トップページへ戻る
地球物理セミナー 平成23年度(第21回〜第40回)
*第40回 2012年3月13日 高橋 学
「ベレア砂岩の透水異方性とCTデータに基づく空隙情報の関連性」
岩石内の空隙を評価する計測手法には、水銀を圧入して直接評価する方法やガ
ス吸着等による手法があり、これらによって空隙率や空隙分布そして比表面積な
どの評価が可能である。弾性波速度測定からは空隙の3次元的な形状に関する情
報が得られる。あるいは透水試験によって、空隙の連結性に関する指標としての
透水係数が応力の関数として得られる。これらは空隙の3次元的な空間分布に関
する表現はできない。
μフォーカスX線CTによって得られたデータからThree Dimensional Medial
Axis手法によって、空隙の3次元幾何学情報の抽出が可能であり、この手法を用
いて、空隙の3次元空間分布、tortuosity, Number of connecting path,
number of shortest pathの評価が可能となる。これらの3次元幾何学・空間情
報を用いて、ベレア砂岩の透水異方性の解釈を試みる。CTデータの解析サイズ
による差異についても議論する。
----------------------------------
*第39回 2012年2月28日
----------------------------------
*第38回 2012年2月14日 楮原京子
「音波探査からみた函館平野西縁断層帯の海域延長部の地質構造」
函館平野西縁断層帯は函館平野と上磯丘陵を境する逆断層帯で,その南端は
海域に続くとされている.また,函館平野西縁断層帯南西側,北斗市から上
磯郡木古内町には最終間氷期以降の海成段丘が分布し,その旧汀線高度分布か
ら北北西−南南東方向に延びる活構造と,函館湾に西上がりの地殻変動をもた
らす活構造が存在していると指摘されてきた.
昨年,これらの活構造が海域でどのように分布しているのかを明らかにする
ために音波探査を実施した.その結果,北斗市富川からサラキ岬にかけて発
達する活構造が捉えられた.活構造は主に急傾斜をなす下部更新統とほぼ水
平に堆積する上部更新統〜完新統を境する断層で,下部更新統を覆う上部更
新統〜完新統には撓曲変形が認められる.茂辺地川沖から葛登支岬沖にかけ
ては走向の異なる複数の地質構造が重なることから,断層がいくつかのセグ
メントに区分される可能性がある.また,サラキ岬以南には,これらとは変
位様式の異なる活構造が分布していることが明らかとなった.
----------------------------------
*第37回 2012年2月7日 横倉隆信
「反射法地震探査から見た東京近辺の北西−南東系断層について」
これまで関東平野において実施されてきた反射法地震探査はかなりの数にのぼっ
ています.これらの精度・分解能等はまちまちですが,今や「量が質に転化す
る」という段階に達したように思われます.前回の地球物理セミナーで,関東平
野の北西−南東系断層,特に「綾瀬川断層」「荒川断層」「武蔵野台地北部の断
層群」などについて,反射断面の深部構造をもとに,独断と偏見をもって概観し
てみました.今回はそれにもう少し詳しい補足や修正を加えた議論をする予定で
す.
----------------------------------
*第36回 2012年1月17日 牧野雅彦
「気象庁柿岡地磁気観測所の空中電気観測の意義について
- Initial effect of the Fukushima accident on atmospheric electricity -」
柿岡地磁気観測所は2013年1月に観測100周年を迎えます。観測所で
長年継続してきた観測に敬意を表し、セミナーではその意義について
発表します。
Vertical atmospheric DC electric field at ground level,
or potential gradient (PG), suddenly dropped by one order
of magnitude at Kakioka, 150 km southwest from the
Fukushima Dai‐ichi nuclear power plant (FNPP) right after
the plant released a massive amount of radioactive material
southward on 14 March, 2011. The PG stayed at this level for
days with very small daily variations. Such a long‐lasting
near‐steady low PG has never been observed at Kakioka. The
sudden drop of PG with one‐hour time scale is similar to those
associated with rain‐induced radioactive fallout after nuclear
tests and the Chernobyl disaster. A comparison with the
PG data with the radiation dose rate data at different places
revealed that arrival of the radioactive dust by low‐altitude
wind caused the PG drop without rain. Furthermore, the PG
might have reflected a minor release several hours before this
release at the distance of 150 km. It is recommended that all
nuclear power plant to have a network of PG observation
surrounding the plant.
----------------------------------
*第35回 2011年12月20日 大熊茂雄
「活構造地域の空中磁気探査−福井平野を例として」
断層調査を目的とした空中磁気探査について,福井平野でかつて行った高分解能
空中磁気探査を例として報告する.
福井平野では,1948年に気象庁マグニチュード7.1の福井地震が発生し,福井
平野を中心に甚大な被害をもたらした.震災後,様々な調査がおこなわれ,地表
には震源断層は認められなかったものの,地割れや液状化の分布範囲から,伏在
する福井地震断層と福井東側地震断層が推定された(小笠原,1949).
その後,当該断層の存在を確認するため様々な地球物理学的調査が実施され,
1980年代には,たとえば屈折法地震探査により福井地震断層付近で200mにも及ぶ
西落ちの基盤の落差が推定されている(天池ほか,1984).しかしながら,1990
年代以降の調査(例えば井上・中川,1999)では,このような基盤の落差は確認
されておらず,断層の詳細は依然不明であった.
このようななか,活構造地域の地下構造を明らかにする目的で,1998年に福井
平野においてヘリコプターを用いた高分解能空中磁気探査を実施した.その結果,
福井平野西部を中心として顕著な高磁気異常が分布することが明らかとなった.
その後,事情により詳細な解析は手つかずとなっていたが,この度福井平野の磁
気異常について3Dイメージング解析を実施した.その結果,平野下に伏在する磁
気的構造が解析され,重力データや温泉ボーリングの結果と比較すると火山岩起
源であることが推定された.本報告では,これらの検討結果に加えて,福井県に
よる反射法地震探査結果(福井県,1998;衣笠ほか,1999)との対比結果につい
ても述べる.
----------------------------------
*第34回 2011年11月25日 Dr John Joseph氏
(Principal Geophysicist, Aeroquest Airborne, Perth, AUSTRALIA)
今回は特別セミナーのため場所・時間は下記の通りです.
場所:国際セミナー室(つくば中央7-8 326室)
時間:10:30〜 (講演時間 40分程度)
「Effectiveness of Airborne Geophysical Methods in Petroleum
Exploration」
Over the last decade there has been an increased use of airborne
magnetics and more recently airborne gravity in the petroleum
exploration industry. The early use of these potential field methods in
petroleum was to map sedimentary basin thickness but newer high
resolution surveys are used in conjunction with seismic and well data to
investigate basement trends, intra-formational structures and exploring
more seismically challenging frontier regions. Lately, a combination of
Airborne EM, aeromagnetics and radiometrics has proved as a useful tool
in mapping the hydrocarbon seepage zones. Aeroquest Airborne, a
subsidiary of Aeroquest International is a global leader in providing
such airborne geophysical services worldwide with new survey systems
being added to the fleet. A detailed discussion of the state of art
airborne geophysical data accusation systems and case histories will be
presented.
発表者紹介 (by 大熊茂雄)
Dr John Joseph氏は,東京大学で学位取得後,産総研でJSPSフェロー
などとして滞在されていました.
その後,オーストラリア・アデレード大学で教鞭を執られた後,現在は
オーストラリアのAeroquest Airborne社でPrincipal Geophysicist
として空中物理探査の実施と研究開発に活躍されています.
今回,京都大学で開催される第10回物理探査学会国際シンポジウムで
発表された後,産総研に立ち寄られることになりましたので,
セミナーを開催し発表をしていただくことにいたしました.
----------------------------------
*第33回 2011年11月15日 名和一成
「超伝導重力計・広帯域地震計観測で見えてきたもの―南極・昭和基地を中心に
―」
最近は国内問題に時間を取られて進捗が芳しくありませんが、地物セミナー
でまだ話題に出していなかった地震帯域の話しをしようと思います。丁度今週
(11/14〜)、極地研では極域科学シンポジウムが開催されており、金尾ほかの
共著発表がありますが、その元になった初期の成果にも触れます。北極も含め、
極域ではまだまだ面白いことが出てきそうですが、一緒にやる人いませんか?
----------------------------------
*第32回 2011年11月1日 加野直己
「福岡市生の松原での浅部地下構造調査」
浅部の基盤構造をイメージングすることを目的として,福岡市生の松原地区に
おいてS波反射法地震探査を実施した.九州大学演習林となっている松林の中と
その外側海岸に沿ってのそれぞれ約600mの測線を設定した.
一連の処理を施して得られたCMP震度断面を暫定的に解釈した.測線1には,
3つの比較的連続性の良い反射面が捉えられた.測線2には断層構造らしき特徴
も認められた.測線1の3つの反射面は,測線北東端で掘削されたオールコアボー
リングGS-IKM-1のコア試料の堆積相解析結果と対比すると,下位が深度20.4mの
古第三系姪浜層のトップと礫質河川相の境界からのもの,中位が深度8.0mの礫質
河川相のトップと氾濫原層との境界からのものと考えられるが,少し深く求まっ
ている.
----------------------------------
*第31回 2011年10月25日 住田達哉
「山口県岩国断層系における浅層精密重力探査」
活断層の活動履歴や変位量を調査する方法としてトレンチ調査は有力な手段で
ある.しかし,はっきりとした境界が不明瞭な推定活断層の場合等では,地質学
的・地形学的手法のみでは,実際にトレンチ調査を行っても,断層の痕跡をあて
る事そのものが難しい状況がある.そこで,簡便な地球物理的手法を前もって行
う事で断層痕跡を効率的に見つけることができれば,有益である.
今回フィージビリティスタディとして山口県下松市来巻地区(大河内断層)お
よび周東町下長野地区(熊毛断層)で浅層精密重力探査を行った.
重力探査は,来巻地区では,1 m 間隔の約 40 m の測線,下長野地区では,2
m 間隔の約 60 m の測線で行い,測地はGPSを用いて行った.
本セミナーでは,実データと簡便な数値モデルを取り混ぜながら探査方法・解
析法の説明を重点的に発表する.
画面のトップへ戻る
----------------------------------
*第30回 2011年9月27日 大滝壽樹
「3成分地震計1個でのS波速度推定法の開発(その2)および
南極下の内核境界付近の地震学的構造」
・3成分地震計1個でのS波速度推定法の開発(その2)
地下のS波速度は揺れの評価・地震動の計算・岩石学などで重要な量である.
我々は当グループを始め日本で広く行われているP波反射法探査に3成分地震計
1点を足すだけでS波速度も求める低コストで簡便な手法を開発した.
昨年末のセミナーでは,手法の説明,理論計算結果,および3成分地震計によ
る反射法探査に本手法を適用した結果を紹介した.今回は,実際のP波反射法
探査での実試験の結果を紹介する.
・南極下の内核境界付近の地震学的構造
地球の内核・外核の極域は内核の成長・外核の対流等を考える上で重要である
が,あまり調べられていない.我々は自転軸とほぼ垂直な波線を用いて,極域
の内核と外核の境界付近の地震学的構造の詳細を初めて明らかにした.今回は
この研究についても簡単に紹介する.
----------------------------------
*第29回 2011年9月6日 松林 修
「地質試料の熱物性測定とその意義」
以前から行ってきた実験室内での熱物性測定の研究課題をレビューするととも
に,地下地層のフィールド・スケールの熱的挙動の解析・解釈への応用に関して
もこれまでに考えたことを述べる.
----------------------------------
*第28回 2011年8月30日 駒澤正夫
「北アルプスでの重力調査と地下構造」
近年実施してきた北アルプスでの重力調査の現状を報告する.立山図幅に
関連して黒部トンネルや高温隧道と地表との挟み込みによる密度推定,低密度域
の検出などを述べる.松本図幅とその拡大域については,常念山脈の重力調査の
結果と地下構造について述べる.
----------------------------------
*第27回 2011年8月2日 木村治夫
「3次元バランス法による震源断層モデル推定の試み
:1993年北海道南西沖地震震源域の例」
1993年北海道南西沖地震について,とくにその震源域北部・中部を対象と
して,地下浅部の3次元褶曲形状に基づいて,3次元バランス法解析によっ
て地下深部の断層形状を推定した.
地下浅部の3次元褶曲形状モデルは,旧地質調査所白嶺丸で1994年と1995年
に取得されたシングルチャネル音波探査データの地質学的解釈を行うこと
によって作成した.その際には,深海掘削 ODP-Site796 をはじめとする他
の地下地質情報も使用した.
また,この結果得られた地下深部の断層形状と,既存研究によって地殻変動
や津波のインバージョンから求められている震源断層モデルや余震分布との
比較・検討を行った.
さらに,3次元バランス法解析では扱えなかった領域を2次元解析で補間した
結果や,地質学的時間スケールでの変位量分布についても述べる.
----------------------------------
*第26回 2011年7月26日 中塚 正
「有珠火山2000〜2010年の空中磁気異常変化」
繰返し空中磁気探査データから磁気異常変化を抽出する上では,空間エリア
シングが問題となるが,その問題の解決方法として拡張交点コントロール法を
提案し,浅間火山に適用した(Nakatsuka et al.,2009; セミナ前回[昨年10月]
発表).しかしその結果は,地上観測による検証には至っていなかった.
有珠火山では,2000年噴火以降種々の研究調査が進められてきている.
2000年6月に地調が高分解能空中磁気探査を実施し,大熊ほか(2003, 2010) は
詳細な磁気異常分布図の作成とその解析を進めた.この度そのデータとの対比
を主眼の一つに据えた「地震及び火山噴火予知のための観測研究計画」の一環
として,2010年9月に北海道大学(代表:橋本)が中心となり,有珠山の空中磁
気探査が実施された.これらのデータを用いて2000年噴火直後の6月から2010年
9月の間の全磁力異常変化を解析した.主要な変化は,西山火口から金毘羅火口
に連なる地域・銀沼火口付近・昭和新山での全磁力値の増加(とくに銀沼付近
の増加が顕著)で特徴づけられる.それらの特徴的変化は北大・橋本らによる
地上磁気観測ととくによい対比を示した.
このデータ処理解析の中では,とくに2000年の高度データの精度にまつわる
問題が課題となり,電波高度計データや地形DEMを合わせた詳細な検討を行った
が,結論的には2000年調査の高度データに10m未満程度の誤差を覚悟せざるを得
ない.この高度値の精度を考慮に入れると,前記の全磁力変化の主要な特徴に
大きな影響は及ばぬものの,微小な変化の解析結果はその有意性を慎重に判断
する必要がある.
----------------------------------
*第25回 2011年7月5日(合同セミナー)
1.岡田真介
「石狩低地東縁断層帯の地下構造」
石狩低地東縁断層帯(主部)は,北海道石狩低地の東縁を境するように南北に約
66 km にわたって発達する活断層帯である.この石狩低地東縁断層帯は,太平洋プ
レートの斜め沈み込みよって横ずれ運動する千島弧の前弧スリバーが,東北日本
弧 に衝突している日高衝突帯のまさに最前面であり,そこでは最新の断層運動が
生じている.
沿岸域の地質・活断層調査の一環として2010年11月に石狩低地東縁断層帯を跨
ぐ2測線の反射法地震探査・重力探査を実施した.これらの結果を示し,地下構
造とその発達史について議論したい.
2.小松原 琢
「勇払平野の地下地質層序と地質構造に関する既往研究の問題点」
勇払平野の地下地質に関して,既往研究の達成点と問題点をまとめ,今後の課
題を述べる.
勇払平野の地下地質層序は,これまで近藤ほか(1984,1992)などによって2本
の中部更新統以下に達する基準ボーリングが掘削され,それらによって決められ
た最終間氷期層準を追跡することによって地質断面図が描かれていた.しかし,
その基準ボーリングに示された層序には疑問点があり,これまで最終間氷期層準
とされてきた地層はより古い時代の間氷期堆積物である可能性が指摘される.
また,勇払平野の北方にあたる支笏火山火砕流台地や段丘面を変位させる活断
層・活褶曲と,沿岸部の構造調査によって明らかにされた活褶曲は,滑らかに連
続すると考えにくい.
これらの問題を踏まえて,沿岸部の活構造のうち最も前面部に位置する背斜の
軸付近で中部更新統に達するオールコアボーリングを掘削し,平均変位速度やそ
の分布を求めることを試みている.本発表ではこのボーリング調査に関する可能
な限りの報告を含めて,勇払平野の構造調査の方針について述べる.
3.小松原 純子
「勇払平野の既存ボーリングデータ」
勇払平野(苫小牧周辺)で収集した既存ボーリングデータの種類などについて
説明する.またそれらから推測される地下構造について述べる.
----------------------------------
*第24回 2011年6月21日 伊藤 忍
「埼玉県川島町における反射法地震探査」
2010年12月に埼玉県川島町において反射法地震探査を実施した.
調査の目的は山口ほか(2006)によって実施された反射法地震探査のKawagoe1測線と,
その北方に約4km離れた場所に位置する川島84坑井の層序との比較をより信頼できるものにすることである.
調査の状況と予備的に作成した断面を示し,今後の処理・解釈の見通しについて報告する.
----------------------------------
*第23回 2011年6月7日 山口和雄
「櫛挽断層の浅部地下構造」
櫛挽断層周辺で目標深度200m程度の反射法地震探査を実施した.極浅部で水平層,
その下位に北東傾斜の反射面などが捉えられ,地表の撓曲直下で反射面の変形も
見られる.同地域で実施された電磁探査・電気探査との対比も行う.
----------------------------------
*第22回 2011年5月31日 高橋 学
「砕屑性砂岩における流体移動経路の可視化ーCTデータによる空隙率の定量化および圧力効果についてー」
マイクロフォーカスX線CTを用いて画像取得を行い,空隙の3次元幾何学情報を抽出する.空隙率の定量化のためにガラスビーズパッキングデータおよび粒状体のパッキング幾何学を用いた.この情報から元データのconnecting pathに関する情報を可視化および定量化する.特に,流体の通路としてtortuosityに関する情報を空隙率の異なる3つの砂岩に適用した事例を紹介する.また,1000m程度の地圧を想定し,25MPaの拘束圧下での変化についても言及する.
----------------------------------
*第21回 2011年3月1日 大谷 竜
「産総研地下水等総合観測網による東南海・南海地震で期待される仮想的プレスリップの検知能力の評価」
産総研では,四国・和歌山〜愛知にかけて新たな観測点を設置し,来るべき南海地震の予知を目指した観測が行われている.本講演では,直前予知のキーとなるプレスリップの検出方法の考え方及び,産総研観測網による検知能力の評価方法について,分かりやすく説明する.
画面のトップへ戻る