ダイヤモンド表面近傍の単一レベルのNVセンターを探して測る小型・可搬型量子センシングシステムを開発
発表・掲載日:2026年8月31日― 小型・可搬型NMRに向け、微弱蛍光の検出と電子スピン共鳴測定を小型光学系で実現 ―
ポイント
- ダイヤモンド表面近傍の単一レベルのNVセンターからの微弱な蛍光を検出する光学性能と、小型の光学走査・焦点調整機構を両立し、光学テーブルを必要としない小型・可搬型量子センシングシステムを実現
- 表面近傍のNVセンターを探索・選択し、同じ位置で電子スピン共鳴を測定する一連の機能を20 cm×20 cm ×10 cmの小型光学ユニットに集積
- 表面近傍NVセンターによる局所磁気計測を、測定対象の近くで実施できる装置へ展開する技術基盤を構築し、微量試料や触媒・電池電極などの表面・界面、微小な生体試料を対象とする小型・可搬型NMRへの展開を期待
図1 開発した小型・可搬型量子センシングシステム
概要
国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下「産総研」という)量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター(G-QuAT)は、京セラSOC株式会社、慶應義塾大学と共同で、
ダイヤモンド表面近傍の単一レベルのNVセンターを探索・選択し、同じ位置で電子スピン共鳴を測定する機能を集積した20cm×20cm×10cmの小型光検出ユニットを開発しました。
今回、光路を高さ方向にも折り返した三次元構造の共焦点光学系を設計し、MEMSデバイスによる二次元走査と可動式結像レンズによる焦点調整を導入しました。
さらに、ダイヤモンド量子センサーの裏面側から励起光を照射して蛍光を検出する倒立型光学配置を採用し、ダイヤモンド量子センサー、測定試料、マイクロ波アンテナ、磁石の相対位置を維持したまま、光学走査と焦点調整を行える構成としました。
これにより、従来は光学テーブル上の複数の光学・走査機構を組み合わせて行っていた「NVセンターの探索→位置選択→焦点調整→微弱蛍光検出→同一位置での光検出磁気共鳴(ODMR)測定」という一連の工程を、一つの光学ユニット上で実行できるようにしました。
走査・検出光学系の体積は、産総研の研究グループが従来使用してきた表面近傍NVセンター用の光学テーブル型装置と比較して約1/95となりました。加えて、制御装置を含むシステム全体をカートに搭載し、各機器の接続状態を保ったまま施設内を移動できる構成としました。
本成果により、表面近傍NVセンターを用いる量子センシングを、大型の光学テーブルに固定された装置から、測定対象の近くへ移動して使用できる小型・可搬型システムへ展開するための技術基盤を構築しました。
今後は、マイクロ波パルスによる電子スピン制御、静磁場の高安定化、NMR信号検出機能を統合し、微量試料や材料表面・界面などの微小領域を対象とした小型・可搬型NMRへの展開を目指します。
なお、開発した装置は、2026年9月2日〜9月4日に幕張メッセで開催される分析機器・科学機器総合展(JASIS 2026)に出展します。
本研究の一部は、国立研究開発法人科学技術振興機構の「JST 先端計測分析技術・機器開発プログラム」(2015~2018年度)による支援を受けています。
本件問い合わせ先
国立研究開発法人 産業技術総合研究所量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター 企画室
E-mail:M-G-QuAT-plan-ml *aist.go.jp(*を@に変更して使用してください。)
展示を見て、量子センシングが実験室の中だけでなく、実際の現場で使用可能な技術へ進化しつつあることを感じました。
また、20cm四方程度のサイズに複雑な測定機能を集約している点が印象的でした。
将来的にさらに小型・可搬型のNMRへの展開を目指しているということで、量子センシングの実用化への期待が高まりました。