不揮発メモリチーム (Non-Volatile Memory Team)
1. メンバー
研究チーム長 Team Leader |
野崎 隆行 NOZAKI Takayuki |
Researcher ID | Google Scholar |
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主任研究員 Senior Research Scientist |
甲野藤 真 KONOTO Makoto |
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主任研究員 Research Scientist |
山本 竜也 YAMAMOTO Tatsuya |
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研究員 Research Scientist |
杉原 敦 SUGIHARA Atsushi |
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研究員 Research Scientist |
一ノ瀬 智浩 IHINOSE Tomohiro |
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研究チーム付 Research Scientist |
野崎 友大 NOZAKI Tomohiro |
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招聘研究員 Invited Senior Researcher |
鈴木 義茂 SUZUKI Yoshishige |
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2. 主な研究テーマ
不揮発メモリチームでは電圧制御型MRAM(VC-MRAM: Voltage-controlled Magnetoresistive Random Access Memory)の基盤研究開発に取り組んでいます。MRAMは磁性薄膜の磁化(スピン)の向きとして不揮発に情報を保存することができるため、待機電力ゼロのワーキングメモリ実現が期待されています。しかし現在製品開発中のMRAMでは電流により情報の書き込みが行われているため、SRAMやDRAMなど既存の揮発性メモリと比較して駆動電力が非常に大きい点が課題となっています。そこで我々は電圧による新しいスピン制御技術を開拓し、待機電力だけでなく駆動電力も小さい究極の不揮発性メモリ、VC-MRAMを提供することで、IoTエッジデバイスやモバイルAIコンピューティングなどの近未来IT機器の低消費電力化に寄与することを目指しています。具体的な研究テーマとしては、@電圧制御型トンネル磁気抵抗素子用の新規材料探索、A電圧磁化反転技術の開発、およびB電圧誘起スピン現象の物理解明などに取り組んでいます。 (参考論文) T. Nozaki (Q-4838-2017) et al. "Recent progress in the voltage-controlled magnetic anisotropy effect and the challenges faced in developing voltage-torque MRAM(Review)", micromachines 10, 327 (2019). |
@ 電圧制御型トンネル磁気抵抗素子用の新規材料探索
電圧制御型トンネル磁気抵抗素子では、電圧磁気異方性制御(VCMA: Voltage-controlled magnetic anisotropy)と呼ばれる現象を利用して電圧によるスピンの向きを制御します。磁気異方性とはスピンの向きやすい方向を決定する物性値であり、通常は物質固有の値ですが、数原子層レベルに超薄膜化した強磁性層(FeCo合金など)を用いると電圧により制御することが可能となります。VCMA効果を用いた電圧制御型MRAMを実現するためには小さな電圧で大きく磁気異方性が変化する超薄膜強磁性層、トンネル障壁層などの新材料を探索することが重要となります。当グループではこれまでにイリジウムを低濃度でドーピングした超薄膜鉄などにおいて、高速動作可能なVCMA効果としては世界最高性能を達成しています(図1)。 |
A 電圧磁化反転技術の開発
VCMA効果を利用した磁化反転、つまり情報の書き込みには高速パルス電圧印加による磁化の歳差運動を利用します(図2)。この電圧誘起ダイナミック磁化反転は、数fJ/bitの書き込みエネルギーで1ナノ秒オーダーの高速書き込みを可能とします。この技術は一方の極性のパルス電圧で書き込みが可能(ユニポーラ)なため、回路の簡素化や読み出し時の誤書き込みが少ない点も利点となりますが、一方で書き込みエラーの低減やbit間バラつきの抑制が課題となっています。材料特性の向上に加えて、VCMA効果を利用したスピンダイナミクスの制御等を利用してその改善を図っています。 |
B電圧誘起スピン現象の物理解明
電圧によるスピン制御の効率を向上させるためにはその物理起源の理解も重要となります。これまで大阪大学や東北大学を中心とした外部機関との連携によりVCMA効果の起源解明に取り組み、電圧印加によって超薄膜磁性層/誘電層界面に誘起された蓄積電荷による電子占有数変化や電界による電子分布の変化が重要であることを明らかにしてきました(図3)。これらの知見を材料設計にフィードバックし、さらなる特性向上を目指しています。その他、新しい物理起源による電圧スピン制御技術の開拓、MRAM以外の電圧制御型スピントロニクスデバイスへの展開にも取り組んでいます。 |
3. 主な研究設備・技術の紹介
[基礎研究用複合成膜装置]超高真空搬送室で複数の成膜装置を接続した2インチウェーハ対応複合成膜装置です。MBE3台(内1台は2020年度末に新規更新予定)、マグネトロンスパッタ装置3台、表面分析装置1台とロードロック室3台を有しています。組み合わせによって60種類近い材料を大気暴露することなく多層積層化することが可能です。 [測定関連装置]磁界印加下における磁性多層膜の磁気抵抗特性評価を行う種々の磁界中プローバー、プローバー対応型マイクロカー効果装置、磁区観察装置、低温磁界中プローバー、および高周波関連測定装置群を有しています。 |
4. 主な外部資金プロジェクト、外部連携
@「高効率・高速処理を可能とするAIチップ・次世代コンピューティングの技術開発/次世代コンピューティング技術の開発/電圧駆動不揮発性メモリを用いた超省電力ブレインモルフィックシステムの研究開発」 A「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/研究開発項目@ ポスト5G情報通信システムの開発/ポスト5G情報通信システムのための革新的不揮発性メモリおよび光伝送技術の研究開発」 |
5. 過去の主なプレス発表へのリンク
@原子層制御により磁気メモリー素子の平坦性および磁気安定性を改善 A高効率な電圧スピン制御を実現する磁気メモリー用材料を開発 2017.12.01掲載 B電圧書き込み方式磁気メモリーの書き込みエラー率を飛躍的に低減 2017.07.12掲載 C原子の形を変えて超省エネルギー磁気メモリ 2017.06.26掲載 D不揮発性磁気メモリのための新たな電圧駆動書き込み方式を開発 2016.12.05掲載 E電圧書き込み方式不揮発性メモリーの安定動作の実証と書き込みエラー率評価 |
6. 主な論文リスト
2020
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