地質試料の調製
業務
地質試料の調製は、地質の調査研究に不可欠な岩石試料等の薄片・研磨片等を作製しています。他機関からの技術相談や研修指導の要請にも応じており、高度な作製技術を国内外に発信しています。
薄片作製
岩石を薄く平らにする薄片の作製技術は、古くから地質学の分野で岩石の成因の解明等に利用されてきました。試料調製では、その技術を研究者のニーズに合わせ、より精度の高い平面の作製や限界まで薄くする技術へと発展させ、地質調査総合センターの研究を支援しています。
技術情報
新たな作製技術の開発にも積極的に取り組み、多様化する試料に柔軟に対応しています。これまでに、試料を常温または低温で樹脂包埋し、研磨・切断時に水・油などの液体を使用しない「乾式研磨法による脆弱試料薄片の作製法」(特許第56330778号)を開発し、難試料の高精度薄片を作製しています。
世界初、イモゴライトの薄片作製
火山灰土壌に産出するナノチューブのイモゴライトは、一度乾燥すると収縮し元の状態に戻りません。通常の薄片作製方法では試料の乾燥が不可欠なため、発見から約50年もの間、薄片での観察は不可能と考えられてきました。当グループでは、試料を乾燥させず薄片にすることに成功し、野外で産出する状態を損なわない形での薄片観察・分析が可能となりました。
【参考】鈴木正哉ほか (2011) 乾式法によるイモゴライトの薄片試料作製,粘土科学,第50巻,第2号,p63-68.
【関連記事】[pdf]壊れやすい試料に対応した薄片作製技術(産総研TODAY 2012年9月)
鉄マンガンクラストの精度の高い薄片・研磨片作製
海底で採取された脆弱な鉄マンガンクラストの高品質薄片を乾式研磨法で作製し、形成年代と成長速度推定の研究に貢献しました。
【関連記事】海底の鉄マンガンクラストの形成年代と成長速度を推定 -世界で初めて0.1 mm単位で地球磁場逆転記録を復元-
普及活動
技術を社会へという観点から、他機関からの技術相談や技術研修の要請に応じ、技術支援を積極的におこなっています。また、試料調製にかかわる高い技術力を活用した展示物の作製、一般公開時における試料作製現場の見学ツアーなど、薄片技術の普及にも取り組んでいます。
技術相談・支援の受け入れ
薄片技術者を対象として、研究に必要な難試料調製にかかわる技術相談・支援を行っています。
地質標本館展示物
精度の高い薄片を作製する技術を直感的にご理解いただく試みとして、基本となる切断、接着、研磨の技術を駆使して作製した石の昆虫が地質標本館に展示されています。