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出版室 地質図の出版

地質図の出版(地図調整)

地質図とは表面の土壌や植生を剥ぎ取ったその下の、地層・岩石の様子を示した地図のことで、地質研究の成果の集大成と言うべきものです。地質図には、研究成果である地質情報を正確に再現し、利用者が地質情報を正確に読み取れるようにすることが求められます。研究成果の出版を担当する地質情報基盤センター出版室では、一枚の紙の上に地質情報を正確に表現する地図調整の専門技術を継承し、今日の出版業務に生かしています。

地質図の完成までには、構成、製版、校正、色校正、検品といったいくつもの工程を経る必要があります。

構成

多くの場合、研究者の作成する地質図原稿はグラフィックデータとして提出されます。手書きの原稿が主流であった時代もありましたが、デジタル化が進んでいます。

原稿を受け取ってからまず行われるのが印刷用原図の作成です。通常地質図はA2サイズの用紙に印刷されます。標準的なフォーマットは存在するものの、凡例や断面図の数、解説のための追加の図面等が異なるため、それぞれの地質図に合わせた構成を工夫する必要があります。中央に配置する地質図本体のサイズはどれもほぼ同じですが、最近の地質図は凡例の数が増える傾向にあるなど、構成が難しい例も増えています。

5万分の1地質図幅作成の際の雛形
5万分の1地質図幅作成の際の雛形

校正

構成された原稿がそのまま印刷できるわけではありません。地質図には多くの色が使われていますが、これは複数の色を重ねて印刷することで表現しています。そのため、印刷所において色の重なりを考慮した印刷用のグラフィックデータを作成します。
この時点でのデータにはまだ修正すべき点が残っています。この修正作業を校正といいます。地質調査総合センターの地質図では、JIS規格(JIS A 0204「地質図−記号、色、模様、用語及び凡例表示」)への準拠に加え、カラーチャート、整飾・フォント・地名などが細部まで規定されていますので、それが地質情報を表す線・記号・色などに正確に反映されているか確認していきます。

5万分の1豊田図幅の校正の様子
5万分の1豊田図幅の校正の様子。修正すべき箇所の指摘が赤ペンで書き込まれている

校正中の様子

校正中の様子。自作のツールで色の確認をしているところ

校正中の様子

同じく手元拡大。


色校正

正確な色が印刷されているかの確認も欠かせません。GSJ独自のカラーチャートと校正紙の色を、ルーペを使って比較・確認します。現在地質を表す際に使用される色は342色ありますが、全て拡大すると網点と呼ばれるCMY(赤青黄)3色の点の集合体になっています。その網点が、カラーチャート通りかを確認します。また、図全体の色味が均一であるかも確認します。
地質図の印刷にはオフセット印刷を使います。オフセット印刷は使うインクの色毎に印刷原版を作る必要があるためコストがかかる、色の重ね合せが難しいなどの欠点もありますが、地質図において重要である線がきれいに出る、網点のサイズで色の正確な確認が可能であるといった長所があるためです。
色校正の際には実際の地質図と同じ紙・インク・印刷機を使用して印刷し、確認を行います。インクは一般的な5万分の1地質図では7色以上、20万分の1地質図では8色以上が使われます。

カラーチャート 342色(部分)
カラーチャート 342色(部分)

オフセット印刷のイメージ。
オフセット印刷のイメージ。点のサイズで色チェックが可能


検品

正納品前には検査を行います。印刷物は絶対的なものではありません。細心の注意を払い校正作業を終えても、印刷する際の環境(温度・湿度)・紙の含水率・印刷機の特性(オフセット印刷・多色刷り)・原稿の特性(細密さ・色の分布)など様々な要素が関係して、印刷結果に影響を及ぼすことがあります。そのような各種の調整がうまくできているか、期待する品質を総合的に満たしているかを本印刷の前に必ず確認しています。


完成

このように、たくさんの準備や確認を経て、最終的に地質図が刷り上がります。
印刷物の地質図は、時間をかけた研究の成果と共に、高度な地図調整の専門技術の支えがあってできあがるものなのです。


公開データ

このようにして整備された地質図は、地質図カタログや地質図類データダウンロードからご利用いただけます。
また販売もしております。[地質図類購入案内

地質図カタログ
地質図カタログ

地質図の種類を選び、索引図から地域を選択して、データをダウンロードできます。

地質図類データダウンロード
地質図類データダウンロード

発行済みの地質図類の種々のデータをダウンロードできます。


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