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地球物理セミナー 平成25年度(第64回〜第82回)

*第82回 2014年3月31日  宮川歩夢

「南海トラフ熊野海盆IODP Site C0002におけるガスハイドレートの飽和度、 IODP 314,315の成果」

 IODP Expedition 314・315で取得された物理検層情報およびコア情報から、 南海トラフ熊野海盆南東縁のSite C0002におけるガスハイドレートの飽和度の推定し、 またガスハイドレートを形成するガスの移動について検討した。 本研究ではガスハイドレートの飽和度推定のために、 2種類の比抵抗値と音波速度値から飽和度の推定を行った。 これらの解析により、Site C0002にでは30%程度のガスハイドレート飽和度が推定された。 また、高解像度な解析では60%を超える飽和度を示す薄い層が確認され、 砂層などのガスを通しやすい層にガスハイドレートが局所的に農集している様子を示唆していた。 さらに、堆積盆浅部にて、ガスハイドレートとフリーガスが共存していることが明らかになった。 これは、断層などの亀裂や砂層などの高透水性の層を通って大量のガスが供給されることを示唆する。 また周囲の地質構造から、熊野海盆南東縁はより北西の領域からガスを含む流体が集積しているものと推測された。


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*第81回 2014年3月18日 


今回は特別セミナーです。 時間:13:30〜 (各1時間程度、計2時間程度)

1. 13:30〜 竹村貴人 (日本大学文理学部地球システム科学科)

「応力と透水 の連成問題と三軸応力下での破壊に関して」

 脆性破壊を伴う 地質材料に関する破壊基準はモール・クーロンをはじめとした応力や体積歪み や横歪みなどでも説明されている。また、応力・歪みのみならず破壊過程で増 加する亀裂密度に関しても、一定値に達することで破壊が生じることも明らか にされつつある。亀裂密度や亀裂の幾何学的情報で破壊を定式化することがで きれば、破壊もしくは変形に伴う透水挙動の変化を説明しやすくなるであろう。 本発表では、亀裂密度からみた岩石の破壊プロセスと応力と透水係数の取り扱 いについて取り上げる。また、破壊という現象が、亀裂密度がある値に達する と起こるとした時に見えてくる中間主応力の問題について議論をする。

2. 14:30〜(目安) 高橋 学

「これまでに取得した三軸extensionデータと今後の利用について」

 Confined Triaxial Extension Test:三軸伸張試験によってこれまでに得られたデータの概要を紹介します。そして、これらのデータを用いた今後の計画について述べます。三軸伸張試験はσ1とσ2が常に等しい応力場を表し、σ3も圧縮状態のことです。この応力場の実現のため、円柱供試体を用いて通常の三軸圧縮応力試験と同じように載荷試験を行いますが、三軸圧縮試験では流体圧がσ2=σ3になりますが、伸張試験ではこの流体圧をσ1=σ2となるようにします。また、真三軸試験装置を用いると伸長応力場を比較的簡単に再現できます。ただし、前者とは主応力の載荷が流体圧か剛体盤かの違いがあり、変形特性に差異が生じます。三軸圧縮と三軸伸張による変形・破壊様式の違いに注目して実験結果の紹介を行います。そしてCTデータの取得からLBMによる数値計算などの今後の予定に関して紹介します。

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*第80回 2014年2月25日  入谷良平

「イノベーションスクールでの活動紹介」

 私は本年度4月より産総研イノベーションスクール生として地質地殻活動研究グループでお世話になっております。そして、スクールを通じて7、8月に応用地質株式会社、9〜12月にシュルンベルジェ株式会社でインターン研修に行かせていただきました。このインターンでやった活動内容について報告もかねて本セミナーで紹介します。まず、応用地質株式会社では地中レーダー探査や常時微動観測による断層調査等の観測に参加しました。また、シュルンベルジェ株式会社では、ボアホール地震波探査に関しての勉強と解析手法の開発を行いました。守秘義務の関係上、詳細な話ができないこともあり、scientificな話は少ないかもしれませんが、本年度の活動のまとめとしてお話させていただきたいと思います。


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*第79回 2014年1月29日 大熊茂雄

「2011年東北地方太平洋沖地震に伴う津波浸水域の磁気異常について」

 2011年東北地方太平洋沖地震に伴う津波浸水域では、2012年6月に空中電磁探査 を実施している。その際、地下の比抵抗分布に対応した電磁応答の測定(電磁探 査)とは別に、高感度磁力計により地磁気全磁力の測定(磁気探査)も行ってい る。電磁探査による可探深度は当該地域において高々100m程度である一方、磁気 探査ではより深部の調査も可能であり、対象とする物性は異なるものの地下構造 解釈の点で相補的な利用が見込める。そこで、今回観測した地磁気全磁力データ の処理と解析を行った。本発表ではこの結果について述べる。


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*第78回 2013年12月24日  横倉隆伸

「石狩低地東縁断層帯南部周辺における反射法地震探査−勇払測線4と5を主として」

 「沿岸域」プロジェクトで実施してきた反射法地震探査のうち勇払測線4と5を extended correlationして6秒記録としたものを解析した。大型バイブレータを1 台しか使用していないにもかかわらず5秒(深度約9km)付近まで明瞭な反射波が捉 えられている。また時間があれば、その他測線を加味して得られた、同断層帯を 特徴づける背斜の連続性や活動度についても触れる予定である。


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*第77回 2013年12月10日 名和一成

「野外連続観測で得られた相対重力計のドリフトについて−八丈島の事例を中心 に−」

 八丈島の温泉モニタリングを目的として、連続観測用スプリング相対重力計で あるgPhone重力計(Micro-g LaCoste社製)が複数台導入された。2011年2月から 2012年11月にかけて、1〜4ヶ月間の連続観測を、異なる重力計・観測状況におい て断続的に実施した。取得したデータを使って重力計の安定性の指標となるドリ フトを計算して比較した。その結果、得られたドリフト変化は、重力計や場所ご とに固有の特徴をもっていた。全体としてみると、gPhone重力計の初期ドリフト が安定するまで、多くの場合1ヶ月程度かかっていた。それ以降、ドリフトレー トの直線性はよくなるが、絶対値は小さいもので数マイクロガル/日であった。 gPhoneのドリフトレートの大きさは、シントレックスCG-3M重力計の数百マイク ロガル/日よりかなり小さいが、ほぼゼロに近い超伝導重力計(iGrav SGの公称 値:0.5マイクロガル/月)には及ばない。これらの結果や科研費等各種プロジェ クトの紹介を通じて、今後どのように重力観測をデザインするのかについても議 論したい。


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*第76回 2013年11月19日 小田啓邦
(地球変動史研究グループ)



「氷床コアに含まれる微量火山灰の磁気的手法による非破壊検出」

 本発表では、高感度SQUIDグラジオメータによる磁気的手法を用いた氷床コア に含まれる火山灰粒子の非破壊検出について述べる。氷床コアに含まれる火山灰 層は異なる地点の氷床コア間に同時間面を提供すること、短期間の気候変化につ ながる大規模な噴火に関係するものも含まれることからその検出は極めて重要で ある。SQUIDグラジオメータによる火山灰の非破壊検出に成功すれば、大陸から 運ばれる風成塵、宇宙起源のマイクロメテオライト(コスミックダスト)なども 非破壊磁気測定によって検出可能と想定され、これら微粒子による過去の地球環 境の復元が期待できる。また、火山灰粒子や風成塵が記録している過去の地球磁 場の情報(方位)は比較的安定である場合もあるので(Funaki&Nagata, 1985)、 地球磁場方位を復元できる可能性もある。金沢工業大学では医療用脳磁計システ ムのためのSQUIDグラジオメータの開発を行い、脳の微弱な磁場を検出するため に感度の向上につとめてきた (Kawai et al., 2008)。グラジオメータは試料直 上と離れたところに2つのピックアップコイルを配置することによって磁気ノイ ズの影響を受けにくいというメリットがある。前回の報告では、桜島で採取され た2008年噴火の火山灰を磁性鉱物の含有量が多い火山灰の例として、北海道で採 取された姶良Tn(AT)火山灰(噴出年代約2.8万年)を磁性鉱物の含有量が少な い火山灰の例として、これらを寒天に均一に溶かして直径6cm長さ10cmの半円筒 に固めたものを模擬火山灰層としてSQUIDグラジオメータにて測定を行った。試 料はヘルムホルツ型コイルで円筒の軸方向に25mTの等温残留磁化を着磁した。桜 島火山灰は250μg/ccであれば自然状態で検出可能、着磁をすれば25μg/ccでも 検出可能であった。阿蘇4火山灰は250μg/ccであれば、かろうじて検出可能で あるがノイズとの分離が困難であった。ノイズレベルは2pT程度であったが、今 回はノイズ低減のために帯磁率連続測定用のサンプル移動装置を利用して計測を 行った。ポイントソース・半円筒形の氷床コアを模したTiva Canyon Tuffを均質 に分散させたファントム(標準試料)に加えて、2013年にナンセン氷原で採取し た火山灰を含む氷試料について測定結果が得られたので報告を行う。また、測定 に用いたナンセン氷原の氷試料を液体窒素で冷却しながらマイクロフォーカスX 線CTによる高分解能撮像にも成功し、火山灰粒子の3次元分布が確認できた。本 研究は、科研費挑戦的萌芽研究(H24-25)「SQUIDグラジオメータによる氷床コ ア中の火山灰の非破壊検出」による支援をうけて行われた。

References
Funaki, M., & Nagata, T. (1985). A report of natural remanent magnetization of dirt ice layers collected from Allan Hills, Southern Victoria Land, Antarctica. Memoirs of National Institute of Polar Research. Special issue, 39, 209?213. Kawai, J.,et al. (2008). Superconducting Pickup Coils Fabricated On A Glass Epoxy Polyimide Resin Substrate For SQUID Magnetometers, J. Phys.: Conference Ser. 97, 012275.


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*第75回 2013年10月22日 山谷祐介

今回は地熱セミナーとの合同セミナーです

「Magnetotelluric比抵抗探査から推定されたフィリピン・タール火山の熱水だま りとその噴火活動に果たす役割」

 フィリピン・ルソン島南西部に位置するタール火山は、破局的噴火を含む水蒸気 爆発、マグマ水蒸気爆発を繰り返し起こしてきた。そのような噴火の発生に熱水 だまりとそれを閉じ込めるキャップの存在が強く関係していると考えられる。熱 水系およびマグマ供給系の構造を明らかにするために、マグネトテルリック(MT) 法による比抵抗探査を行った。観測されたデータから4つの比抵抗断面が2次元 インバージョンによって推定された。比抵抗断面の1 km以深の構造は、相対的に 高比抵抗な領域とそれを取り囲む低比抵抗の殻が特徴的であった。高比抵抗の領 域は、地震波構造探査によって推定された低速度、高減衰領域の位置と一致し、 流体の存在を示唆する。また、地震活動、表面での熱水活動の消長に対応する膨 張収縮のソース位置は高比抵抗領域の下限付近に推定されており、マグマ貫入に 伴う膨張および貫入位置の上方に位置する熱水系への揮発性物質の離溶に伴う収 縮であると解釈されている。したがって、MT探査で推定された高比抵抗域は、主 に気相の熱水だまりであり、その周囲の低比抵抗域は液相の熱水が占めていると 解釈される。さらに、この低比抵抗域の上部は、粘土変質した不透水キャップを 示していると考えられ、タール火山下の巨大な熱水だまりを閉じ込めている構造 であると考えられる。この低比抵抗な不透水キャップは、主火口の直下で薄くなっ ており、新たなマグマ貫入や地震活動によって破壊される際には水蒸気爆発に端 を発する破局的噴火に至る可能性がある。


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*第74回 2013年9月24日 佐藤太一
(地球変動史研究 グループ)



「中琉球弧でみられる火山フロントのトラフ側への遷移」

 2012年に研究船「白嶺」にて南西諸島の沖永良部周辺の海洋地質調査を実施さ れた。琉球弧は活動的な背弧リフティングの場である。調査海域は中琉球弧にあ たり、北琉球のトカラ列島から続く火山フロントの火成活動が認めらないことと、 活動的な中部沖縄トラフの火成活動が特徴であり、火山フロントの火成活動は中 部沖縄トラフの火成活動に収斂していると考えられている。しかしながら、どの 時期からこのような配置になったのかは議論の余地があり、背弧リフティングの 火成活動を理解するうえで重要である。そこで海底地形と地磁気探査から本海域 の火成活動の変遷について考察を行った。まず地形調査から、現在の火山フロン トの延長に複数の海底火山が発見された。加えて地磁気異常と地形的特徴から、 現在の火山フロントから東へ約20kmのところにも過去の火山フロントに属する火 成活動の存在が示唆される。さらに広域の磁気異常の特徴から、過去の火山フロ ントの活動時期は久米島における火山フロントでの火成活動と同時期である可能 性が高く、少なくとも2Maまでは活動的であったと考えられる。また、新旧の火 山フロントの位置関係から、火山フロントはトラフ側に移動したことが示唆され る。このことは火山フロント下での、沈み込むフィリピン海プレートの傾斜が緩 やかになり、スラブの深度が浅くなれば説明可能である。原因については (1)北 流海域からの熱いアセノスフェアの寄与が2Maで終了した、(2)大東海嶺や奄美海 台等の白亜紀の島弧地殻の沈み込み、(3)2Maでのフィリピン海プレートの沈み込 みの方向の変化、などが考えられる。


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*第73回 2013年8月20日 松林 修
(地圏資源環境研究部門 地熱資源研究グループ)


「南海トラフ海域 IODP Exp.333 で得られたコアの熱物性に関する検討」

 地殻構成物質の熱物性値は比較的狭い範囲に入っていると見られて、近年では 興味ある研究対象と考えられていなかったようである。しかし、例えば海底地層 中のメタンハイドレートの安定・分解の相平衡において僅かな温度変化が決定的 であるなどのように、実際的な課題において地層の熱物性を精度良く評価するこ との必要性は高い。このたび深海科学掘削(IODPExp333)のコア試料約1,100個 に関して、熱伝導率・熱容量・熱拡散率の3種の物性値を深さ方向に可能な限り 短い間隔で算出して、孔井の物理検層データと対比可能な程度の熱物性データを 整備した。これらの結果に基づき最終的には熱物性値の汎用的予測関係式(直接 の測定がない時も)を得ることを目指している。現在までの研究で分かってきた ことを示す。

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*第72回 2013年8月6日 長 郁夫
(活断層・地震研究センター 地震発生機構研究チーム)



「微動H/Vスペクトルの深度変換」  微動からS波速度不連続の情報を得るための簡便法

 地下の速度不連続に関する情報を得るための簡便法として、レーリー波位相速 度の分散データを用いて微動の水平−鉛直動パワー比(H/Vスペクトル)の周波 数を深さに変換してHV比のピークまたは谷を速度不連続と解釈するアプローチを 提案する。まず、微動の波動場を複数モードのレーリー波とラブ波が卓越すると 仮定して様々なタイプの速度構造を与え、H/Vスペクトルの深度分布を理論計算 した。与えた速度構造と理論H/V深度分布との比較により手法の適用性を検討し たところ、速度逆転層や漸増構造を含む構造にも適用可能なことが分かった。 ―時間があれば観測データを用いた検証についてもお話します。

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*第71回 2013年7月16日 岡田真介
(東北大学災害科学国際研究所)


「東北日本弧における島弧造山運動の解明に向けて」

 2011年東北地方太平洋沖地震発生以前から、東北日本弧で観測される測地学的 歪み速度と地学的歪み速度に大きな矛盾があることはよく知られていた (池田, 1996)。東北日本弧では、太平洋プレートの直交沈み込みによって、内陸地域には 非弾性歪み(永久変形)が生じ、プレート境界では、弾性歪みの蓄積と解放が繰 り返されている。Mw 9.0を引き起こした2011年東北地方太平洋沖地震は、この弾 性歪み解放のプロセスであった。沈み込み帯における島弧造山運動の解明に重要 なことは、内陸地域の長期的な非弾性歪み(永久変形)とプレート境界で解放さ れる弾性歪みとを分離することである。この内陸地域で生じる非弾性変形は、い まのところ地学的な観測でのみ評価するしかない、しかもこのような変形は、上 部地殻に生じる変形(主に活断層運動による脆性破壊)を丹念に調べることに頼 るほかない。本発表では、東北日本背弧域での地殻変形から見積もることができ る地学的歪み速度について、これまでの研究を基に紹介する。

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*第70回 2013年6月25日 駒澤正夫

「米国テキサス州ファンズワースでの重力調査」

 米国テキサス州ファンズワースで浅部地下構造を広域的に把握するため2013年1 月に重力調査を行った。測定点は道路沿いにほぼ300m間隔に配置され、総測点数 は141点となった。調査域における特徴的なブーゲー異常として,北西−南東方向 に背斜構造に対応する高重力異常の高まりが検出された。絶対重力網に接続でき ない、標高値を決めるレファレンス点がない、地形図が手元にない、西経という 条件で手持ちのソフトが動くか、ナビ用の地図データがあるか、など国内調査と 違う状況であった。しかし、米国ということもあって、それらの問題点は完璧に 近い形で解決したので、それらの経緯も述べる。

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*第69回 2013年6月24日 柴沼 潤
(京都大学大学院 工学研究科 都市社会工学専攻)


今回は、特別セミナーです。
【いつもと曜日・時間が違います】
時間:15:00〜 (一時間程度、最長1.5時間打ち切り)

「坑井物理検層データを用いた地下応力場の不均一性解析」

 物理検層データをもとに、孔壁崩壊(ボアホールブレイクアウト)による主応力 方位の推定や、ストレスポリゴンを用いた応力マグニチュードの推定に関する手 法の説明をしたあと、実際に南海トラフで自分が行った応力の解析結果、考察に ついて説明します。その後、応力の解析結果から震探データでは捉えにくい中、 小規模の断層推定に関する話と、現在行っているボアホールブレイクアウトに影 響を与えるフラクチャーの特性について話を進めます。


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*第68回 2013年6月6日 仲田典弘
(Colorado School of Mines, Stanford University (after Sep. 3))


今回は、特別セミナーです。
【いつもと曜日・時間場所が違います】
時間:16:00〜 (一時間程度、最長1.5時間打ち切り)
場所:c1-860(輪講室)


「地震波干渉波形の精度の向上手法」
How to improve the quality of interferometric wavefields

 地震波干渉法(seismicinterferometry)は相関処理を用いた信号解析であり、 時間変化モニタリングへ活用できる技術として認知されている。時間変化モニタ リングを行う際、地震波干渉法はある一定時間のデータを重合する事が必要であ り、その重合時間がモニタリングの時間方向の解像度になる。干渉波形の精度を 向上させる事で、重合時間を短くし、時間方向の解像度を向上したり、また、モ ニタリングの精度を向上させたりする事が出来る。本発表では、干渉波形の精度 向上手法として、加速度計と速度計の組み合わせによる方法と、信号処理を用い た方法の2つの手法を紹介する。


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*第67回 2013年5月28日 稲崎富士

「変形」表面波探査2題

その1):表面波探査データの多相解析:
 反射法地震探査データに含まれているP-SV変換波を解析して反射断面を構築す る、あるいは表面波相を解析して表層のS波速度構造を求め、Staicsに用いる、 という先行研究例に代表されるように、従来はノイズとして除去していた波群か ら有用な情報を抽出して活用することが一般化しつつある。河川堤防を対象とし た表面波探査にも顕著なP波相、SV波相が含まれることがあり、それらに対して 従来の反射法探査処理を施し、P波、S波反射断面を求めてきた。P波相はともか く、地表鉛直起振/鉛直成分受振でSV波成分を取得できるか、その波群を直達SV 波として扱うことが可能かについては検討の余地が残るが、P波の減衰が著しい 地盤条件、すなわち軟弱な沖積層が再表層部を構成する条件においてはSV波が卓 越することが経験的に分かってきた。そこである小規模河川堤防区間で取得した 表面波探査データに対してSV波反射処理を施したところ、非常に鮮明な反射断面 を得ることができた。測線を展開した堤防区間はその後開削されるとともに、大 規模な軟弱地盤処理工事が施工され、多数の基礎杭が打ち込まれた。その杭深度 と反射断面中の主反射面の出現深度は極めて調和的であり、当該波群をSV相とし て扱い反射処理を適用することの妥当性を証明した。

その2):インタフェロメトリ表面波探査:
 華々しく提唱された地震波干渉法は、「守株待兔」の例えのごとく、反射法デー タ解析には膨大な「株」の展開と、薄幸・辛抱を必要とする。地震波干渉法でと らえられる波群は、通常では表面波が卓越する。したがって表面波探査には効力 を発揮し、深部地盤のS波速度構造推定の標準的手法となってきている。浅部を 対象とした表面波探査では円形アレイで取得したデータをSPAC法で解析する passive表面波探査とともに、地表鉛直打撃振動をリニアアレイで取得し、MASW で解析するactive表面波探査が広く用いられてきたが、地震波干渉法のアイデア を援用すれば、リニアアレイでpassive表面波探査が可能となる。そもそも相互 相関によってある2点間の地震記象を再現する場合、ランダムなノイズ源分布は 必要ではなく、その2点を含む線分上のノイズ源が最も大きく寄与する。したがっ てリニアアレイに対して、ノイズ源もそのアレイ上に分布する測定条件を設定す ればよいことになる。大規模河川堤防には、その川裏川部に交通量の激しい小段 道路が設置されている場合があり、その交通振動がactive表面波探査の障害となっ ていた。そこで逆にその交通振動を測定し、CMP-CCを適用して2次元表面波探査 解析を実施した。その結果、従来のactive表面波探査に比べて、少ない労力と測 定時間で、より深部(低周波)までの構造を再現できることが分かった。



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*第66回 2013年5月7日 入谷良平

「新たな波形インバージョン解析により明らかになった内核不均質構造」

 近年、世界中に大規模な地震波観測網が展開され、データ量は日々膨大になって いる。それに伴いその膨大なデータを効率的かつ高精度に解析できる手法の必要 性が高まっている。特に、地球内部の不連続面の推定や、震源時間関数が長い大 きなイベントの解析においては、時として波形が複雑に重なり合って到達するデー タを含み、解析が非常に困難になる。本研究では波形が重なり合ったデータでも 適用可能で効率よく解析できる手法としてsimulated annealingを用いた波形イ ンバージョン手法を開発し、それをcore phase解析に適用することで高解像度な 内核の構造推定を行った。内核の地震学的特徴としては、表層において、西半球 (アメリカ、アフリカ大陸下)で低速度・低減衰構造を、東半球(アジア下)で高速 度・強減衰構造を持つことが示唆されているが、観測データの複雑性からその成 因は不明なままだった。本研究では世界中のアレイで観測されたcore phase解析 により、各サンプリング領域において一次元減衰・速度構造を推定し、さらに解 析手法を改良することで減衰の周波数依存性の評価も行った。その結果、内核の 不均質が表層300 kmに限定されること、そして、単純な半球構造ではなく、西半 球の中にも細かな不均質が存在することが明らかになった。 本発表では、開発 したSA地震波解析手法の説明と得られた内核の減衰・速度構造の結果、及び結果 を統合的に解釈し、内核成長との関連に関する議論を行う。

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*第65回 2013年4月9日 山口和雄

「いわき地域における地震探査」

 2011年4月11日の福島県浜通りの地震で井戸沢断層と湯ノ岳断層に沿って地表 地震断層が出現した。これら断層周辺の浅部から深さ数kmでの地下構造の把握と、 末端部の延長方向への連続性の確認などを目的として、反射法および屈折法によ る統合地震探査を実施した。井戸沢断層を横切る測線1の反射断面で、地表地震 断層位置付近を境として、断面上の振幅に明瞭な差異が認められる。東側では断 面はreflectiveであり、西側では連続的な波群に乏しく振幅も相対的に小さい。 これは基盤岩内部の状態を反映している可能性がある。湯ノ岳断層を横切る測線 2では、地表から基盤上面に至るまでの堆積層構造が明瞭に捉えられた。屈折ト モグラフィ解析結果からは、地表から深度約1kmまでの詳細な速度分布が得られ た。屈折トモグラフィ解析による速度構造は反射法で推定された堆積層構造を極 めてよく説明している。湯ノ岳断層の地震断層端部から約1.5km南東を通る測線3 は、基盤までの堆積層構造の詳細が明らかとなった。地表地震断層の直線延長と の交差付近で基盤の落差は認められない。測線上のいずれの区間においても、断 層構造を示唆するような明瞭な基盤落差、あるいは褶曲を認めることはできない。

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*第64回 2013年4月2日 大谷 竜

「GPS精密計測の直感的理解ー地殻変動観測と水蒸気測定の対比からー」

 GPS(GNSS)は今や地殻変動観測のみならず、水蒸気測定による気象学への応用 や、電離層計測による地球電磁気学での活用等、地球科学研究になくてはならぬ ツールとなっている。しかしながらその計測原理については意外に理解されてい ないことが多い。GPS計測の可能性と限界を正しく理解するためにも、GPSにおけ るデータ解析方法の基礎を分かりやすく解説する。



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