|
|
1. レベル1処理とデータプロダクト概要 |
|
はじめに:
ASTER は、Advanced Spaceborne Thermal Emission and Reflection Radiometer の略称である。
ASTER センサは、日米加の国際協力の下に1999年12月に打ち上げられた極軌道衛星Terra の5つのセンサの中の一つで、
MODIS と共にコア・センサとして搭載される高機能マルチスペクトル光学センサである。
ASTERは、高波長分解能、高空間分解能、高ラジオメトリック分解能でもって可視光から熱赤外までの広い波長範囲を、
Table 1-1に示したような14スペクトルバンドでカバーすることができる。
広い波長範囲は波長範囲に依存して3つの望遠鏡、即ち、空間分解能15m のVNIR (Visible and Near Infrared Radiometer),
30 m の空間分解能のSWIR (Short Wave Infrared Radiometer),
90 m の空間分解能を有するTIR (Thermal Infrared Radiometer), でカバーしている。
さらに、立体視をするため近赤外バンド(バンド3B) にもう一つの望遠鏡が0.6のB/H比で付加されている。
より詳細なセンサの情報やサイエンス目的に関しては第1部を参照して頂きたい。
ASTER センサは複数望遠鏡より構成されるため、それぞれの望遠鏡の光軸の独立したふらつきに由来する、
バンド間ミスレジストレーションなどの補正のために画像合わせの複雑な処理を必要とする。
また、一つの焦点面に全部バンドの検出素子を配置せざるを得ないSWIRの焦点面の検出素子の構成に
由来する視差誤差(パララックス)補正処理も重要になる。これらの処理には画像合わせ手法が採用される。
ASTERのレベル1データには二つのタイプのプロダクツ、即ち、レベル1Aとレベル1Bがある。
レベル1Aデータは利用し易いように再構成され、補正のための係数は添付されてはいるが、
実際には画像データにリサンプリング等の処理は施されてはいないプロダクトである。
具体的には、画像データ、ラジオメトリック補正係数、幾何補正係数、その他の補助情報からなる。
レベル1Bデータは画像データに補正係数を適用することによりラジオメトリック補正と、
幾何補正を施しそのまま画像として見ることのできるプロダクツである。
全ての取得データはレベル1Aプロダクトまでは処理される。
ASTER は高空間分解能であることスペクトルバンド数が多いことからデータ量は膨大である。
ASTER に割り当てられている平均データレイトは8.3 Mbps である。 これは大雑把に言って8%の観測率に相当する。
これらを考慮すると一日に取得するデータ量は約80 GB にも達することになる。取得するデータは最大1日780シーンになり、
このうち1日当たり最大310シーンまではレベル1B まで処理される。
Table 1-1 スペクトルバンド
Subsystem |
Band No. |
Spectral Range (mm) |
Spatial Resolution |
VNIR |
1 |
0.52 - 0.60 |
15m |
2 |
0.63 - 0.69 |
3N |
0.78 - 0.86 |
3B |
0.78 - 0.86 |
SWIR |
4 |
1.600 - 1.700 |
30m |
5 |
2.145 - 2.185 |
6 |
2.185 - 2.225 |
7 |
2.235 - 2.285 |
8 |
2.295 - 2.365 |
9 |
2.360 - 2.430 |
TIR |
10 |
8.125 - 8.475 |
90m |
11 |
8.475 - 8.825 |
12 |
8.925 - 9.275 |
13 |
10.25 - 10.95 |
14 |
10.95 - 11.65 |
総合処理フロー概要:
Figure 1-1に総合処理フローの要約を示す。EDOS (EOS Data and Operations System) から送られてくる
CCSDS (Consultative Committee for Space Data System) 準拠のパッケト化されたレベル0データは、
初期処理 (front-end processing) 段階においてレベル0Aデータに処理される。この初期段階処理はセンサからの
ソースデータを再現するための処理、各スペクトルバンド毎に分離・統合して、BIP形式からBSQ (Band Sequential) 形式
に変換する処理からなっている。SWIR とTIR の検出素子のスタガー配列の補正もなされる。
レベル0Aデータは、VNIRグループデータ、SWIRグループデータ、TIRグループデータの3つのグループデータから構成される。
各グループデータは画像データ、センサ補足情報、衛星付属情報より構成されている。
TIR には各観測毎の短周期構成データも付加されている。
レベル0A データは、観測ストリップ毎に纏められていてシーン毎には分離されていない。
さらに、レベル0A データに対してシステム幾何補正とラジオメトリック補正のための係数が算出され、
これらを付加したレベル0Bデータが生成される。システム幾何補正は衛星の付属情報とセンサの補足情報のみを用いて、
検出素子の視線ベクトルから座標変換等の手法により観測地点を算出する処理である。
ラジオメトリック補正は、ラジオメトリックデータベースファイルに収容されているラジオメトリック関連係数に対して、
センサの補足情報に含まれるセンサ自体の温度情報を利用して観測データを取得した時点での係数に補正する処理である。
レベル0Bデータは画像合わせと被雲率評価に用いられる。
SWIRの視差誤差は軌道平行方向への検出素子の配列オフセット(Figure 8a)によって引き起こされ、
衛星と観測地点の距離に依存する。このSWIR視差誤差補正はレベル0Bデータを用いた画像合わせまたは
粗い分解能のDEMデータベースによって行われる。どちらが用いられるかは主として被雲率によって決められる。
SWIR とTIR のデータに対しては、異なった望遠鏡にまたがるスペクトルバンド間のレジストレーションが
VNIR バンド2に対して施される。補正係数はSWIR に対してはバンド6、TIR に対してはバンド11が画像合わせの代表バンドとして使用される。
他のバンドは焦点面の検出素子の配列寸法を用いて代表バンドの係数を案分して適用される。
シーンカットは、予め決められているASTER WRSに従ってレベル0Bデータに対して実行される。
各グループのデータは軌道平行方向に60 km毎に分割される。
バンド3Bに対しては、軌道直交方向のポインティングによる画像回転分の補償を追加考慮して81 kmのシーン長になる。
全ての幾何補正処理とシーン分割に引き続いて、各シーンに対する一組の位置データが生成される。
最終的には、観測ブロック(ブロックサイズについてはシステム幾何補正の項を参照)毎に
緯度/経度で表される一組の位置データとしてまとめられる。
レベル1Aデータは画像データ、ラジオメトリック係数、幾何係数(位置データ)、
各種補助データ(ヘッダー情報)より構成されている。
レベル1B データはこれらのラジオメトリック係数、幾何係数を画像データに適用(リサンプリング)して生成される。
Figure 1-1 総合処理フロー
|
|
|
|
|