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活断層・地震研究セミナー

研究者間の意見交換,議論を目的とした公開セミナーです.
一般の方でも聴講可能ですが,内容は専門家向けです.産総研では立ち入りに手続きが必要ですので,外部の方で聴講を希望される場合,予め問い合わせページからご連絡ください(報道,行政機関の方は,所属もお知らせ下さい).折り返し,当日の入館手続きをご連絡させていただきます.

2024年度 2023年度 2022年度 2021年度 2020年度 2019年度 2018年度 2017年度 2016年度

2015年度 2014年度

第142回 3月23日(金) 14:00-15:00 別棟大会議室(7-3C-211)

「一つの断層活動イベント」をどのように認識するのか?

講演者:粟田 泰夫(活断層評価研究グループ)

複雑な構造を示す活断層は間欠的に繰り返す断層活動イベントの累積によって形成されてきており,その活動の規則性に基づいて将来における大地震発生の予測が試みられている.固有地震モデルあるいは固有変位量の概念は,発掘調査による断層活動の時期の解明が可能であることを支持している.一方,一つの断層活動が及ぶ範囲については,断層の形態的な不連続構造が大きく関与しているとの考えが有力である.「一つの断層活動イベント」をどのように認識するのか,地震断層と活断層の調査研究からその到達点と課題について述べる.

第141回 3月16日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

松田式を考慮したFEMによる断層変位評価とその上町断層系への適用

講演者:竿本 英貴(地震災害予測研究グループ)

松田式を有限要素法を組み込むことにより,一定の精度で高速かつ簡便に断層変位を評価する手法の開発に取り組んできた.本セミナーでは,提案手法を上町断層系に適用した事例を示し,(1)ボーリング調査結果(杉山ほか2003)との比較,(2)メインセグメントの傾斜角についての検討結果,(3)広域応力場の卓越方位と断層変位の関係,について報告する.また,開発したツールの展望・活用方法についても議論したい.

第140回 3月9日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

相対的海水準変動の復元と地震性地殻変動解読への応用,問題点

講演者:藤原 治(地質情報基盤センター)

古地震の復元には,地層や地形に残された旧海面高度を示す情報を使うことが多い.これは対象地域の相対的海水準変動を復元した上で,幾つかの仮定をして地殻上下変動による成分だけを取り出すことで行われる.機械観測に比べて地殻上下変動の検出精度は落ちるが,数千年に及ぶ長期間の履歴を知ることにこの方法の利点がある.一方で,必然的に含まれる誤差や改良すべき課題もある.隆起傾向にある海岸と,沈降傾向にある海岸の両方の事例を紹介する.

第139回 3月2日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

熊野灘において繰り返し発生する浅部SSE

講演者:板場 智史(地震地下水研究グループ)

2016年4月1日,紀伊半島沖(熊野灘)のプレート境界においてMw 5.9(USGS)の地震(以下,本震)が発生し,その直後から本震震源より浅部側(約12~8 km)で,浅部SSEが発生した(A).また,本震の2日程度後には,より浅部側(約8 km~海溝軸付近)にすべり域が移動し,すべり域の内部で活発な微動活動も観測された(B).(A)の領域,つまり固着域に近い領域では,微動が発生しない環境にあると推測される.Araki et al.(2017)では,2点の海底下間隙水圧観測結果から,同領域で繰り返しSSEが発生していることを示している.本セミナーでは、Araki et al. (2017) が示すイベントにおいて,陸上の観測結果を加えて解析を試みたほか,他の期間についても同様のイベントが無いか調査した結果を報告する.

第138回 2月23日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

主要活断層帯で生じる非固有地震-2014年長野県北部の地震-

講演者:近藤 久雄(活断層評価研究グループ)

過去125年に生じた内陸被害地震(Mj≥6.8)は平均再来間隔4.5年程度であり,約8割が活断層を震源とする地震とみられる.そのうち半分は主要活断層帯,残り半分は短い活断層から生じている.長野県北部の地震は,主要活断層帯の糸魚川静岡構造線断層帯北端で発生したが,地表地震断層を伴ったにも関わらず相対的に小規模であり,典型的な固有地震ではないという特徴を持つ.本発表では,同地震に関する調査結果と今後の展望等を紹介する.

第137回 2月16日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

九十九里浜における古津浪痕跡調査

講演者:澤井 祐紀(海溝型地震履歴研究グループ)

日本海溝沿いでは,古津波痕跡に関する報告が北部および中部に集中しているため,海溝南部における履歴がよくわかっていない.こうした背景から,講演者らは古津波堆積物に関する地質調査を千葉県九十九里浜で行ってきた.本セミナーでは,これまでの調査の概要を説明する.

第136回 2月9日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

三重県飯高町粟野-田引露頭より採取した中央構造線断層ガウジの摩擦特性

講演者:高橋 美紀(地震テクトニクス研究グループ)

断層強度深度プロファイルは,現実の断層での鉱物の種類や含有量を考慮せずに作成されている.より現実的な強度断面を明らかにするには実際の露頭岩石を用いた摩擦の測定が不可欠だろう.三重県飯高町粟野田引露頭では脆性領域で物理条件の異なる多様な変形構造が見られる(Shigematsu et al., 2017).そこで,この露頭を対象に地質調査により推定される岩石の温度圧力条件を明らかにし,その条件のもと実際の断層岩摩擦実験をおこなったので報告する.

第135回 2月2日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

琉球弧前弧斜面のテクトニクスと1771年八重山津波の波源

講演者:岡村 行信(首席研究員)

琉球弧前弧斜面の基盤深度は島弧沿いに大きく変化するが,フィリピン海プレート上の海嶺群の沈み込みに伴う構造浸食によって説明可能である.また,1771年八重山津波の波源は複数のモデルが提案されてきたが,新たに琉球海溝沿いの付加体に大規模な斜面崩壊を見いだし,これを波源とするモデルを提案する.

第134回 1月26日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

日奈久断層海域延長部における海底活断層調査

-海上ボーリングと高分解能3次元反射法地震探査に基づく活動性評価-

講演者:阿部 信太郎(地震災害予測研究グループ)

文部科学省「平成28年熊本地震を踏まえた総合的な活断層調査」の一環として,2016年に発生した熊本地震の震源断層である日奈久断層の海域延長部に位置する八代海において,断層の活動履歴を解明するための海上ボーリング調査を実施した.さらに,この成果を踏まえて,検討対象とした断層の三次元的な性状を把握するための超高分解能三次元地震探査を実施した.本講演では,これらの調査で現時点までに得られている成果の概要を報告する.

第133回 1月19日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

産総研SSEカタログの概要

講演者:松本 則夫(地震地下水研究グループ)

地震地下水研究グループでは2011年頃から防災科研・気象庁・産総研データを統合して深部ゆっくりすべり(SSE)の解析を行ない,地震予知連絡会報にて報告している.この産総研SSEカタログの概要について報告する.なお,講演の後半では人間情報研究部門との共同研究による新たなSSE解析方法の試みについても報告する.

第132回 1月12日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

微小地震の高精度メカニズム解推定法の開発と観測地震学の展望

講演者:今西 和俊(地震テクトニクス研究グループ)

講演者は主に微小地震観測とデータ解析により地震発生場の性質を推定する研究に取り組んでいる.微小地震は発生頻度が多いため,時間的にも空間的にも多くの情報を引き出せる利点がある一方,精度の高い情報を抽出する上では微小地震ならではの難しさがある.しかしこれらの問題点も観測方法や解析方法に工夫を加えることで克服できる場合がある.本発表では,最近開発した微小地震の高精度メカニズム解推定法について紹介し,推定精度を上げたことで見えてきた地下深部の地殻活動について紹介する.また,観測地震学が活断層研究に果たす将来展望についても議論する.

第131回 12月22日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

郷土資料と正式2万分の1地形図に基づく布田川断層帯北甘木断層の位置の再検討と2016年熊本地震に伴い出現した地震断層

講演者:丸山 正(活断層評価研究グループ)

九州中部に分布する布田川断層帯のうち,宇土区間東部の北甘木台地周辺に分布する北甘木断層を対象として,戦前の大規模な耕地整理により改変,消失した断層変位地形を耕地整理に関する郷土資料および耕地整理より前に測量された正式2万分の1地形図をもとに復元した結果を紹介し,熊本地震に伴う地震断層がこの再検討により推定された断層トレースに沿って出現したことを報告する.

第130回 12月8日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

ホットプレス法によるアルバイト長石の焼結

講演者:重松 紀生(地震テクトニクス研究グループ)

地殻内部の歪集中や破壊開始と,長石の塑性遷移挙動の関係が,天然の断岩の解析から指摘されている.長石の塑性遷移挙動を実験で調べるための出発物質として,アルバイト長石の緻密体を考えている.このアルバイト長石(Na端成分)緻密集合体を焼結による合成する技術を造材料研究部門の研究者とともに開発した.本発表では,この手法開発について話を行う.

第129回 12月1日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

北勢観測点の地下水位変化を用いた短期的SSEの断層モデル推定

講演者:北川 有一(地震災害予測研究グループ)

南海トラフのプレート境界で発生する短期的SSEの推定において,愛知県西部から三重県北部の地域に質の良い地殻変動・地下水の観測点がないことが解決すべき課題の一つである.2016年5月に三重県北部に位置する北勢観測点の観測井戸を密閉することで,地殻変動への応答が良い地下水観測点に作り変えたこと,および周辺で発生した短期的SSEによる変化を捉えたことを昨年度のセミナーで紹介した.今回は北勢観測点の地下水位変化を用いて,歪・傾斜・地下水データによる短期的SSEの断層モデルの推定を行ったので,その結果を紹介する.

第128回 11月17日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

象潟地震の断層モデルを考える

講演者:堀川 晴央(地震災害予測研究グループ)

文化元年六月四日(1804年7月10日)に発生した象潟地震では,被害が甚大な地域が沿岸域に限られるとともに津波による被害が生じたことが古文書の調査から明らかにされ,本荘~象潟~酒田にかけての沿岸域に震源があると考えられている.また,沿岸域での隆起量が定量的に見積もられ,この地盤隆起量や津波高をデータとして断層モデルが提唱されているが,地質構造との関連を議論したものは見当たらない.本講演では,筆者らが実施した酒田沖での浅層音波探査での結果を加味しながら,震源モデルを考えてみたい.

第127回 11月10日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

熊本県日奈久断層帯の古地震履歴:宇城市小川町南部田トレンチ調査結果

講演者: 宮下 由香里(活断層評価研究グループ)

熊本県に分布する日奈久断層帯の高野−白旗区間と日奈久区間において,古地震調査を実施した.その結果,両区間の最新活動時期は,重複する可能性があること,従来考えられていたよりも,高頻度で地震がくり返されてきたことが明らかとなった.セミナーでは,日奈久区間で実施した南部田トレンチ調査の詳細について報告し,古地震イベントの認定やその信頼度,日奈久断層帯の区間分けについて議論したい.

第126回 10月20日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

北東アジアのネオテクトニクスと地震火山ハザード評価:レビュー

講演者: 桑原 保人

日本,韓国,中国ではそれぞれが地震火山災害軽減のため適切なハザード評価が求められている.そのために,北東アジアのスケールでのネオテクトニクスと地震火山活動の理解の現状をレビューする.

第125回 10月13日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

地震ハザード評価のための動力学的震源モデル:布田川断層帯・日奈久断層帯への応用

講演者:加瀬 祐子(地震災害予測研究グループ)

震源断層モデルを用いた地震ハザード評価をおこなう上では,破壊領域およびその発生頻度を評価する必要がある.その基礎情報を提供するために,動力学的破壊シミュレーションを利用することを提案し,2016年熊本地震以前の情報を用いて作成した動力学的震源モデルによるシミュレーション結果を2016年熊本地震の破壊過程と比較した.更に,震源モデルの動力学的パラメータのばらつきが,シミュレーション結果に与える影響を調べた.

第124回 10月6日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

孔井内歪計で観測される長期トレンドデータの解析と地殻応力測定結果の比較

講演者:木口 努(地震地下水研究グループ)

紀伊半島から四国の16地点の歪計で観測された数年以上の長期トレンドを,岩盤中に孔井を掘削することによる応力緩和過程を反映したものとして解析した.このうち8地点で,等方均質弾性体および岩盤の粘性による応力緩和現象の仮定が成り立つ条件を満たした.この8地点のうち6地点では,水圧破砕法などにより応力方位が求められており,5地点でそれらの方位と最大主歪方位は概ね整合した.

長期トレンドは観測地点の応力場を反映した変動を示している場合もあると考えられるが,それでは説明できない場合もあり,データの品質を様々な観点から確認するなど,データ解析の際には注意が必要である.

第123回 9月29日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

2011年及び2016年の茨城県北部のM6級地震の発生過程

講演者: 内出 崇彦(地震テクトニクス研究グループ)

2016年12月28日,茨城県北部においてMj 6.3の地震が発生した.この地域では,2011年東北地方太平洋沖地震以降,急激に地震活動が活発になっており,東北地方太平洋沖地震の直後と同年3月19日に,いずれもM6程度の地震が発生していた.地震波形解析により,地下の断層が5年9か月の時を経て2回すべった部分があることがわかった.地表歪や地震活動の解析によって,東北地方太平洋沖地震の地震時のみならず,地震後にも急速な応力載荷が起こっていることがわかった.

第122回 9月22日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

クラックを含む岩石の弾性的性質:弾性波速度測定によるクラック形状の推定

講演者:増田 幸治

地殻を構成する岩石は,さまざまな大きさ,形,方向をもつクラックを含んでいる.これらのクラックが岩石の弾性的性質に及ぼす影響を予測することは地震学にとっても重要な課題となっている.岩石を通過する弾性波は,岩石内部の情報を運んでくるので,空隙やクラックの情報を得ることができるからである.しかし,この問題は,間隙流体や岩石の異方性の存在のために複雑になっている.ここでは,差応力下で変形する岩石に水平等方性(Transverse Isotropy)のクラック分布を仮定し,クラック形状を見積る方法を示す.また,岩石実験室での測定に適用し,間隙流体を含む岩石の弾性波速度(Vp & Vs)とひずみから,岩石内部のクラックの形状を推定した.

第121回 9月8日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

西南日本に於ける深部低周波微動活動の長期的変動

講演者:武田 直人(地震地下水研究グループ)

西南日本の深部低周波微動は地域ごとに半年程度の周期で発生している.地域によってはその活動範囲や周期が比較的同じ場合もあるが,近くの領域と連動して活動域が広くなったり,周期が不規則な事もある.ただ,適当な大きさの領域内の検出個数を時間と共に積算するとその多くは直線的になる(長い目で見ると周期性が高いと言える).今回は深部低周波微動活動状況のいくつかの長期的な変動(直線からのずれ)の様子を紹介する.

第120回 8月25日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

富士川河口断層帯入山瀬断層の活動性と1854年安政東海地震の隆起に関する調査の予察的報告

講演者:宍倉 正展(海溝型地震履歴研究グループ )

産総研では南海トラフ広域地震防災研究プロジェクトの一環として東京大学と共同で2015年度より1854年安政東海地震に伴う富士川河口周辺の地殻変動について調査を行っている.これまで行谷ほかによっておもに歴史記録の調査が行われてきたが,昨年度は入山瀬断層の推定位置の隆起側でボーリング調査を行った.本セミナーではこれまでの調査の概要を説明し,ボーリング調査結果の予察的な報告を行う.

第119回 8月18日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

岩石変形実験からみる超臨界流体を伴う高温花崗岩帯の力学特性

講演者:北村 真奈美(地震テクトニクス研究グループ)

効率的かつ安全に地熱開発をおこなうためには,誘発地震発生リスクを検証する必要がある.そのためには,地熱開発有望地域である超臨界流体を伴う高温高圧条件下において,開発に伴う間隙水圧の急減と急冷による亀裂の生成・増加を再現し,亀裂の増加と破壊強度の低下の関係を求める必要がある.本発表では,(1)超臨界流体条件下におけるIntact花崗岩の破壊強度と変形様式(脆性破壊か延性変形か)及び,(2)急減圧急冷により生じた亀裂を含む花崗岩の物理特性を紹介する.

第118回 8月4日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

1741年渡島大島噴火の地すべりと津波のシミュレーション

講演者:伊尾木 圭衣(海溝型地震履歴研究グループ)

北海道南西部に位置する渡島大島で, 1741年噴火に伴う山体崩壊により, 津波が発生した.津波堆積物調査より, 北海道奥尻島沿岸と檜山沿岸において, この津波による津波堆積物が確認された.渡島大島噴火による地すべりと, それに伴う津波の数値計算をおこない, 地すべりの崩壊堆積物の分布, 歴史記録による津波の高さ, 津波堆積物の分布, すべてを説明することができるモデルを構築した.

第117回 7月28日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

別府-万年山断層帯の強震動シミュレーション

講演者:吉見 雅行(地震災害予測研究グループ)

別府-万年山断層帯を対象に広帯域地震動予測計算を実施した.考慮した断層は,府内-浅見川-堀田セグメント,三佐セグメント,豊予海峡セグメントの連動である.断層面位置及び形状は主に反射法探査結果と活断層位置を考慮して設定した.このうち,正断層からなるセグメントの傾斜角は45°と60°の2ケースとした.滑り角は別府湾周辺の応力場を考慮した動的破壊シミュレーションの平均値とし,その他の断層パラメータはレシピに準拠した.速度構造モデルは本重点調査で構築した大分県域および大分平野域の速度構造モデルを用いた.

計算手法はハイブリッド法とし,接続周期は1秒,短周期側は統計的グリーン関数法と一次元増幅計算,長周期側は差分法で計算した.工学的基盤面で合成した後,陸域については1次元増幅計算を実施した.

セミナーでは,結果として得られた地震動分布の特徴とその原因等について議論する.

なお本研究は,文部科学省委託事業「別府-万年山断層帯(大分平野-由布院断層帯東部)における重点的な調査観測」の一環として実施したものである.

第116回 7月21日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

イタリアの地震と地震空白域

講演者:石川 有三(地震地下水研究グループ)

地震予知に結びつく地震空白域の概念を最初に提案したのは大森房吉で,イタリアの地震帯の中に未破壊域が二カ所あることを指摘した.近年,そのアペニン山脈に沿ったイタリア中部で中規模地震の発生が続き,一部は大きな被害を引き起こしている.今回,17世紀以降の地震の繰り返し発生を調べ,この地域の地震空白域を推定する.

第115回 7月14日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

四国地方の遷移領域における固着の揺らぎ

講演者:落 唯史(地震地下水研究グループ)

中国・四国地方のGEONETのGNSS日座標値を用いて四国地方のプレート固着領域の下端(いわゆる「遷移領域」)における固着速度を推定したところ,2-3cm/yr程度の幅で時間変化している場所があることがわかった.この現象を固着の時空間的な「揺らぎ」と呼ぶことにする.セミナーではこの揺らぎがGEONETの持つ空間分解能に対して有意であるということを説明した上で,同じ領域で発生する深部低周波微動の発生頻度との関係を議論する.

第114回 7月7日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

大気起源10Beを利用した表層プロセス研究

講演者:中村 淳路(海溝型地震履歴研究グループ)

大気起源10Beは地球磁場変動の復元,マンガンクラストの年代決定,沈み込み帯でのマグマ発生プロセスの研究など,地球科学において幅広く利用されてきた.この数年,土壌中での10Beの挙動や全球的な10Beフラックスが再評価され,大気起源10Beを用いた表層プロセス研究が新展開を見せている.本発表では最近の研究動向をレビューし,大気起源10Beの応用可能性と解決するべき問題点について議論する.さらに10Be/9Beをトレーサーとして津波堆積物に適用した結果について紹介する.

第113回 6月30日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

ニュージーランド・トンガリロ火山帯におけるS波低速度領域の分布

講演者:木下 佐和子(地質情報・地球物理研究グループ)

ニュージーランド北島のトンガリロ火山帯は,太平洋プレートがオーストラリアプレートに沈み込むことで形成されたタウポ火山帯のなかで,最南端に位置する火山地域である.

トンガリロ火山帯は火山活動が活発であるため,地下にはメルトや揮発性物質が存在していると考えられている.先行研究では,地殻浅部の地震波速度構造や比抵抗構造より,メルトや揮発性物質の存在が示唆されているが,地下深部に関しては,現在まで詳細な構造はわかっていない.

そこで本研究では,トンガリロ火山帯の地下約100kmまでの詳細な地震波速度構造を求め,地下深部のメルトや揮発性物質の分布を明らかにするために,トンガリロ火山帯の地震波形データを用いてレシーバ関数解析を実施した.

まず,レシーバ関数の振幅を断面に投影し,太平洋プレートのモホ面とオーストラリアプレートのモホ面をイメージングした.さらに,レシーバ関数のインバージョン解析を実施し,火山帯の地下50kmまでのS波速度を求めた.その結果,太平洋プレートのモホ面はトンガリロ火山帯南部では地下100km以深まで連続してイメージングされたが,火山帯直下では70km程度の深さまでしか連続してイメージングされなかった.さらに,オーストラリアプレートのモホ面は,トンガリロ火山帯直下では不連続になっていた.これらは,火山帯下のメルトやマントルによる地震波減衰の影響だと解釈することができる.また,トンガリロ火山帯の下にはVsが2.5km/s以下のS波低速度領域が深さ20kmに広範囲に分布していることがわかった.このS波低速度領域には,メルトや揮発性物質が存在していると考えることができ,本研究の結果より,メルトや揮発性物質はトンガリロ火山帯より南に約40kmの領域まで広がっていることが示唆された.

第112回 6月23日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

特定サイトの地震時断層変位量の評価にかかる不確定性

講演者:吾妻 崇(活断層評価研究グループ)

内陸活断層で地震が発生する際の被害予測においては,地震動による被害だけでなく,断層上やその周辺で発生する地表面のずれによる被害に対する検討も重要である.地震時断層変位量の評価は,過去の複数の事例に基づく経験式(回帰式)に基づいて通常行なわれる.したがって,評価値を上回る事象が発生することはある種必然的であるが,その可能性を定量的に見積もっておくことは,不確定性のリスク評価を行ううえで必要なパラメータとなってくる.本発表では,地震時断層変位量の評価に伴う不確定性を整理・区分し,そのうちの地表地震断層に沿った変位量の変化と評価式によって導かれる値との比較を行った結果を紹介する.

第111回 6月16日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

SSEが地震発生時間に及ぼす影響

講演者:大谷 真紀子(地震テクトニクス研究グループ)

南海トラフなどプレート境界では,地震発生領域の深部などでゆっくり地震(SSE)が繰り返し発生する.2014年Papanoa地震はSSEが地震を誘発したとみられる場合であり,SSEと地震発生の関係性に注目する必要がある.本研究では,地震発生領域の近くでSSEが周期的に発生する場合を想定し,SSEが地震発生時間に及ぼす影響を簡単な1次元モデルを用いて調べる.

第110回 6月9日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

岐阜県南東部, 屏風山断層周辺の断層帯発達過程-応力場の変化に伴う断層帯の応答-

講演者:香取 拓馬(地震テクトニクスグループ)

中部日本に分布する活断層帯は, 大局的にNE-SW走向とNW-SE走向の直交する断層幾何学で特徴づけられる.これら断層帯の形成過程や時代性については, 既知のプレートモーションの解像度と比較し著しく低い現状にある. そこで本研究では, 岐阜県南東部に位置する屏風山断層周辺を対象とした地表踏査, 断層岩の構造解析・化学分析を行い, 高解像度な断層帯発達過程の解明を目指した. 当断層周辺には, 様々な時代の岩石(ジュラ紀~鮮新世)が分布しており, 断層活動に時代の制約を与えることに適している.

調査解析の結果, 断層帯の形成は始新世の逆断層運動で開始され, 格子状の小規模な断層群で特徴づけられる. その後, 南北圧縮(中期中新世)→NE-SW圧縮(鮮新世)を経て, 1.5Ma以降に現在の応力場と調和的なWNW-ESE圧縮応力場に転換したことが明らかとなった. また, 広域的な調査の結果, 数10kmオーダーの断層帯まで成熟した時期は1.5Ma以降であり, 活構造骨格およびその配置が形成されたのは比較的最近である可能性が高い.

第109回 6月2日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

侵食地形の解析にもとづいて隆起速度の空間的差異を定量化する試み

講演者:大上 隆史(地震災害予測研究グループ)

侵食地形の"険しさ"と隆起速度の関係を解明することは古典的な研究課題であり,隆起速度を反映するような指標値の抽出が試みられてきた.この研究課題に対して,高解像度地形データや各種年代測定法の普及を背景に,最近20年程度で急速に議論が発展し,新しい解析手法が開発されてきた.本発表では最新の研究動向の一部をレビューし,日本の山地と河川システム群を対象として進めてきた事例研究にもとづいて「侵食地形」や「堆積地形・堆積物」を指標として「隆起速度」を定量的に比較可能か議論する.

第108回 5月19日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

日奈久断層帯海域部における"Seismic Trenching"を用いた断層活動履歴の解明

講演者:八木 雅俊(地震災害予測研究グループ)

海域活断層の調査で用いられる音波探査は,その特性から上下変位が主体の正断層や逆断層に比べ,水平変位が主体の横ずれ断層の把握は原理的に困難とされてきた.本研究では,こうした課題を克服するSeismic Trenchingの確立を目指した.検討対象断層として,日奈久断層帯海域部の八代海海底断層群を選定し,高分解能地層探査を稠密に実施することで,3次元的な地下構造の把握を行った.その結果,溝状地形を変位基準として右横ずれの検出に至った.ここでは,その成果と今後の課題について報告する.

第107回 5月12日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326) 

2015年9月鬼怒川大水害による浸食・堆積過程

講演者:松本 弾(海溝型地震履歴研究グループ)

洪水は津波と同じく陸域を広く浸水させる自然災害であり,両者の堆積物を識別することは重要であるが,現世の洪水堆積物の詳細な記載例は多くない.本発表では,平成27年関東・東北豪雨の際に鬼怒川の氾濫によって形成された浸食痕や洪水堆積物を流向や浸水深と合わせて詳細に記載した.その結果,その堆積学的・微化石学的特徴が,越水から破堤へと至る鬼怒川の氾濫過程と対応していることが明らかになった.

第106回 4月28日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

トレンチ調査が示す日奈久断層帯高野-白旗区間の活動履歴

講演者:白濱 吉起(活断層評価研究グループ)

2016年4月に発生した熊本地震では,布田川断層帯が主に活動し,約34kmに渡って地震断層が出現した.隣接する日奈久断層帯では地表地震断層がその北端にのみ生じたが,余震活動は断層帯中央部の日奈久区間にまで及んでおり,大地震の発生が危惧される.そのため,我々は同断層帯における活動履歴の詳細 を明らかにすることを目的に,北側の高野-白旗区間においてトレンチ調査を実施した.本トレンチでは壁面に明瞭な断層と地層の変形が確認され,15000 年前以降に4~5回のイベントが確認された.発表ではその詳細について紹介し,議論を行う.