AIST上肢・肩甲骨運動データセット

概要

国立研究開発法人 産業技術総合研究所では、遠隔リハビリテーションの実現に向け、計測・解析技術の確立、AIの性能向上、実用化の促進に取り組んでいます。その基盤として、対象となる動作データの質と量の充実が重要であると考え、上肢および肩甲骨の運動に特化したモーションキャプチャデータのオープンデータセットを整備しました。

動作の計測にあたっては、脳卒中後の片麻痺検査や肩関節周囲炎(いわゆる五十肩)のリハビリテーションで用いられる上肢および肩甲骨の関節運動から18種類を選定し、健常な上肢を有する20名の方々のご協力のもとで計測を実施しました。

本データセットは、後述の利用条件を満たした組織に提供いたします。

更新履歴

  • 2025年3月25日:上肢・肩甲骨運動オープンデータセット提供開始

データセットについて

計測方法

本データセットに登録されている動作データは、慣性式モーションキャプチャシステム(Movella社製 MVN Awinda)を用いて、骨盤から上の上半身の動作を計測しました。サンプリング周波数は60Hzです。

また、動作計測前に身体寸法(身長,肩幅,左右の肘間の長さ,左右の手首間の長さ,左右の指先間の長さ,床から第7頸椎までの高さ,大転子までの高さ)および体重を併せて計測しました。

実験協力者は、43cmの高さの背もたれのない椅子に座り、デモンストレーション動画を見て動作を確認しながら、一定のリズムで関節運動を繰り返しました。各動作は右腕、左腕の順に実施し、それぞれ5回または10回の繰り返しを1セットとし、2セット分の計測を行いました。「90度まで」という制約が設けられた動作以外は、可動域の限界までゆっくりと動作を行うよう指示しました。なお、本計測は国立研究開発法人産業技術総合研究所内の生命倫理委員会の承認を得た上で実施しています。

18種の上肢・肩甲骨運動

  • 肩の屈曲、伸展(90度まで)
  • 肩の屈曲、伸展(最大可動域まで)
  • 肩の外転、内転(90度まで)
  • 肩の外転、内転(最大可動域まで)
  • 肩の水平外転、内転
  • 肩の外旋及び内旋(1st位)
  • 肩の外旋及び内旋(2nd位)
  • 肩の外旋及び内旋(3rd位)
  • 肘の屈曲、伸展
  • 前腕回内、回外(肘90度屈曲位)
  • 前腕回内、回外(肘伸展位)
  • リーチング動作(内側)
  • リーチング動作(前方)
  • リーチング動作(外側)
  • 膝から耳の真横へ手を移動させる動作
  • 手を腰の後ろに触れる動作
  • 手を口頭部に触れる動作
  • 机を布巾で拭く動作

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上肢・肩甲骨運動データセット諸元

  • 男性:11名(20 - 54歳)
  • 女性:9名(22 - 58歳)
  • 身長:146 - 184cm
  • 体重:37 - 95kg
  • ファイル数:680 ファイル

利用条件

本データは、「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」に基づき、倫理委員会による審査・承認を受けた実験計画書をご提出いただいた場合に限り、大学、研究機関、または企業にご提供いたします。

また、データの提供にあたっては、提供先の名称を実験協力者のみが閲覧可能なウェブサイトに掲載させていただきます。

サンプルデータ

データセット本体には含まれない1名分の動作データについて、実験計画書のご提出なしでサンプルデータとしてご提供可能です。収録されている動作の種類は、データセット本体と同様です。

サンプルデータの入手を希望される方は、下記の項目をご記載のうえ、オープンデータ担当メールアドレスまでご連絡ください。

  • お名前
  • ご所属(法人名・部署名、または大学名・学部名など)
  • 連絡先メールアドレス
  • 使用目的(差し支えない範囲でご記載ください)

引用

本データセットを引用する際は、下記のように引用して下さい。

今村由芽子,後藤大輔,大島賢典,尾形邦裕,篠﨑真良,蔵田武志,2025:AIST上肢・肩甲骨運動オープンデータセット

参考文献

  • [1] Kurata, T. et al., “Project Progress on XR-AI Platform for Tele-Rehab and Health Guidance,” 2024 IEEE VR Abstracts and Workshops (VRW), pp.244-251, 2024. https://ieeexplore.ieee.org/document/10536337
  • [2] Ogata, K. et al. Basic Study of Upper Limb Movement Estimation and Function Evaluation including Shoulder Girdle by Multi-Sensing Flexible Sensor Wear. IROS, pp.13328-13334, 2022.
  • [3] Imamura, Y., et al. Designing Sensor Wear for Posture Estimation with Strain Sensors Using Digital Model. ThuP1T1.5, SII, 2025.
  • [4] Ogata, K. et al. Remote Rehabilitation System Capable of Sharing Somatosensory Sensations. EMBC, Paper ID 6884, 2024.
  • [5] 蔵田武志, 大島賢典, 遠隔リハビリテーションとXR技術, Journal of Clinical Rehabilitation 34巻4号, 2025.
  • [6]国立研究開発法人 産業技術総合研究所,プレスリリース「遠隔でリハビリテーションができる社会の実現に向けて世界初の上肢・肩甲骨運動オープンデータセットを公開しました」, 2025/03/25,

お問い合わせ

国立研究開発法人 産業技術総合研究所
AIST上肢・肩甲骨運動オープンデータ担当
M-xrai-motiondb-ml@aist.go.jp

本データセットは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務「遠隔リハビリのための多感覚XR-AI技術基盤構築と保健指導との互恵ケア連携」(JPNP21004)において整備されました。
https://unit.aist.go.jp/harc/nedo-xrai-healthcare/
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