National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST)

住所:つくば市東1-1-1 つくばセンター中央事業所 7群

国立研究開発法人産業技術総合研究所
地圏資源環境研究部門
CO2地中貯留研究グループ

住 所

〒305-8567
茨城県つくば市東1-1-1 つくばセンター中央事業所7群

研究内容

弾性波探査補完モニタリング技術の開発

重力、自然電位、AE(Acoustic Emission)などの多面的なモニタリング技術をCO2地中貯留に適用し、 反射法などの弾性波探査を補完するモニタリング技術を構築することで、長期的なモニタリングコストを低減させることを目指しています。
特に、重力モニタリングに関しては、現在CO2地中貯留の大規模実証試験の行われている苫小牧の観測点において超伝導重力計による2年以上の観測を成功させ、 これまでの測地研究等で想定されなかった海岸近傍環境において当該重力計の使用が可能であることを実証しました。
また、取得したデータに対してノイズ等の評価を行い、数μGal のトレンド成分の検出にも成功しています。

最適モデリング技術の開発

数値シミュレーションにより計算される温度、圧力、CO2飽和度等の変化量を、観測可能な物理量(理論計算値)に変換するプログラム(ポストプロセッサ)の開発・整備を行い、 長期CO2挙動予測の精度向上を図ることを目指しています。
開発したポストプロセッサの適用例として、遮蔽層が等価な多孔質媒体である場合と反射法等での検出が困難なフラクチャーを含む岩体である場合について、反射法の変動予測計算の比較を行いました。
その結果、フラクチャー岩体では多孔質媒体よりもCO2に対する遮蔽性能が低下する可能性が示されました。

ジオメカニクスモデリング手法の開発

産総研では、流体流動-岩石力学(ジオメカニクス)連成シミュレーション手法をわが国の地質条件に適した形にカスタマイズすることで、CO2圧入に伴う地層・岩盤の動的応答を事前に評価し、 その発生を避けることのできる圧入条件を導出することを目指しています。
これに関連して、当グループでは各種堆積岩についてせん断-透水実験を行い、変形に伴う浸透率の挙動が硬岩と軟岩で異なることを示すとともに、浸透率の構成則の構築を図っています。
ここで得られる知見は、数値シミュレーションの精度を支配する重要な要素の一つとなります。

キャップロックの遮蔽性能評価技術の開発

キャップロックの遮蔽性能を特徴づけるパラメータとしてスレッショルド圧(CO2が最初に岩石を貫通する際の毛管圧)と浸透率に注目し、 地下1,000 mの温度・圧力条件において、人工試料および岩石に対するCO2の浸透実験を実施しています。
特に、粒子のサイズ、サイズ分布、形状および鉱物組成を種々に変動させた焼結体を作製することで、スレッショルド圧-浸透率の相関性に及ぼす岩石の内部構造の影響を調べてきました。
結果として、両者の相関性に対しては、構成粒子のサイズ分布が均一か分散かが重要な因子であることが明らかとなっています。
このようなスレッショルド圧のばらつきが貯留層内でのCO2の流動に与える影響について、数値シミュレーションによる感度解析も行っています。

地化学反応速度の測定

CO2が地層水に溶解すると、酸性化により貯留層鉱物が溶解し、溶出した成分とCO2成分が結合することで最終的に炭酸塩鉱物が沈殿すると考えられています。
これらの鉱物の反応は非常に長い時間スケールで進行することが予想されますが、当グループでは、反応に伴う鉱物表面の形状変化をナノレベルで観測することにより、短時間に高精度の反応速度を得ることを試みています。
特に、CO2地中貯留のナチュラル・アナログとみなせる炭酸泉や炭酸水素塩泉の現場で反応を行うことで、可能な限り貯留層に近い条件下でのデータの取得に努めています。