地層処分研究

 たとえ原子力発電を今後一切行わないとしても、これまでに利用した電力を作った核廃棄物を処分しなくてはなりません。
より安全に処分するために、地下水による汚染をさせないための研究を実施してます。

  1. 地下水シナリオ




    フランス・アンドレ研究所のイメージする地層処分場

     現在、社会的な関心を集めている原子力発電所から出た放射性廃棄物の有効な処分方法の一つとして、廃棄物を地下深部の地層中に閉じ込めてしまう地層処分が検討されている。

     地層処分では安全性の確保が最も重要な課題の一つして挙げられており、廃棄物に直接影響を及ぼす可能性のある地下水の性質や流動状況の把握を実施している。我が国においては、北海道の幌延において堆積岩を対象とした研究が、岐阜県の瑞浪においては結晶質岩を対象とした研究が実施されており、産総研は幌延において、堆積岩を対象とした地質のさらに沿岸域における地下水影響を勘案したプロジェクトを実施している。これは、我が国の原子力発電所がすべて沿岸域に立地していることに起因している。実際には、海陸を貫通した探査技術の開発や、地下1200mに達するボーリングを行うことで、深部地下水環境や地質環境を把握することを目的としている。

  2. 幌延(ほろのべ)における産総研沿岸域研究のあゆみ




     図は、5年間のプロジェクト研究が開始されてからの成果をまとめたものである。上段左は開始当時の文献研究のまとめであり、深部核種の拡散に寄与する地下水の上向き流動は、断層に沿った流れや塩淡境界に沿った流れであると判明した。このため、断層や地質構造を評価するために物理探査を実施し、一方で塩淡境界を貫くボーリングを実施して地下水環境を把握すべきと考えた。物理探査研究において、陸域と海域それぞれでは探査技術がすでに確立しているものの、船の入れない浅海域での技術がなく陸域から海域までを接合する地震探査や電磁探査の技術を開発する必要があった。これらを克服し、本研究では物理探査において海陸接合を行えるようになった。その結果得られたモデルが上段まん中のものであり、塩淡境界を貫くボーリング位置などを的確に示すことができた。さらに、上段右に示すように沿岸7kmの沖合まで海底下に淡水領域が存在することが電磁探査によって明らかにされた。この技術は世界で初めてのものであり、勿論この発見も世界初のものであった。 モデル図に示した海岸線から300mの陸地において、1200mのボーリング調査を実施している。全層にわたり地質サンプルの採取を実施し、地質の不撹乱サンプルからは圧縮法やpF値の異なる採水法を用いて水分特性の異なる試料を得た。この結果、海水準変動や地形変化のような圧力分布が異なる状況に応じた地下水流動解析を高精度に実施することができるようになった。また、綿密な水質分析や同位体組成測定を実施したことにより、深部までの地下水のヒストリーを考察することができた。これによれば、表層部の流動性地下水と現生の海水とが作る塩淡境界の下には、流動性地下水域、混合域、拡散域、停滞域の順で地下水が存在しており、さらに下位に石油や天然ガスの資源領域が存在することが示唆された。また、これらを評価するには塩素(Cl)と二重水素(D)が有効なファクターであることも明らかになった。図の下段の右にあるように、幌延沿岸域に限って言えば、沿岸海域には7kmの沖まで海底下に淡水地下水が存在しており、これが氷期の海水準低下を原因としていることが解析的に示された。すなわち、幌延沿岸海域(例えば2km沖で500m深)には70万年以上前の地下水が腑存している可能性が大きいことも分かった。このような超長期間安定的に存在する地下水領域をデータベースや調査によって指摘できることは、放射性廃棄物の地層処分や二酸化炭素の地中貯留に大きく貢献できると考える。さらに、深部地下においては、先に挙げた地下水の区分(水理境界)が地質境界と微妙にずれて存在することも興味深い。地質や断層による天然バリアは地震などで変動する可能性があるが、地下水の水理境界は物理則などで構成されているため、地震等での変動を受けても再生するものであり、天然バリアとしての効果は抜群であると言える。
(文責 地層処分研究PL 丸井敦尚)