やっぱりマイクロ波効果はある!:酵素反応におけるマイクロ波周波数依存性と作用機序研究
国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下「産総研」という)ナノ材料研究部門 杉山 順一 主任研究員、同 細胞分子工学研究部門 清水 弘樹 主任研究員は、糖加水分解酵素反応においてマイクロ波効果の周波数依存性を得て、マイクロ波の作用機序を提唱しました。
至適温度が60℃と比較的高温なグルコシダーゼHT1の反応において、4つの加熱法(通常のインキュベータ加熱法と汎用の2.45GHzマイクロ波照射の他、自作した400MHzマイクロ波照射と5.8GHzマイクロ波照射)による反応進行度を比較しました。すると、特に至適温度より低い40℃において、導電損失によりイオン選択的にマイクロ波が作用したとき本酵素反応が促進されました。そしてこれらの結果から、分子レベルでの化学反応におけるマイクロ波特有の作用機序を提唱しました。
本研究は『マイクロ波の作用は加熱だけであって特殊な効果はない』とされる説の反例であり、マイクロ波効果を実験的かつ理論的に示したものとなります。
詳細はBiosci. Biotechnol. Biochem.2023年2月号に掲載され、エディターチョイスとしてグラフィカル・アブストラクトが表紙になりました。
投稿論文
- 論文タイトル:Study of 400 MHz microwave conduction loss effect for a hydrolysis reaction by thermostable β-Glucosidase HT1
- 著者:Izuru NAGASHIMA, Jun-ichi SUGIYAMA, Hiroki SHIMIZU
- 雑誌:Biosci. Biotechnol. Biochem., 2023, 87 (2), 158-162