第3報 緊急調査報告 作成日:2004年11月12日 調査日程:2004年11月2日-11月5日 目的:地震による地盤・人工構造物の変状調査 (調査担当:水野・松浦・井村(鹿児島大)) 方法:現地踏査 範囲:1. 小平尾断層沿い,2. 吉原新田〜茂沢,3. 田河川〜北堀之内駅周辺 ◆ 調査結果概要 1. 小平尾断層沿いでは,断層変位の有無を検証した.その結果,明らかな断層変位は確認できなかったが,断層に沿って,亀裂,斜面崩壊,地すべりなどが多数みられた.断層から離れた地点に比べると,断層に沿って変状が明らかに多い.また,断層近傍でも,盛土の部分に限って顕著な変状がみられた. 2. 吉原新田〜茂沢では,地盤・人工構造物にみられる変状と褶曲構造の分布が調和的であるか否かを検証した.その結果,人工構造物の一部には短縮を受けたことを示す変状がみられるが,地すべりによる可能性も否定できない. 3. 田河川〜北堀之内駅周辺では,地盤・人工構造物にみられる変状と褶曲構造の分布が調和的であるか否かを検証した.その結果,地盤・人工構造物の変状は,田河川背斜,下島向斜(諏訪峠撓曲)付近に集中する傾向がみられるが,さらなる調査が必要である.また,人工構造物の一部には短縮を受けたことを示す変状がみられるが,広域(数km以上)にわたって短縮変形を受けたか否かの判断,またその定量把握は大変難しい. ◆ 地盤・人工構造物の変状の分布 写真1(地点1:吉原北方) アスファルト道路に開口亀裂.盛土部分が地すべりを起こしたと推定される. 写真2-1(地点2:吉原北方) アスファルト道路に亀裂および沈下がみられる.断層鞍部上を圃場整備したところに生じた地すべりと推定される. 写真2-2(地点2:吉原北方) 畑に開口割れ目.断層鞍部上を圃場整備したところに生じた地すべりと推定される. 写真3(地点3:吉原北方) 小平尾断層上のため池堤防が決壊. 写真4-1(地点4:吉原) コンクリート擁壁が開口. 写真4-2(地点4:吉原) コンクリート面に多数の亀裂. 写真5-1(地点5:吉原南方) コンクリートのふたに亀裂,ブロックの回転.重力性の変形だけでは説明できないかもしれない. 写真5-2(地点5:吉原南方) アスファルト道路とコンクリート製U字溝に開口亀裂. 写真6-1(地点6:吉原南方) 下図のコメント参照. 写真6-2(地点6:吉原南方) コンクリート製U字溝に亀裂.南東側が1〜3cm程度上昇.小平尾断層とはセンスは逆だが,テクトニックな変形の可能性がある. 写真7(地点7:上原高原) 平坦なアスファルト道路上に多数の亀裂. 写真8(地点8:上原高原) 斜面崩壊.盛土と切土両方の崩壊. 写真9(地点9:上原高原) 牧草地に円弧状の開口亀裂群.落差最大60cm. 写真10(地点10:上原高原) アスファルト道路の亀裂群.圧縮,開口両方.地すべり性と考えられる. 写真11(地点11:上原高原) アスファルト道路の亀裂群.地すべり性と考えられる. 写真12-1(地点12:上原高原) 道路の斜面崩壊.盛土部分が崩落し,小河川を堰き止めて池を形成している. 写真12-2(地点12:上原高原) 斜面崩壊. 写真13(地点13:上原高原) アスファルトの沈下. 写真14(地点14:上原高原) アスファルト道路の亀裂群.畑に開口亀裂群.地すべり性と考えられる.畑・道路は小河谷(流路方向は写真左から右)を埋積して造られた. 写真15-1(地点15:上原高原) 下図コメント参照. 写真15-2(地点15:上原高原) コンクリート製U字溝とコンクリート擁壁に亀裂.擁壁3.5〜4cm北西側上昇.U字溝1cm北西側上昇. 写真16-1(地点16:上原高原) 斜面崩壊上のアスファルトの亀裂(一部応急補修済み). 写真16-2(地点16:上原高原) 斜面崩壊. 写真17-1(地点17:越又) 木造の橋と背後の斜面崩壊. 写真17-2(地点17:越又) 木造の橋にみられる圧縮. 写真18(地点18:越又) 橋両端のアスファルト道路にみられる圧縮性の変状.上:全景 中:橋と上流側の道路 下:橋と下流側の道路 写真19(地点19:越又) アスファルト道路に生じた圧縮性の変状. 写真20-1(地点20:茂沢) 消雪用パイプのコンクリート枠にみられる圧縮性の変状.側近の擁壁に大きな変状は認めにくい. 写真20-2(地点20:茂沢) 道路の陥没.石垣の倒壊. 写真21-1(地点21:茂沢) 腰又向斜軸付近.魚沼層(砂・シルト層)が急傾斜(30度前後)を示す. 写真21-2(地点21:茂沢) 道路面に20〜30cmの段差が生じ,埋設している水道管も破損(現在は仮フェーシング後).黒沢氏(応用地質)の情報. 写真22(地点22:下茂沢) 水路工と地山の間の開口. 写真23(地点23:下茂沢) モルタル吹きつけ面に生じた割れ目.一部崩落 写真24(地点24:和長島) 集水升の枠が圧縮変形し,ふたがはみ出ている.背後には線路に停車中の列車. 写真25(地点25:田川) 道路に生じた亀裂,沈下. 写真26(地点26:田川) コンクリート水路に生じた段差. 写真27(地点27:田川) 線路の屈曲.線路の変状の下にはトンネルがある(写真上下とも). 写真28(地点28:田川) 水田に見られる噴砂跡. 地点29:長屋 側溝のずれ,アスファルト道路の亀裂.黒沢氏(応用地質)の情報. 写真30(地点30:北堀之内駅北西方) 斜面崩壊.一部はJRの線路にかかっている.崩壊壁面に見られる地層の傾斜(みかけ)は30°程度. 写真31-1(地点31:北堀之内駅) 駅ホーム(盛り土部分)の線路へのはらみだし.ホーム手前のレールの変形部の地下には構造物がある模様. 写真31-2(地点31:北堀之内駅) ホーム(盛り土部分)の線路へのはらみだしと直行する圧縮割れ目.ホームはほぼ北西−南東方向なので,北西−南東方向の圧縮を受けたことを示す. 写真32(地点32:下島) 線路の変形.地下に水路が横切っている. 写真33-1(地点33:下島) 道路両側の集水升の枠が圧縮変形し,ふたがはみ出している. 写真33-2(地点33:下島) アップ. 写真34-1(地点34:下島) アスファルト道路にみられる変状. 写真34-2(地点34:下島) 道路変状下にはコンクリート製水路が横切る. 写真35-1(地点35:下島) 跨線橋と道路の間の変状. 写真35-2(地点35:下島) 跨線橋の手すりパイプにみられる座屈変形. 写真35-3(地点35:下島) 跨線橋の手すりパイプにみられる継ぎ目の食い違い. 2.小平尾地区の地表変形 (調査担当:丸山・伏島) 小尾平断層小平尾地区周辺および六日町盆西縁断層帯北東延長部の変状分布図を作成した. 1.第2報の調査地点3と調査地点4の間において,畑を横切る逆断層状の変形(写真1)や道路の短縮変形が断続的に確認できた. 2.小平尾断層に沿っては,沖積面上で,断層に対して斜交する道路が傾動するとともに,逆断層運動と調和的な見かけの横ずれを示す.なお,これより一段高い面には目立った変状は認められない. 3.第2報の調査地点5の西方延長の水田には,干上がり方の違いからわずかな撓曲(北東側上がり)が推定される. 4.六日町盆西縁断層帯北東部の並柳地区では変状は認められない. 2004年11月9日更新 3.六日町盆地西縁断層沿いの変状調査:小出地区 (調査担当:丸山・伏島) 六日町盆地西縁断層沿いにあたる小出町で地震に伴う断層の地表変形が発見されたとの情報をうけて小出町地区周辺の変状分布図を作成した. 名古屋大学地震火山防災研究センター その結果,本地区ではほぼ丘陵と平野の境界に沿って,畑を横切る逆断層状の変形(写真2)や道路の短縮変形が500 m以上にわたって断続的に確認された.ただし,調査範囲が限られていることもあり,現段階では背後の丘陵の大規模な地すべりに伴う変状の可能性も否定できない. 調査は現在も進行中であり,変状の成因をはじめとする詳細については追って報告する予定である.
作成日:2004年11月12日
調査日程:2004年11月2日-11月5日
目的:地震による地盤・人工構造物の変状調査 (調査担当:水野・松浦・井村(鹿児島大))
方法:現地踏査
範囲:1. 小平尾断層沿い,2. 吉原新田〜茂沢,3. 田河川〜北堀之内駅周辺
◆ 調査結果概要
1. 小平尾断層沿いでは,断層変位の有無を検証した.その結果,明らかな断層変位は確認できなかったが,断層に沿って,亀裂,斜面崩壊,地すべりなどが多数みられた.断層から離れた地点に比べると,断層に沿って変状が明らかに多い.また,断層近傍でも,盛土の部分に限って顕著な変状がみられた.
2. 吉原新田〜茂沢では,地盤・人工構造物にみられる変状と褶曲構造の分布が調和的であるか否かを検証した.その結果,人工構造物の一部には短縮を受けたことを示す変状がみられるが,地すべりによる可能性も否定できない.
3. 田河川〜北堀之内駅周辺では,地盤・人工構造物にみられる変状と褶曲構造の分布が調和的であるか否かを検証した.その結果,地盤・人工構造物の変状は,田河川背斜,下島向斜(諏訪峠撓曲)付近に集中する傾向がみられるが,さらなる調査が必要である.また,人工構造物の一部には短縮を受けたことを示す変状がみられるが,広域(数km以上)にわたって短縮変形を受けたか否かの判断,またその定量把握は大変難しい.
◆ 地盤・人工構造物の変状の分布
写真1(地点1:吉原北方) アスファルト道路に開口亀裂.盛土部分が地すべりを起こしたと推定される.
写真18(地点18:越又) 橋両端のアスファルト道路にみられる圧縮性の変状.上:全景 中:橋と上流側の道路 下:橋と下流側の道路
写真21-1(地点21:茂沢) 腰又向斜軸付近.魚沼層(砂・シルト層)が急傾斜(30度前後)を示す.
2.小平尾地区の地表変形 (調査担当:丸山・伏島)
小尾平断層小平尾地区周辺および六日町盆西縁断層帯北東延長部の変状分布図を作成した.
1.第2報の調査地点3と調査地点4の間において,畑を横切る逆断層状の変形(写真1)や道路の短縮変形が断続的に確認できた.
2.小平尾断層に沿っては,沖積面上で,断層に対して斜交する道路が傾動するとともに,逆断層運動と調和的な見かけの横ずれを示す.なお,これより一段高い面には目立った変状は認められない.
3.第2報の調査地点5の西方延長の水田には,干上がり方の違いからわずかな撓曲(北東側上がり)が推定される.
4.六日町盆西縁断層帯北東部の並柳地区では変状は認められない.
2004年11月9日更新
3.六日町盆地西縁断層沿いの変状調査:小出地区 (調査担当:丸山・伏島)
六日町盆地西縁断層沿いにあたる小出町で地震に伴う断層の地表変形が発見されたとの情報をうけて小出町地区周辺の変状分布図を作成した.
名古屋大学地震火山防災研究センター その結果,本地区ではほぼ丘陵と平野の境界に沿って,畑を横切る逆断層状の変形(写真2)や道路の短縮変形が500 m以上にわたって断続的に確認された.ただし,調査範囲が限られていることもあり,現段階では背後の丘陵の大規模な地すべりに伴う変状の可能性も否定できない. 調査は現在も進行中であり,変状の成因をはじめとする詳細については追って報告する予定である.