流体制御デバイスを用いた次世代モビリティのエネルギー効率改善技術の開発![]()
気体・液体・固体が混在して流れる微小スケールの混相流体現象を高精度・高効率に解析可能な流体力学に基づく計算機シミュレーション技術を開発・適用し、シミュレーション解析、実験解析、理論解析の連携により複雑な熱流体現象を詳細に解明・予測することで様々な制御・利用デバイス・プロセスの創出を進めています(事例:気液二相流数値シミュレーション手法, ラピッドプロトタイピングされた流体MEMSデバイスによる液中単分散微細液滴連続生成(下図左)、微細加工された矩形ピラーアレイ構造表面によるマイクロ液滴の挙動制御(下図右)、ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)(下動画)、マイクロ液滴レーザディスプレイ)。


電子機器の高性能化、熱交換器の小型化、カーボンニュートラルに向けた省エネルギー技術の高度化には、機器内部で生じる熱流動現象を正確に理解することが不可欠です。私たちは、温度によって発光強度や寿命が変化する感温蛍光体・感温塗料(Temperature Sensitive Paint: TSP)を用い、温度分布、熱流束分布、熱伝達率分布を非接触かつ高時空間分解能で可視化する計測技術を開発しています。この方法では、接触式センサを直接取り付けにくい微小な領域や高速で変化する現象も、非接触で詳しく調べることができます。特に、透明加熱膜や光学薄膜と組み合わせることで、沸騰、凝縮、二相流、冷媒流れなど高速・微小スケールの熱伝達現象を定量的に評価することに挑戦しています。本技術により、気泡底部のドライパッチ形成、液膜蒸発、再濡れなど、熱伝達促進や限界熱流束を支配する局所現象を明らかにし、データセンターなどの高出力電子デバイス冷却、自動車・空調用熱交換器、未利用排熱活用技術の設計指針構築に貢献します。


水滴は、表面の形や濡れやすさによって、付き方や動き方が大きく変わります。私たちは、植物の葉が水をはじく仕組みに学び、ナノメートルからマイクロメートルの微細な凹凸構造を表面に作ることで、液滴の動きを自在に制御する研究を進めています。特に、超撥水表面上で凝縮液滴が合体した瞬間に自発的に飛び出す「Jumping droplet」現象に着目し、凝縮液を表面から受動的に除去することで、滴状凝縮状態を長時間維持し、熱伝達を高めることを目指しています。MEMS設備を活用した微細加工技術と、高速度観察・画像解析・混相流シミュレーションを組み合わせ、液滴挙動をマルチスケールで解明しています。本技術は電子デバイス冷却、ベーパーチャンバー、熱利用機器の高性能化に貢献します。


カーボンニュートラル、データセンター冷却、パワーエレクトロニクス、モビリティ、排熱回収などの分野では、小型・軽量でありながら高い熱交換性能をもつ熱交換器が求められています。私たちは、金属積層造形(Additive Manufacturing)技術を活用し、従来の切削加工や接合では作製が難しい三次元流路構造をもつ熱交換器の開発に取り組んでいます。特に、TPMS(三重周期極小曲面)、Gyroid、Diamond構造などの3D周期構造を熱交換器内部に導入し、伝熱面積の拡大、流れの攪拌、沸騰・二相流の促進、圧力損失の低減を両立する設計を目指しています。さらに、金属3D造形により、内部流路と外部形状を一体で設計し、「熱」と「流体」の経路を同時に設計する「熱流動トポロジー制御」に基づく新しい熱交換器設計を進めています。

生成AI、HPC、パワーエレクトロニクス、衛星通信などの進展により、GPU、SiC、GaN、Ga2O3などの高出力電子デバイスでは、局所的な高熱流束と温度むらの抑制が重要な課題となっています。私たちは、この課題を解決するために、ベーパーチャンバーと呼ばれる薄型の熱拡散デバイスを研究しています。ベーパーチャンバーは、内部の液体が熱源付近で蒸発し、冷えた場所で凝縮することで、少ない温度差で効率よく熱を運ぶ技術です。内部で生じる一連の二相熱輸送現象を制御することで、ホットスポットの緩和、熱抵抗の低減、冷却システムの小型・軽量化を目指しています。さらに、焼結ウィック、超撥水表面、Jumping droplet、直接接合、金属3Dプリンターによる一体造形などを組み合わせ、宇宙機器、データセンター、EV、通信機器、次世代半導体実装に応用可能な熱マネジメント基盤の構築に取り組んでいます。


カーボンニュートラルの実現には、工場や発電設備、データセンター、輸送機器などから捨てられている未利用熱を有効に活用することが重要です。私たちは、工場や自動車から排出される未利用熱エネルギーを対象に、熱を「減らす」「回収して再利用する」「電気や有用な熱へ変換する」ための熱マネジメント技術を研究しています。さらに、数値シミュレーション、可視化計測、新規材料開発を組み合わせ、コストと性能の両面から導入しやすい排熱回収システムの構築を目指します。本研究は、省エネルギー、GX、産業プロセスの脱炭素化、地域エネルギー利用に貢献します。

誘電体バリア放電(DBD)を利用したプラズマアクチュエータ(PA)をはじめとする先進的な流体制御デバイスを開発し、流体機械のエネルギー効率を改善するための研究を行っています。流体制御技術を自動車、高速列車、航空機、ターボチャージャなどの流体機械に適用し、次世代モビリティにおいてコアになる革新的な流体制御システムの構築を目指します。 例えば、発電用ガスタービンや航空用ジェットエンジンの構成要素であるタービン翼列の空気力学的性能を向上させるため,プラズマアクチュエータを用いた能動流体制御の研究に取り組んでいます。


現在、電動の無人機(UAV: Unmanned Aerial Vehicle)が広く使われる様になり、AAM(Advanced Air Mobility)と言われる小型有人機の開発も進められています。特にeVTOL(electric Vertical Take-Off and Landing)と言われる垂直離着陸が可能な電動航空機の開発が盛んです。
高い航続性能を実現する為に固定翼を備えたeVTOLの実現が強く望まれています。そこで産総研では、DF-eVTOL(Ducted Fan-eVTOL)という独自のeVTOLを開発しています。その特徴は以下の通りです。
・シンプルな機体構造(操縦舵面はなく、推力調整で飛行制御)
・垂直離着陸可能
・推進効率が良いダクテッドファンを採用
数値流体力学解析や飛行シミュレーションなどにより空力性能の解明や機体形状の最適化をし、このeVTOLの実現に向けて研究開発を進めています。

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