御することによって、実現されます。さまざまな経験・知見があることで、膨大な情報に溺れることなく、人が広く、深く、適切に、分析、考察、判断できるのと同じです。
中村さんは、サッカー選手、工学者、脳・感覚心理学者、教育者といった沢山の顔があります。それらを、脳での情熱、論理、感性、橋渡しに関する4分野に言い換え、それぞれの個性・役割を上手に使い分けて相互に協調し合うように、産総研技術移転のためには、人としての思いやり、研究者としての創造力、事業家としての責任感が重要だと言います。
明確なミッション、ビジョン、パッションを持ち、シリコンバレーと日本を拠点に、世界中の経営者や起業家とも交流を深めながら、一研究者としての立場を超えて、デジタル体感ビジネスという新しいビジネス圏と市場を創り出そうとしています。