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地球物理セミナー 令和5年度
第120回地球物理セミナー
日程:令和5年9月29日(金)10:30〜12:00
場所:オンライン開催 (Teams)
発表者:丸藤大樹
タイトル:複数の機器で捉えた北海道東部弟子屈地域での重力変化
要旨:地下の質量分布の変化の把握はマグマ活動や断層運動などに関する研究に繋がることから、屈斜路カルデラ周辺ではこれまでに複数の機器を用いた重力測定が行われている。
北海道大学弟子屈観測所には約4年間(2018年11月〜2022年8月)超伝導重力計iGravが設置され、重力変化の連続測定を行っていた。
また、シントレックス型重力計CG-5を用いた屈斜路カルデラ地域での相対重力測定を2022年6月、2023年6、9月に実施した。
CG-5での測定は重力計の運搬が測定開始直後の値に影響を及ぼしていることが示唆されているため、2023年の観測では車での運搬後の測定時間を90分とし、
2022年の30分よりも長くした。
重力データには気圧変化、潮汐、極運動など様々な影響が含まれており、結果の解釈のためにはこれらの影響を適切に補正する必要がある。
超伝導重力計で得られた連続データを補正すると、冬から春先に掛けての特徴的な重力季節変化が検出された。
冬の積雪や春先の融雪を考慮した陸水重力変化のモデルを作成することで、この重力季節変化を補正した。
その際、前半2年分のデータを解析した山佳・名和(2020)ときよりも大きな飽和透水係数が推定された。
CG-5のデータは測定開始後60分程度からドリフトの様子が安定していた。スケールファクターという物理量を用いた補正も行い、各観測点の重力差の変化を計算した。
屈斜路カルデラ中心部では2021年以降膨張性の地殻変動が観測されているが、種々の影響を補正した超伝導重力計のデータは安定しており、
地殻変動による有意な影響は見られなかった。CG-5のデータを解析した結果、膨張中心近くの仁伏観測点では1年間での重力差の変化は見られなかった。
仁多観測点では1年間で弟子屈との重力差が80μGal程度変化していたが、膨張中心からの距離は大きいため原因は不明である。
今後は絶対重力測定の結果を利用した超伝導重力計のドリフトレートの推定などを通して、より詳細に経年的な重力変化について考察を進めていきたい。
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第119回地球物理セミナー
日程:令和5年4月14日(金)10:30〜12:00
場所:オンライン開催 (Teams)
発表者: 住田達哉
タイトル:広島土砂災害地域における安全度評価手法の確立に向けての精密重力探査
要旨:広島県においては,昭和20年以降,死者・行方不明者を伴う土砂災害が10回以上も起きている.
この地域では深層風化を被りやすい広島花崗岩が広く分布することが,土砂災害の要因の一つと考えられている.
昨年度,平成26年度8月に土砂災害を被った広島市安佐北区の高松山の渓流の一つをフィールドに精密重力探査を行った.
急傾斜地域であるため,既存の 5mDEM による解析では不十分なため,現地に地上スキャナーを持ち込み精密地形測量も同時に行った.
現在,解析を進めているが,その進捗状況も交えて報告する.
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地球物理セミナー 令和4年度
第118回地球物理セミナー
日程:令和4年11月16日(水) 10:30〜12:00
場所:オンライン開催 (Teams)
発表者: 若林環(京都大学大学院理学研究科)
タイトル:バネ式相対重力計のスケールファクターにおける読取値依存性
要旨:可搬型のバネ式相対重力計を用いた重力観測は、火山地域の重力時空間変化を把握するのに有効な手段の一つである。
バネ式相対重力計では、得られた重力値に対してスケールファクター(SF)という物理量を掛け合わせて補正する必要がある。
SFはある2つの重力点で絶対および相対重力測定をおこない、絶対重力差を相対重力差で割ることで決定できる。
従来、SFは各相対重力計に固有の定数として扱われてきたが、いつくかの先行研究によってSFが読取値に依存することが明らかにされた(たとえば、Onizawa, 2019)。
そこで、本研究では複数の相対重力計についてSFを検定し、読取値依存性を調べた。
その結果、全ての相対重力計でSFの読取値依存性が確認された。
また、複数の相対重力計データから特定の点の重力値を求める際、SFに定数を使った場合に比べて、SFの読取値依存性を考慮した場合には重力値のばらつきが3/4に低減した。
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第117回地球物理セミナー
日程:令和4年11月2日(水) 10:30〜12:00
場所:オンライン開催 (Teams)
発表者: 木下佐和子
タイトル:淡路島南西部,湊-本庄断層周辺地域における先行研究のレビュー
要旨:湊ー本庄断層は、淡路島南西部に位置する西淡山地と沖積低地との地形境界線沿いにほぼ南北方向に分布する。先行研究において、湊ー本庄断層は西淡山地東縁からその東側にある沖積低地下に分布する大阪層群の傾斜変化構造として認められているが、淡路島の南部においてはその位置や変形構造は不明である。また、変形運動の時期に関しても、大阪層群の堆積年代以降に関しては変位を示すデータがなく、不明な点が多い。
本発表では、湊-本庄断層とその周辺地域に関する先行研究を紹介し、来年2月から兵庫県南あわじ市で実施予定の反射法地震探査・表面波探査・微動アレイ探査・サイスミックコーン貫入試験に関して目的と調査計画を説明する。
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第116回地球物理セミナー
日程:令和4年10月12日(水) 10:30〜12:00
場所:オンライン開催 (Teams)
発表者: 伊藤 忍
タイトル:地質情報とDX - DX・企業DX・研究DX -
要旨:DX(ディジタルトランスフォーメーション)の必要性が謳われるようになって久しい。
しかしながら,DXに対する考え方は明瞭に示されているとは言えず,容易に理解できるものとはなっていない。
本セミナーでは経済産業省および経団連の定義する企業DX,文部科学省の定義する研究DXについて紹介・解説する。
また,地震探査研究や国内E&P業界の状況を報告し,今後のDXソリューションへの道筋を考える。
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第115回地球物理セミナー
日程:令和4年9月30日(金) 15:30〜17:00
場所:オンライン開催 (Teams)
発表者: 宮川歩夢
タイトル:地球科学研究一次データ管理・公開プラットフォームの開発
要旨:近年の研究DXやオープンサイエンスおよびデータ駆動型研究の推進の観点から、研究で得られる測定値などの一次データはより一層重要性を増している。
また、GSJでもこれまで長年蓄積してきた知見としての、一次データの価値ある利用が求められる。
しかし、それらの一次データの多くは個別の論文や報告書等の成果として公開されるなど、一元的に収集・管理されることは稀でデータの所在は散逸しがちである。
また、一度それらを取りまとめたデータベースが作られると、その後に取得されたデータを加えるアップデートは頻繁には行われず、
新たに取得されたデータが広く普及することが難しい。そこで、より簡便に一次データデータの管理・公開が容易なプラットフォームを開発した。
地球科学研究における一次データの多くはその取得された位置と測定された値、および関連する情報(メタ情報)で構成されることに着目し、
大量の一次データを空間的に可視化し、必要に応じてダウンロードできる機能を実装した。
これにより、ユーザーはブラウザから直感的に一次データを閲覧・取得することが可能になる。
これらのプラットフォームにより、研究者は自身の成果をより効果的に発信するとともに、効率的に既存のデータにアクセスできる。
また、プラットフォームのアクセスレベルを調整することにより一次データの組織的なオープン&クローズ戦略を容易に実現することが可能である。
さらに、同様のプラットフォームを標準化することで、他機関の乗り入れや地球科学分野外からの参入により高付加価値な研究の加速が期待できる。
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第114回地球物理セミナー
日時:8月4日(木) 10:00〜11:00
場所:オンライン開催(Teams)
発表者:平野光浩(東北大学理学研究科地学専攻 博士課程2年)
題名:連続転位分布論に基づく東北日本弧の重力異常
Gravity anomaly in the northeastern Japan arc based on the continuum theory of defects
講演要旨:
地球の重力場の異常性を示す重力異常(ブーゲ異常)は長短波長成分から構成されており、地球内部の大小・浅深の様々な密度構造を反映する。
東北日本弧では、短波ブーゲ重力異常は地殻構造を反映しており、活断層をはじめとする地殻変動との関係が先行研究より報告されている。
本発表では、理論やモデル計算を通じて、東北日本における断層転位(活断層)による体積歪に起因する重力異常について発表する。
累積的な断層転位によって最大約-10 mgal程の異常が発生し、島弧に沿った歪集中帯において負の異常帯を形成していること可能性がある(Hirano et al., 2022Terra Nova)。
さらに島弧に沿った正負の異常帯は地殻の回位(転位列と等価)による質量過剰・損失領域に起因すると考察できる。
故に、東北日本弧の重力異常は回位が伴う地殻変形を反映している。
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第113回地球物理セミナー
日程:令和4年7月25日(月) 13:30〜14:00
場所:オンライン開催 (Teams)
発表者:丸藤大樹(北海道大学M1)
発表タイトル: InSARで捉えた2021年ハイチ地震の地殻変動
要旨:
本研究は2021年8月14日に発生した地震を対象にし、3つの目的 (1)InSAR (干渉合成開口レーダ)を用いて地震時の地殻変動の様子を明らかにすること、(2) ハイチ共和国を横断するエンリキロ断層と今回の地震との関係について考察すること、(3) モデル計算により、観測された地震時の地殻変動を再現すること、の達成に向けて行われた。
解析の結果、エンリキロ断層の北側では最大80cm以上の衛星に近づく方向の変位が、南側では30cm以上の衛星から遠ざかる方向の変位が検出された。エンリキロ断層の位置や左横ずれ型の断層であるという性状 (Sytron et al., 2020) と概ね調和的な変動パターンであったため、今回の地震はエンリキロ断層で発生したと仮定して地殻変動のモデル計算を行うことにした。Okada, Y. (1992) に基づき、断層の傾斜と走行方向・傾斜方向の滑り量を変数として行ったモデル計算の結果、観測された地殻変動の様子を概ね再現する様なモデルが決定した。
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第112回地球物理セミナー
日程:令和4年5月10日(火) 10:30〜12:00
場所:オンライン開催 (Teams)
発表者: 大谷 竜 (地質情報研究部門 地球物理研究グループ)
タイトル:レビュー:南海トラフ地震臨時情報による防災対応を巡る諸課題
ー起こる「かもしれない」巨大地震の事前情報を有効に活用するためにー
要旨:東日本大震災以降,国はこれまで行われていた東海地震予知のような地震発生の「確定的な」予測は困難であるとして、「東海地震情報」の提供を中止した.その代わりに「不確実な」地震予測である「南海トラフ地震情報(臨時情報)」を導入した.
しかし臨時情報においては,災害予測情報を運用する上での大きな「考え方の転換」が行われており、それにともなって防災対応上の様々な課題が考えられる.
本講演では,臨時情報が導入されてきた歴史的な経緯や背景をレビューし,今後取り組むべき課題について概観する.
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