膨潤圧縮法によるゴムの網目鎖濃度の評価

事例No.

OK-0047

概要

網目鎖濃度νは、Flory-Rehner式から算出する場合が多い。この式では、ゴムと溶媒の組み合わせで決まる相互作用パラメータχが必要になり、メジャーな組合せのχは報告がある。しかし、共重合体ゴムやブレンドゴムでは、ポリマーの組合せや割合で変化するχが求められていない場合が多い。それらのゴムでもνを評価し、物性や構造をコントロールする指標としたいという要望から、νの算出過程でχを含まない膨潤圧縮法による測定を試みた。

お困りごと・要望

相互作用パラメータχが報告されていないゴムで、網目鎖濃度νを求めたい。

事例提供機関

岡山県工業技術センター
素材開発部 高分子材料科八木 駿

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事例に関するお問い合せ

サンプル

共重合体ゴム

分析方法

厚さ約1mmの加硫ゴム試料を2x2mm四方に切り出し、デジタルマイクロスコープを用いて厚みおよび面積を測定した。良溶媒に膨潤させた加硫ゴム試料の寸法を改めて測定後、ひずみ制御型の動的粘弾性測定装置を用いて、種々の圧縮ひずみで応力緩和した際の荷重を測定した。得られた物性値を用いて、Floryの理論式から網目鎖濃度を算出した。

分析結果

Fig. 1に圧縮ひずみのパラメータと荷重のパラメータとの関係の例を示す。両パラメータの間に良好な線形関係が見られた。この線形関係の直線近似の傾きが網目鎖濃度となる。なお、応力緩和時の荷重が低すぎると線形関係から外れる傾向にある。
Fig. 2にパルス法NMR測定による架橋密度パラメータFi/T2iに対する網目鎖濃度νの変化を示す。Fi/T2iνと良い相関を示すことが知られているが、本検討で算出した共重合体ゴム試料のνとも良い相関を示した。
膨潤圧縮法によるνとパルス法NMRによるFi/T2iを組み合わせることで、χの不明な共重合体ゴムであっても検量線を作成することが可能となった。

関連装置

TA Instruments製 RSA-G2
HIROX製 HRX-100
Bruker製 minispec mq20

コメント

架橋密度パラメータFi/T2iの詳細については「事例 OK-0008」を参照。

適用可能な材料

共重合体ゴムやブレンドゴムなど相互作用パラメータが報告されていないゴムなど

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R6年度 分析事例討論会