部門長挨拶

2024年度当初のご挨拶

2024(令和6)年4月

研究部門長 藤原 治

研究部門長今年は,年初に発生した能登半島地震により大規模な被害が発生しました.この出来事を通じて,防災研究の重要性を改めて認識することとなりました.
産総研は第5期中長期計画において「社会課題解決と産業競争力強化」をミッションに掲げています.活断層・火山研究部門が主体となって進めている地震・津波・火山に関する研究は,自然災害に負けない強靭な国づくりに不可欠であり,産業競争力強化の礎でもあります.また,部門の研究開発のもう一つの柱である原子力利用にかかる安全規制の支援研究も,現代社会になくてはならないテーマです.

産総研は「社会課題解決と産業競争力強化」のために,成果の社会実装と産総研の価値の最大化を掲げています.ここで言う価値にはいろいろな意味があり,研究所としてのブランド力であったり,社会から信頼される研究力・技術力であったり,企業等からの投資額の増加もあるでしょう.活断層・火山研究部門で行っている研究開発は基礎的なものが多いですが,その成果が実際に社会に使われる姿を見通した研究をすることが,研究所の価値を高めるのに必須と考えています.

当部門では今年度も引き続き,大規模自然災害等から国民を保護し,国民生活および経済に及ぼす影響を最小化するとの「国土強靱化基本計画」(平成30年12月)の基本理念を尊重しつつ,活断層,海溝型巨大地震,火山に関する調査研究を行います.また,これらの知見も生かしつつ,放射性廃棄物の中深度処分・最終処分や原子力施設の立地に関わる安全規制等の支援研究を進めます.これらの研究業務は,国の「知的基盤整備計画」や「国土強靭化年次計画」等に示されたマイルストーンを意識して進めるとともに,エンドユーザーである国や自治体等のニーズ(ハザードマップや防災・避難計画に必要な過去の地質災害の履歴や範囲,数十万年単位で起こる地質現象と地下環境への影響を予測・評価する技術,など)を見極めつつ実施していきます.

また,地質調査総合センターで令和4年度から4年計画で進めている「防災・減災のための高精度デジタル地質情報の整備事業」の主要課題として,九州の陸と沿岸の活断層調査,活断層データベースの空間分解能の向上,火口位置情報の整備なども進める予定です.地震・火山噴火の発生・発災時には,関係機関とも連携して緊急調査などを行い,災害の軽減や復旧活動の迅速化にも貢献する所存です.

社会課題の解決には,地質の専門的な研究だけでなく,産総研の持つ様々な知識や技術の融合が必須です.特に,デジタル化した情報とデジタル技術を活用した社会の変革が急速に進んでいます.当部門でも,こうしたDXの進展を踏まえた研究開発を行うとともに,それに必要な人材の確保・育成にも努めていきます.また,産総研内にとどまらず,国内外の研究機関等とも連携を深め,最先端の研究開発を追及していきます.今年度は5名の新人が当部門に加わりました.若い力を得て,さらに飛躍の年としたいと思います.引き続き皆様のご指導とご協力をお願いします.