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産総研 質量標準研究グループ

質量標準研究グループでは、プランク定数にもとづく新しいキログラムの定義から、日本の産業・科学の基盤となる質量の基準を作り出す研究を実施しています。

首席研究員着任のご挨拶お知らせ

国立研究開発法人 産業技術総合研究所 計量標準総合センター 首席研究員 倉本直樹



20234月に首席研究員に着任致しました。私は質量の単位「キログラム」に関する研究を実施しています。2019年、キログラムの定義が130年ぶりに改定されました。「国際キログラム原器」に代わって、普遍的な物理定数「プランク定数」にもとづく定義が実現したのです。計量標準総合センター(NMIJ)は、その前身機関である計量研究所も含め、半世紀にわたって、人工物に頼らないキログラムの定義を導くための計測技術開発に取り組んできました。新たな定義は、世界各国の国家計量標準機関による8つのプランク定数の測定データから導かれました。そのうち1つはNMIJが独立に論文発表(N. Kuramoto et al., Metrologia, 54, 716-729, 2017)したものです。世界各国が威信をかけて最高水準の技術を投入するなか、科学の歴史に残るキログラムの定義改定に、NMIJやその研究者の名前を明確に刻む決定的な役割を果たしたことは、世界に向けて誇ることのできる快挙と言えるでしょう。
 新たな定義のもと、私たちは世界最高水準の精度でプランク定数からキログラムを実現し、世界各国の質量の国家標準の基盤となっている「キログラムの合意値」の決定に主導的な役割を果たしています。さらに、以前の定義のもとでは実現が難しかった、微小な質量を正確に測定する技術の開発も進めています(N. Kuramoto, Nature Physics, 18, 720, 2022)。今後も新たなキログラムの定義を活用して将来の産業や社会を支えるコア技術を開発し、豊かな世界の実現に貢献します。
(更新日:2023年10月27日)