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2.3. ラジオメトリック補正 |
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概要:
ラジオメトリック係数は2段階で作成される。第1段階は予め設定された参照温度でのラジオメトリック係数を作成するための段階で、
レベル1処理とは切り離してオフライン処理される。これらの係数はセンサの安定度に依存して長期間有効であり、
温度係数と共にラジオメトリックデータベースファイルに格納されている。
一組のオフセットと感度係数データがVNIRとSWIRバンドには必要である。TIRバンドには、一組のオフセット、
直線感度係数、非直線感度係数が必要である。必要に応じて、初期運用中に得られた画像を解析して画像中のストライプ除去処理パラメータも生成される。
第2段階は実際の観測データ取得中のセンサの状況(検出素子の温度、デュワーの温度等)に応じた補正をする段階であり、
レベル1処理中に実行されるオンライン処理である。
ラジオメトリック補正データベースの作成:
打ち上げ前に地上で積分球を用いた測定により、参照温度に対するラジオメトリック係数が評価される。
更に、打ち上げ後は機上校正機能や地上観測データを用いて定期的な評価を実施し、必要に応じて更新される。
機上校正は安定度を確認するために17日の周期で実施する計画になっている。
これらのラジオメトリック係数は温度係数と共にオンラインパラメータファイルとしてレベル1処理中に用いられる。
総ての温度係数に対しては地上での測定値が全運用期間中用いられる。
要求されている絶対精度は、VNIRとSWIRについては4%、TIRについては対象物温度に応じて1-3 Kである。
各観測毎のVNIR用ラジオメトリック係数の作成:
Figure 2-4(a)にVNIRのラジオメトリック係数作成アルゴリズムフローを示す。
観測中の検出素子の温度が唯一の補正すべきパラメータである。
予め格納されている参照温度からの差に応じてラジオメトリック係数は補正される。
通常の正常な運用状況において想定される温度範囲ではこの補正は不要である。
各観測毎のSWIR用ラジオメトリック係数の作成:
Figure 2-4(b) にSWIRのラジオメトリック係数作成アルゴリズムフローを示す。
観測中の検出素子とデュワー温度が補正すべきパラメータである。
予め格納されている参照温度からの差に応じてラジオメトリック係数は補正される。
正常な動作状況の下では検出素子温度は77±0.2 K範囲に正確に制御されている。
従って、検出素子温度に対する補正は正常運用の状況では不要である。
SWIRの検出素子は、波長が5ミクロンまでの室温の熱放射に対しても感度があり、
バンドパスフィルターが完全にはこの波長範囲を遮断できないためセンサの各部からの熱放射がオフセットに影響する。
デュワーの影響が大半を占めるためデュワー温度を代表値として熱放射の補正をする。
各観測毎のTIR用ラジオメトリック係数の作成:
Figure 2-4(c)にTIRのラジオメトリック係数作成アルゴリズムフローを示す。
データベース中に格納されている直線感度係数と非直線感度係数が検出素子の温度に対して補正される。
ただし、正常な動作の下では検出素子の温度は80±0.2 Kに正確に制御されているので補正は不要である。
連続した観測ストリップ毎のオフセットデータは、各観測に先立って搭載黒体を見る短周期校正と呼ばれる方法で得られる。
この時の搭載黒体の温度はセンサ補足情報としてレベル0データ中に含まれている。
チョッパー温度の変化によるオフセットデータの補正は短周期校正時のチョッパー温度からの変化を用いて解析される。
チョッパー温度補正は、DCクランプ補正と共に、レベル0画像データのDN値に対して行われる。
チョッパー温度は各走査毎のセンサ補足データ中に含まれているので、この補正は各走査(10ライン)毎に実行が可能である。
画像データの補正はレベル0Bデータとレベル0データの間のDN値に僅かな差を生じさせる。
TIRのレベル0データは12ビットで量子化されているので、最小ビット(LSB)はNEDTに比べて非常に小さく、
重要な丸め誤差は生じないと考えて良い。
Figure 2-4 ラジオメトリック係数作成フロー
TIR DCクランプ補正:
TIR検出素子は各走査毎にチョッパーを見るようになっている。
その際のTIRの出力電圧はバンド10 - 12では-1.4 V ア DVn 、
バンド13 -14では-0.9 Vア DVnでクランプされる。
ごく小さな電圧 DVnはクランプの瞬間の雑音電圧である。
これは、各走査毎にランダムに変化するため正確にクランプするためには補正する必要がある。
Figure 2-5はTIR DCクランプ補正のフローを示す。正確なクランプ出力(DN値)はチョッパーデータとして
一つ前の走査のセンサ補足データに含まれており、補正処理に利用可能である。
一回の走査毎に100個のチョッパーデータが取られており、これを平均することにより
雑音成分を減らしてア DVnに相当するクランプ誤差解析がなされる。
この誤差はTIRラジオメトリック補正モジュールに送られTIRレベル0A画像データから差し引かれ、レベル0Bデータが生成される。
Figure 2-5 TIR DCクランプ補正
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