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活断層・地震研究セミナー

研究者間の意見交換,議論を目的とした公開セミナーです.
一般の方でも聴講可能ですが,内容は専門家向けです.産総研では立ち入りに手続きが必要ですので,外部の方で聴講を希望される場合,予め問い合わせページからご連絡ください(報道,行政機関の方は,所属もお知らせ下さい).折り返し,当日の入館手続きをご連絡させていただきます.

2024年度 2023年度 2022年度 2021年度 2020年度 2019年度 2018年度 2017年度 2016年度

2015年度 2014年度

第73回 3月25日(金) 15:00-16:00 国際セミナー室(7-8-326)

千葉県山武市蓮沼海岸にみられた2011年東北沖津波堆積物

講演者:松本 弾(海溝型地震履歴研究グループ)

地層中のイベント層を古津波堆積物と識別するためには,現世の津波堆積物にどのような特徴があるかを明らかにすることが必要である.本研究では,千葉県山武市の蓮沼海岸に形成された2011年東北沖津波堆積物を対象に調査を実施した.ここでみられた津波堆積物は淘汰のよい細粒砂からなり,内陸に薄層化する傾向を示す.発表では,他の現世津波堆積物や古津波堆積物との比較を行いながら,蓮沼海岸でみられた津波堆積物の堆積学的な特徴を報告する.

第72回 3月18日(金) 15:00-16:00 別棟大会議室(7-3C-211)

日本における活断層調査-その歴史と今後の課題-

講演者:吉岡敏和(活断層評価研究グループ)

日本の活断層研究は1960年代に開花期を迎えるが,活断層の過去の活動を目の当たりにできるトレンチ調査は,1978年に山崎断層および鹿野断層で行われたのが日本で最初である.その後,大学グループや地質調査所(当時)などの手によって,各地の主要活断層でトレンチ調査が行われ,断層活動の繰り返し性が実証された.活断層調査のあり方が大きく変化したのは,1995年の兵庫県南部地震である.この地震をきっかけに,政府に地震調査研究推進本部が設置され,国家プロジェクトとしての活断層調査が開始された.年間のトレンチ調査数は約10倍に跳ね上がり,研究者は調査に追われることになる.さらに,2008年の岩手・宮城内陸地震以降,短い活断層や活動度の低い活断層にまで調査対象が広げられた.その間,さまざまな成果が得られ,また調査技術の進歩があったが,兵庫県南部地震から20年が経過した今,若手研究者の減少という大問題に直面している.講演では,日本の活断層調査の歴史を振り返りながら,いかに若手研究者の興味をひくような調査ができるかを考えたい.

第71回 3月11日(金) 15:00-16:00 国際セミナー室(7-8-326)

鴨川低地断層帯および三浦半島断層群海域延長部における海底活断層調査

講演者:阿部信太郎(地震災害予測研究グループ)

平成26年度文部科学省委託「沿岸海域における活断層調査」の一環として,鴨川低地断層帯海域延長部および三浦半島断層群海域延長部において音波探査を主体とした海底活断層調査を実施した.

この結果に基づいて,鴨川低地断層帯および三浦半島断層群の海域延長部にあたる鴨川沖(太平洋側),保田沖(東京湾側),金田湾沖(東京湾側),葉山沖(相模湾側)における活構造の分布状況とそれらの活動性について報告する.

第70回 3月4日(金) 15:00-16:00 国際セミナー室(7-8-326)

首都圏のプレート構造のレビューと課題

講演者:石田瑞穂

最新の科学的知見に基づきあらゆる可能性を考慮して検討した結果として,平成25年12月に,「首都のM7クラスの地震及び相模トラフ沿いのM8クラスの地震等の震源断層モデルと震度分布・津波波高等に関する報告書」が提出された.報告書の基礎となった首都圏に沈み込んでいるフィリピン海及び太平洋プレートの沈み込みと地震の発生機構に関して,代表的な研究成果をレビューし,今後の課題について紹介する.

第69回 2月26日(金) 15:00-16:00 国際セミナー室(7-8-326)

成熟したマイロナイト様組織を持つ岩石に地震時の高速せん断を与えたときの挙動について


講演者:高橋美紀(地震テクトニクス研究グループ)

マイロナイト中に形成されるシュードタキライトなど,延性変形を示す組織の中にある局所化した高速変形の証拠は,非地震時は延性変形が卓越する高温・高圧力下にある岩石も地震の発生や伝播を起こしうることを示している.今回の実験の動機は,延性変形組織が成熟して形成されている環境で高速剪断が起きるとき,剪断の集中がどのように形成されるのか,またその時の摩擦挙動は摩擦の速度-状態依存則に従うのか,という疑問にある.今回,摩擦の速度-状態依存性を,岩石のアナログ物質として塩水に飽和した岩塩と白雲母の混合物に対して実施した.用いた試験機はUtrecht 大学Experimental Rock Deformation/HPTラボに設置の回転式剪断試験機である.実験条件は先行研究であるNiemeijer and Spiers (2006)をもとに,常温・垂直応力5MPaとし,岩塩と白雲母の粉末を4:1の重量比で混合し試料とした.マイロナイト様の変形組織が作られるよう,延性変形として,圧力溶解クリープが起きるように飽和した塩水を注入している.今回の実験で報告すべき最も重要な点はマイロナイト様の延性変形組織の中を高速の剪断が伝播するとき,摩擦の速度-状態依存則のパラメタの一つであるdirect effectは,ある閾値Vc(20ミクロン/秒)を超えると極端に小さくなることである.direct effectは変形が動的に進行しはじめる速度をスケールすることから,天然におけるVcを探すことが今後重要な実験課題となるだろう.

第68回 2月19日(金) 15:00-16:00 国際セミナー室(7-8-326)

佐渡海嶺における最近約350万年間の地殻短縮量

講演者:岡村行信

佐渡海嶺は日本海東縁南部に位置し,最近約350万年間の東西圧縮によって,多くの幅10-20kmの背斜を伴う逆断層が発達してきた.これらの逆断層が上部地殻全体を切っていれば,背斜の断面積は断層のすべりと断層下端深度の積に一致するはずで,地殻短縮量を推定することができる.そこで,佐渡海嶺を横断する約50の反射断面において,100以上の背斜の断面積を求めた.その結果に基づいて,佐渡海嶺全体の地殻短縮量,平均短縮速度,それぞれの背斜の短縮量の変化や平行する背斜間の短縮量の関係を議論する.

第67回 2月12日(金) 15:00-16:00 国際セミナー室(7-8-326)

東北地方太平洋沖地震(M9.0)に伴う地下水変化の特徴

講演者:北川有一(地震地下水研究グループ)

2011年3月11日に東北地方太平洋沖で巨大地震(M9.0)が発生した.産総研の地下水観測網の地下水位・地下水圧・自噴量には,(1)地震波による振動,(2)地震時のステップ状の変化,(3)地震直後からの継続的な変化,(4)津波に伴う振動の4つの現象が見られた.地震後1日間での変化を調査したところ,多くの観測井戸で低下・減少する変化を示した.これらの低下・減少は地震の断層変位による静的な体積歪変化と矛盾しない傾向であった.一部の観測井戸では上昇・増加であったが,静的な体積歪変化と矛盾する.潮汐応答から推定した歪感度係数を用いた定量的な分析を行うとともに,これらの変化の特徴と原因を考察する.

第66回 2月5日(金) 15:00-16:00 国際セミナー室(7-8-326)

2014年長野県北部の地震の前震活動

講演者:今西和俊(地震テクトニクス研究グループ)

2014年11月22日に発生した長野県北部の地震では,本震の4日前から前震活動が始まったことが報告されている.この前震活動の規模は必ずしも大きくないが,稠密な定常観測網で捉えられており,従来の前震の研究よりも詳細な解析が可能である.本発表では前震活動の時空間発展の様子や震源パラメータの特徴を明らかにし,本震発生との関係について議論する.

第65回 1月29日(金) 15:00-16:00 国際セミナー室(7-8-326)

本宮観測点における水理試験結果および水質・ガス分析結果

講演者:松本則夫(地震地下水研究グループ)

和歌山県田辺市本宮町付近では過去5回の東南海・南海地震と関係する湯峰温泉の湧出の停止や直下のプレート境界での深部低周波微動・深部すべりが報告されている.当グループでは田辺本宮観測点を設置し,地殻ひずみ・地下水位・地震の観測を行なっている.一方,東大理学部のグループでは地下ガスが深部由来かどうかを判別する鍵である3He/4Heを野外で連続測定できる質量分析装置を開発中である.この装置を設置する観測点の候補として,田辺本宮観測点の南東約5kmにある本宮観測点の深さ1000mの観測井戸の揚水試験,採水,ガスの採取や温度・電気伝導度検層を深部流体研究グループと水文地質研究グループの協力を得て行なった.調査の結果,当観測井戸の帯水層の透水係数は十分に大きく,また採取したガスの3He/4He比は周辺の温泉と同様に高いことがわかった.

第64回 1月22日(金) 15:00-16:00 国際セミナー室(7-8-326)

山口県菊川断層帯の古地震調査

講演者:宮下由香里(活断層評価研究グループ)

平成26年度文科省委託調査として,山口県菊川断層帯の古地震調査を実施した.菊川断層帯は山口県西部に分布する北西-南東走向の左横ずれ変位を主体とする活断層である.同断層帯の最新活動時期を絞り込むため,下関市においてトレンチ調査を実施した.その結果,約1万5千年前以降に複数回のイベントが認定できることがわかった.イベントの具体的な回数等については検討中である.

第63回 1月8日(金) 15:00-16:00 国際セミナー室(7-8-326)

大分平野における稠密小半径微動アレイ探査

講演者:吉見雅行(地震災害予測研究グループ)

大分平野の約100地点にて半径3m~20m程度のアレイ微動探査を実施した.探査期間は主に2015年6月である.アレイは全て正三角形の頂点と重心から成る4点アレイとし,原則として1地点あたり2半径(3.5mと15mなど)の測定を実施した.観測には三成分速度計(Lennartz LE-3D/20s(固有周期20秒)もしくは東京測振SE-321(固有周期10秒)と白山工業製データロガーLS-8800を1アレイあたり4台ずつ使用し,200Hzサンプリングにて15分間以上の微動データを取得した.位相速度を換算波長に変換し1/3波長をもって深度変換した結果,既往研究の沖積層基底深度分布と概ね対応する結果が得られた.さらに,H/Vスペクトルの周波数特性についても検討した.セミナーでは増幅特性についても話題提供予定.

第62回 12月25日(金) 15:00-16:00 国際セミナー室(7-8-326)

中央構造線,脆性領域における断層内部構造発達

講演者:重松紀生(地震テクトニクス研究グループ)

大地震の原因となる断層は地殻全体にその構造が及ぶ.従って全体像の理解には異なる深さでの断層挙動の理解が必要である.ここでの戦略は,削剥断層において,過去に異なる深度で経験した断層挙動を読み取ることである.削剥断層としては,三重県松阪市飯高町の粟野・田引露頭を選んだ.記載結果は粟野・田引露頭の断層岩が,多様な条件における断層運動を経験したことを示す.すなわち今後の,地殻全体に及ぶ断層の挙動の評価の土台ができたことになる.

第61回 12月11日(金) 15:00-16:00 国際セミナー室(7-8-326)

大阪湾岸の東西性正断層「高石断層」と深部流体の貫入モデル

講演者:杉山雄一(活断層・火山研究部門), 今西和俊(地震テクトニクス研究グループ)

上町断層帯の重点的調査観測により高石市内で発見された「東側が深くなる撓み構造」は,ほぼ直交する2測線の反射法地震探査結果の解析から,ほぼ東西走向で南へ約80°傾斜する,正断層成分が卓越する断層と考えられる.高石断層近傍における最小圧縮主応力軸は断層の走向に直交する南北方向に近くほぼ水平,最大圧縮主応力軸は鉛直に近いと推定され,同断層近傍では局所的に大阪地域の広域応力場(東西方向の圧縮)とは異なる応力場が形成されていたと考えられる.このような応力場の形成機構として,古い高角横ずれ断層への深部流体の貫入モデルを提示する.また,いわき地域の深部流体テクトニクスとの比較を試みる.なお,本講演の内容はGSJ地質ニュース11月号に掲載されている.

第60回 12月4日(金) 15:00-16:00 国際セミナー室(7-8-326)

既存ボーリング柱状図資料の検討に基づく布田川断層帯宇土区間の伏在断層の分布と 活動性について

講演者:丸山 正(活断層評価研究グループ)

熊本平野南縁に分布する布田川断層帯宇土区間は,2013年の地震調査研究推進本部による「九州地域の活断層の長期評価」の公表に関連して,布田川断層帯・日奈久断層帯の評価の見直しにより新たに認定されたものである.本区間の大部分は,地形表現を伴わない伏在断層である.こうした伏在断層の形状と活動性を解明するため,断層を横切る反射法地震探査と測線沿いでのボーリング調査を実施する(12月以降に実施)とともに,断層周辺の既存ボーリング柱状図資料を収集し,鍵層の分布や深度情報をもとに断層の分布や変位量の検討を進めている.本発表では,既存ボーリング柱状図資料の検討結果を報告する.

第59回 11月13日(金) 15:00-16:00 国際セミナー室(7-8-326)

強震記録から推定される2014年長野県北部の地震の震源過程

講演者:堀川晴央(地震災害予測研究グループ)

2014年11月に発生した長野県北部の地震(MJMA6.7)は糸魚川-静岡構造線活断層系の北端付近で発生した地殻内地震である.震源近くの強震記録を用いて,この地震の震源過程を推定した.余震分布を参考 に,北北東走向で,東南東に傾き下がる断層面を仮定した.破壊開始点の北東側(断層の深部)に大きなすべりが,そして,地表地震断層が確認された辺りにもやや大きなすべりが推定された.破壊の伝播が断層の深部と浅部とで大きな差があると,観測波形がより説明できることがわかった.具体的には,断層の深部に向かって破壊は速く進行し,断層の浅部に向かって破壊伝播は遅い.

第58回 11月6日(金) 15:00-17:00 別棟大会議室(7-3C-211)

15:00-16:00

Numerical simulation of long–term earthquake activity on an active-fault cluster in the Japanese island

日本列島の活断層群の長期的地震活動シミュレーション

講演者:桑原保人(活断層・火山研究部門)

We have been conducting numerical simulations of earthquake activity on an active fault cluster in the Japanese island for 50,000 years. Sixty major active faults were embedded into a 3D realistic inhomogeneous rheological structure model of crust and mantle of the central part of Japanese island for FEM simulations.

The results can be compared to the actual active faults data of earthquake recurrence intervals and/or their variances of seismic cycles.


16:00-17:00

Extreme hydrothermal conditions near an active plate-bounding fault, DFDP-2B borehole, Alpine Fault, New Zealand

講演者:Rupert Sutherland(GNS Science,Victoria University Wellington)

Thermal and fluid pressure conditions within geological faults control processes of rock creation and mineralization, and are a primary influence on how earthquakes happen.

The upper crust in continents typically has hydrostatic fluid pressure and a thermal gradient of 31±15°C/km.
These conditions have been investigated at depth by drilling immediately after earthquakes, but such experiments do not reveal how conditions vary with time on a geological fault during the earthquake cycle.
DFDP-2B was the first scientific borehole of appreciable depth to investigate a major active continental fault that is late in its cycle of stress accumulation and expected to rupture in a future earthquake.

The DFDP-2B borehole sampled 893 m of the hanging-wall of the Alpine fault zone. The pore fluid pressure gradient is 9±1% above hydrostatic and the geothermal gradient is 125±55°C/km.

These very unusual conditions can be accounted for by a combination of rock advection that transports heat from depth by uplift due to oblique slip on the fault, and topographically-driven fluid advection through high-permeability fractured rock that transports and concentrates heat and causes fluid over-pressure in valleys.
A shear heating contribution from work done on the fault is possible, but not required to explain the observations.

Our results demonstrate that highly-anomalous ambient conditions can exist in the vicinity of active faults in their pre-earthquake state.

These conditions are a consequence of geologically-rapid long-term fault movement.

第57回 10月30日(金) 15:00-16:00 国際セミナー室(7-8-326)

2014年長野県北部の地震の動力学的震源モデル

講演者:加瀬祐子(地震災害予測研究グループ)

2014年長野県北部の地震では,震源断層の南側半分で神城断層に沿った地表地震断層が断続的に認められたが,震源断層の北側半分では観察されていない(勝部ほか,2015).一方,強震波形を用いた震源インバージョンでは,すべりの大きい領域は,主に 震源の北東側に求められている(浅野ほか,2015;小林ほか,2015; 芝,2015;堀川,2015).これらの現象を説明できる動力学的震源モデルを構築することを目指し,今西・ 内出(2015)が再決定した本震および余震の分布を参考に,複数の 断層モデルを検討した.その結果,断層面を1枚,もしくは2枚仮定する比較的単純な断層モデルでは,すべての現象に調和的な動力学的震源モデルを得ることはできなかった.最後に,初動解とCMT解の違いに着目した断層モデルの可能性を提示する.

10月16日(金)に予定しておりました第57回セミナーは都合により12/11に延期となりました.

-12/11(金)予定-

大阪湾岸の東西性正断層「高石断層」と深部流体の貫入モデル

講演者:杉山雄一(活断層・火山研究部門),今西和俊(地震テクトニクス研究グループ)

上町断層帯の重点的調査観測により高石市内で発見された「東側が深くなる撓み構造」は,ほぼ直交する2測線の反射法地震探査結果の解析から,ほぼ東西走向で南へ約80°傾斜する,正断層成分が卓越する断層と考えられる.高石断層の100万年間の平均上下変位速度は0.25m/千年程度と推定され,変動地形,地質データ及び大阪湾の地下構造に関するデータから,その全長は18km未満と推定される.高石断層近傍における最小圧縮応力軸は断層の走向に直交する南北方向に近くほぼ水平,最大圧縮応力軸は鉛直に近いと推定され,同断層近傍では局所的に大阪地域の広域応力場(東西方向の圧縮)とは異なる応力場が形成されていたと考えられる.このような応力場の形成機構として,古い高角横ずれ断層への深部流体の貫入モデルを提示する.なお,本講演の内容はGSJ地質ニュース11月号に掲載される予定である.

第56回 10月9日(金) 15:00-16:00 国際セミナー室(7-8-326)

熱流体解析に基づくガス圧式高温高圧岩石変形試験機の改良案の創出

講演者:竿本英貴(地震災害予測研究グループ)

現存するガス圧式高温高圧岩石変形実験装置を改良し,試験片を1000℃程度まで 安定して加熱できるようにしたい. 装置の試作を行う前に,熱流体解析によって装置内部の温度場をあらかじめ予測し,断熱材の性能等についての必要要件を検討しておくことは,コストや安全の観点 からは極めて重要である.ここでは,実験装置の有限要素モデル上で,熱伝導方程式,連続の式,ナヴィ エ・ストークス方程式,気体の状態方程式を 連立させて解ことで装置部材内の温度場や封入ガスの流れ場を定量的に評価した.また,試験片を均一に加熱するためのヒーターの発熱量分布をトポロジー最適化によって求めた.当日は熱流体解析の事例紹介を交えつつ,数値解析から得られた知見について発表する.

第55回 9月25日(金) 15:00-16:00 別棟大会議室 7-3C-211

震災・教育・琵琶湖・地下水・地殻変動-大学への異動の経緯と今後の展望-

講演者:小泉尚嗣(総括研究主幹)

東日本大震災後に教育と研究について考えてきたことが,大学への異動を決意する動機の1つとなった.異動先の大学の主な研究・教育の場である琵琶湖を対象として,地下水・地殻変動・地震をキーワードとして今後どのようなことができるかを考えた.以上について説明する.

第54回 9月18日(金) 15:00-16:00 国際セミナー室(7-8-326)

断層状態の推定に向けた微小地震の震源パラメータ研究

講演者:内出崇彦(地震テクトニクス研究グループ)

地震の破壊過程の特徴は,その背後にある物理や地震発生場の状態(応力,断層強度やそれらの分布など)を反映していると考えられる. そこで,地震発生場の状態を調べるために,微小地震の震源パラメータの研究に取り組んでいる. 本講演では,発震機構解など既によく活用されている震源パラメータの例を通じて上記の研究の考え方を解説し, 現在進めている応力降下量,震源スペクトル形状,マグニチュードの研究を紹介する.

第53回 9月4日(金) 15:00-16:00 国際セミナー室(7-8-326)

孔井内多成分歪計で観測される長期トレンドを用いた地殻浅部の応力方位の推定

講演者:木口 努(地震地下水研究グループ)

孔井内歪計で観測される歪データのうち,数年程度以上の長期トレンドの主要部分は,粘弾性の特性を持つ岩盤に孔井を掘削することによる応力擾 乱の緩和過程を反映している可能性がある.このモデルを用いて,愛知県~紀伊半島~四国で観測された歪の長期トレンドから応力方位を推定することについて検討した.発表では,モデルを歪データに適用する妥当性の確認,他の応力測定手法から得られた応力方位との比較などについて説明する.

第52回 8月28日(金) 15:00-16:00 国際セミナー室(7-8-326)

断層の強度回復に関する実験研究

講演者:増田幸治(活断層・火山研究部門)

断層帯はcoreとdamage zoneから成る.断層帯は多くのhealed面を含んでいるが,その強度は不明である.healed面の強度が周囲の岩石と同等かそれ以上に回復しているとすれば,破壊とhealingの繰り返しが幅の広い断層帯を生成するメカニズムのひとつとなるかもしれない.そこでhealed面の強度回復を検証するために,healed面を含んだ岩石試料を使った圧縮破壊実験を行った.AE及び歪の測定,実験前後のX線CT撮影を行い,healedした断層面の強度回復を示す結果を得た.

第51回 8月21日(金) 15:00-16:00 国際セミナー室(7-8-326)

稠密地震計アレイによる深部低周波微動の観測

講演者:武田直人(地震地下水研究グループ)

産総研では深部低周波微動(LFT)の発生機構等を調査するために,2011年3月から三重県松阪市で稠密地震計アレイ観測を行っている.アレイの周辺では3ヵ月~6ヵ月間隔で活発なLFT活動が起きており,これまで十数回の大規模な活動時のアレイ記録が取得できた.今回はこのアレイ記録を用いてLFTの震源位置を求め,LFT高速移動の詳細な時間発展の様子を紹介する.

第50回 7月31日(金) 15:00-16:00 国際セミナー室(7-8-326)

横ずれ地震断層のフラクタル的特性からみた断層変位の影響範囲

講演者:粟田泰夫(活断層評価研究グループ)

断層の形状や形成過程には,広いスケール幅で相似性が認められる.詳しい調査がなされた1999年Izmit地震や1995年兵庫県南部地震に伴う横ずれ型地震断層では,長さが10-30km程度で,直線的な主部と断層が屈曲あるいは分散する末端部から構成されるセグメント構造が顕著に認められ,それらの内部にはより下位のランクのセグメントが入れ子構造をなして分布している.地震断層のフラクタル的な形状の特性とその発達過程に着目することで,横ずれ型活断層のセグメント末端部や,主断層周辺における断層の出現範囲をより適切に予測できる可能性がある.

第49回 7月24日(金) 15:00-16:00 国際セミナー室(7-8-326)

1854年安政東海地震による富士川河口域での鉛直変位量の推定

講演者:行谷佑一(海溝型地震履歴研究グループ)

1854年安政東海地震により駿河湾西岸が隆起したことはよく知られている.しかしながら湾奥の富士川河口域においては,鉛直地変量は必ずしも明確ではない.本発表では歴史記録から判明する富士川流路の変遷に着目し,同地震による鉛直地変量を推定する試みについてその進捗を紹介する.

第48回 7月17日(金) 15:00-16:00 国際セミナー室(7-8-326)

紀伊半島南端付近における古地震・古津波調査の最近の進捗について

講演者:宍倉正展(海溝型地震履歴研究グループ)

和歌山県串本町および周辺地域において,過去の南海トラフ沿いの地震に関わる隆起痕跡,津波堆積物,津波石について,法政大学と地域地盤環境研究所と共同で調査研究を進めている.昨年度は古座川河口の沖合にある九龍島において隆起痕跡を調査した結果,これまで得られている津波石や津波堆積物とほぼ一致した年代を得た.セミナーではこれらの年代と他地域との比較も含めて南海トラフの地震履歴について検討したい.

第47回 7月10日(金) 15:00-16:00 国際セミナー室(7-8-326)

火山噴火と地震活動の同時表示 その1.日本と周辺

講演者:石川有三 (招聘研究員)

地震活動解析に用いるソフトSeis-PCで地震活動と同時に火山噴火活動も表示できるようにした.火山噴火データは,スミソニアン研究所のデータベースを入力した.その結果,南海トラフの巨大地震の後に,火山噴火が増加した例はほとんど無く,1707年の富士山宝永噴火は例外であることが分かった.869年貞観地震,2011年東北地方太平洋沖地震の後も火山噴火は増加していないことも分かったほか,火山噴火回数の年代的変化が歴史地震の発生回数変化と類似しており,その原因は古文書史料数の変化を反映している可能性が高い.

第46回 7月3日(金) 15:00-16:00 国際セミナー室(7-8-326)

2007年及び2014年御嶽山噴火前後の産総研王滝観測点における地下水圧変化と地殻変動

講演者:小泉尚嗣(総括研究主幹)
共著:佐藤 努・北川 有一

我々は,御嶽山山頂から南東へ約10kmの所にある王滝観測点(GOT)で地下水の観測を1998年に開始した. GOTでは,井戸を密閉して地下水圧を測定している.GOTの地下水圧(水頭)の体積ひずみ感度は1~3mm/nstrainの値をとる. 1998年以降,御嶽山は2度噴火した.2007年噴火と2014年噴火である.また,この間に,2011年東北地方太平洋沖地震(3.11地震)もあった.2007年噴火の際は噴火数ヶ月前に御嶽山を挟む基線長のゆっくりとした増加が観測されたが,2014年噴火の時はそのような変化は観測されなかった.2007年噴火の際,上記の基線長の増加と同期して王滝観測点では水圧が20cm 低下したが,2014年噴火の時は,そのような変化は認められなかった.20cmの水位低下は上記の体積ひずみ感度を考慮すると100nstrainの体積歪増加を意味し,基線長の前兆的増加をひずみに換算した約300nstrainの値とよく整合する.また,3.11地震の時にも,基線長変化と整合する地下水圧変化が認められた.これらの地下水圧変化と地殻変動の詳細について発表を行う.

第45回 6月26日(金) 15:00-16:00 国際セミナー室(7-8-326)

歪・傾斜・地下水データを用いた短期的スロースリップの推定

講演者:落 唯史(地震地下水研究グループ)

西南日本では継続時間が数日程度の短期的スロースリップ(SSE)が定常的に発生している.地震地下水研究グループでは,産総研の歪・傾斜・地下水のデータ及び気象庁・防災科研のデータを用いて,この短期的SSEが発生する都度,断層すべりモデルを推定実施している.今回は(1)実際の推定結果の紹介(2)現在挑戦している新たな解析(3)現在の解析の限界に関する簡単な考察の三点を発表する.

第44回 6月19日(金) 15:00-16:00 国際セミナー室(7-8-326)

大型試料を用いた摩擦実験とその技術的問題について

講演者:東郷 徹宏(活断層評価研究グループ)

断層岩を用いた室内での摩擦実験と天然の断層の間には,大きなサイズの違いが存在し,破壊強度や摩擦挙動のスケール効果が問題となる.そこで本発表では,発表者が開発に携わった,メートルサイズの大型岩石試料を用いた二軸摩擦試験機の概要について紹介を行い,初期の実験結果について発表をする.また,大型試料を用いた摩擦実験を実施する上での技術的な課題について議論を行う.

第43回 6月12日(金) 15:30-16:30 国際セミナー室(7-8-326) *開始時刻が15:30に変更になりました

日本海溝沿いにおける古津波痕跡調査

講演者:澤井 祐紀(海溝型地震履歴研究グループ)

海溝型地震履歴研究グループでは,2004年以降,貞観地震による津波堆積物の研究を行ってきた.今回は,2011年以降に仙台平野や九十九里浜などにおいて行った調査について紹介する.

第42回 6月5日(金) 15:00-16:00 国際セミナー室(7-8-326)

反射法地震探査記録に基づく奥尻島周辺における海底地質図作成

講演者:森 宏(地震災害予測研究グループ)

現在,地質調査船「白嶺丸」のGH94航海およびGH95航海によって取得された反射法地震探査記録を基に「奥尻島北方」および「奥尻海盆」地域における20万分の1海底地質図作成を進めている.今回は「奥尻海盆」地域についての研究経過を報告する.作成した地質図とともに,層序区分,褶曲・断層の分布,周辺の陸域・海域地質との対比,およびその他の構造的特徴について紹介する.

第41回 5月29日(金) 15:00-16:00 国際セミナー室(7-8-326)

高知県南国市における津波堆積物調査

講演者:谷川晃一朗 (海溝型地震履歴研究グループ)

南海トラフで過去に発生した海溝型巨大地震の規模や破壊領域を推定することを目的に高知県沿岸において津波堆積物調査を行った.南国市では2013年に機械ボーリングとジオスライサーを用いて掘削調査を行った.標高3m以下の海岸低地の9地点で深さ最大9mまで掘削を行い,鬼界アカホヤ火山灰以降の堆積物を採取した.これらの堆積物は主に粘土~シルトおよび泥炭層からなり,数枚のイベント砂層を狭在する.セミナーではこれらの試料分析の途中経過を報告する.

第40回 5月22日(金) 15:00-16:00 国際セミナー室(7-8-326)

2011年東北沖津波が残した有機・無機地球化学的特徴

講演者:篠崎鉄哉(海溝型地震履歴研究グループ)

過去に発生した津波の解析には津波堆積物が用いられる.津波堆積物の認定根拠の一つとして地球化学的アプローチがあるが,どのような化学的特徴がどのような堆積環境に保存されるのかはこれまで十分に議論されてこなかった.本研究では,2011年東北沖津波を対象に3地域(宮城,福島,千葉)で堆積物試料を採取し,バイオマーカーおよび水溶性イオンの挙動に関する検討を行った.本発表ではこれらの研究結果について報告する.

第39回 5月15日(金) 16:00-17:00 国際セミナー室(7-8-326)

東北沖沈み込み帯プレート境界物質の摩擦特性

講演者:澤井みち代(地震テクトニクス研究グループ)

2011年3月11日に東北地方太平洋沖地震が発生し,甚大な被害をもたらした.さらに,地震前には深さ20 kmより浅部においてスロー地震が発生したことが報告されている(例えばIto et al., 2013).そこで本研究では,東北沖でなぜこのように多様な地震活動がおこるのかを理解するために,当地域の沈み込みプレート境界に存在すると予想される物質の低速~高速,低温~高温,低圧~高圧条件下の摩擦特性を調べた.本発表ではその成果を紹介する.

第38回 5月8日(金) 15:00-16:00 国際セミナー室(7-8-326)

チベット高原北東縁クムコル盆地における変動地形とその発達過程

講演者:白濱 吉起(活断層評価研究グループ)

これまで,衛星画像と地形データによる変動地形解析と宇宙線生成放射性核種を用いた分析によって,気候変動とテクトニクスの相互作用によって形成された地形の発達過程について研究を行ってきた.特に,チベット高原北東縁の地形境界に位置するクムコル盆地に着目し,その地形発達過程を明らかにするとともに,盆地を変形させる背斜構造の変動速度と地下の断層構造の推定を試みた.本発表ではこれらの研究結果について紹介する.