皮膚の炎症を評価できる表皮細胞の3次元構造体を開発
AIST-INDIA機能性資源連携研究室の冨田辰之介主任研究員らの研究グループは、正常表皮細胞株HaCaTを用いて、これまでのレポータージーンアッセイ法では困難だった、親油性化合物を含む幅広い化合物の皮膚に対する影響を評価する新たなアッセイ法を構築しました。
本方法では、安定的にレポーター遺伝子を発現するHaCaTを正常表皮の様な層状3次元構造体に培養した上で、その構造体の上部から被験物質を添加して、細胞が生きたまま、遺伝子の応答を経時的に計測することが可能です。今回は計測する遺伝子として、炎症のマーカーとなるIL-8を選択し、既に炎症を起こすと知られている親油性化合物を含む複数の化合物を添加したところ、良好に応答を確かめられました。注目する遺伝子を適切に選択することで、炎症以外の様々な生体応答をモニターできると考えられます。世界中で皮膚に関する動物実験が禁止されつつある中、このアッセイのフォーマットが新たな選択肢を供する事が期待されます。
なお、本研究は化粧品企業様の助言やディスカッションを経て実施されたものです。
HaCaTを層状培養して構造体の上から被験物質を添加することでこれまで困難だった親油性化合物を含む様々な化合物のアッセイを可能とした。
投稿論文
- 論文タイトル:Novel three-dimensional live skin-like in vitro composite for bioluminescence reporter gene assay
- 著 者:Tomita Tatsunosuke, Nakajima Yoshihiro, Ohmiya Yoshihiro, Miyazaki Koyomi
- 雑誌:FEBS Journal
- DOI:10.1111/febs.17246