水文環境図

  • 水文環境図とは?

    水文環境図は、地域の地下水や地中熱などの地下水資源の有効利用と、地下水の環境保護を目的として作成されています。
    電子媒体(CD-ROM)で出版されています。

  • 対象

    水文地質学(地下水学)の専門家および学生、コンサルタント、所属団体の水担当など、広域的な地下水の流れに関する、専門的な知識を必要とする方が対象です。一般的な地下水に関する専門書よりも、やや平易に書かれています。

  • 内容

    編集項目は、地形、地質、地下水位、水質、同位体組成、地下温度などであり、それぞれが階層化(レイヤー化)されて収録されています。異なる情報を重ねて表示することができるとともに、不要なデータを非表示にすることができます。

  • 出版物

    2002年から2013年までの間に「仙台平野」 「秋田平野」 「関東平野」 「濃尾平野」 「筑紫平野」 「山形盆地」 「熊本地域」の7地域が出版され、2015年2月には新たにNo.8「石狩平野」が出版予定です。また、現在、「富士山周辺地域」、「大阪平野」を作成中です。
     (なお、「仙台平野」 「秋田平野」 「濃尾平野」 「筑紫平野」 「山形盆地」については、水素・酸素安定同位体比の分析結果に関して問題が判明し、現在、頒布・販売の停止措置をとっております。詳細は、GSJトップページ>出版物とサービス>お知らせ(出版物)をご覧ください。)


水文環境図の歴史

  1. 日本発の水理地質図

    地質調査所の時代にさかのぼりますが、1957年に我が国初の全国版水理地質図(Hydrogeological Map)が刊行されました。図中では4色の情報があり、水色は地下水の豊富な低地、緑色は地下水の豊富な台地、赤色は地下水の豊富な火山地域、黄色は地下水が豊富でない地域、とされています。基本的には地質情報(表層地質図)に水文情報を添付したものであり、どこにどれだけの水資源があるかを図示していました。




    日本水理地質図概念(日本初の全国水理地質図)

    (地質調査所 1957年発行)

  2. 日本水理地質図の時代

    1957年から4年後の1961年、将来的な地下水資源利用を目的とし、日本水理地質1「木曽川左岸・矢作川および豊川流域水理地質図および説明書,1:100,000」(村下・武居,1961)が発行され、1998年の第41号まで続きます。例として、1966年に発行された図を見てみますと、1957年の図とは、観測ポイント・引用文献・地図上の区分や数値データなどどれをとっても格段の進歩が認められます。1980年代からは、世界の各国で(発展途上国であっても)このような水理地質図が発行されるようになり、地形図や地質図と同様に国土の基盤情報として欠くことのできないものになってきました。そこで、我が国もUN-ESCUPなどを通じて、東南アジアの各国を対象に水理地質情報の整備を支援してきました(Marui, 2009)。

    水理地質図 関東平野西南部
    (地質調査所 1966年発行)
  3. 水文環境図の時代

    2001年に地質調査所は(独)産業技術総合研究所の一部として再出発しました。このとき、地下水の地図を、「水文環境図」とあらためることになりました。従前の日本水理地質図は紙ベースでしたが、水文環境図は電子化されてデータが階層化されているため、必要なデータを呼び出すことになっています。ここでは表層地質図と各深度の水理水頭を示します。

    現在の水文環境図(産総研 2004)
    関東平野の地質図に年代ごとの水理水頭分布をオーバーレイできる(CD内図面の一例)

    ・水文環境図の改正

    水文環境図のようなシリーズものでは、可能な限り同じ基準に基づいたコンテンツを作成する必要がありますが、その一方で、帯水層をはじめとする水文地質条件は地域によっては大きく異なることがあります。そこで、地下水研究グループでは水文環境図を発行するに当たり、国内外の水理地質図を調査し、水文環境図作成の編集指針をまとめました(町田ほか、2010)。編集指針策定後の水文環境図は、骨格がしっかりしたものとなり、操作性も向上しています。
    水文環境図No.6 山形盆地(2010)
    収録されている情報量が格段に多くなっています。






    レイヤー数の増加と共に操作性の向上もおこなっています。



    最新の水文環境図No.7「熊本地域」
    パソコンでは右のように表示されます。


  4. 将来の水文環境図

    最近、日本の地下水を取り巻く社会情勢は大きく変わろうとしています。従来、日本の地下水は私水として位置づけられてきましたが、水循環基本法(2014年4月2日公布)により、地下水は公共のものとしての位置づけがなされるとともに、河川水などと総合的かつ一体的に管理することが定められたのです。今後、地域の地下水を理解する必要性が急速に高まり、水文環境図が果たす役割はより大きくなるでしょう。地下水研究グループは、水文環境図をより我が国の地下水保全のために役立てることができるよう、努力を続けてまいります。