表層土壌評価基本図の整備において、まず実施することは試料採取地点の選定です。地質や土壌の情報、河川流域特性などを総合的に考慮して、適切な評価が可能となる試料採取地点の選定を行っています。
試料採取では山地、丘陵地や平地などから、さまざまな土壌種の土壌を採取します。そして、現場において土壌に含まれる礫分や植生の情報、色について把握します。採取した試料は速やかに研究室に輸送して、各種分析に関わる前処理を行います。
前処理が終わった土壌試料は定められた方法により溶出試験などを実施します。そして研究室にあるICP(高周波誘導結合プラズマ)発光装置や卓上型蛍光X線装置などを用いてヒ素、鉛、カドミウムなどの重金属類の分析を行います。得られた含有量や溶出量といった土壌と重金属類に関わる情報を取りまとめてデータベース化し、表層土壌評価基本図において濃度分布として知ることができます。
表層土壌評価基本図では重金属類の濃度分布だけでなく、そこに居住した場合のリスクを知ることができるのも大きな特徴です。リスク評価では各種分析により得られた重金属類の情報をもとに、人が居住した場合にどれくらいの量の重金属類を平均的に摂取(曝露)するか推定し、その推定値からリスクの大小の評価を行います。
下の図は四国地域のクロムの含有量分布とリスク評価を実施したものです。クロム含有量は比較的濃度の高い(赤色表示)地域も認められますが、リスクが高い地域は認められず、健康影響が懸念される地域はないことが分かります。
このように表層土壌評価基本図は、われわれの健康な社会生活を持続する上でのリスクコミュニケーションツールとしての利用が可能です。また、わが国では鉄道などのインフラ整備や自然災害時の自然由来重金属類も法的な規制対象になっており、建設発生土や災害土砂に含まれる有害元素の管理や、人体への影響を判断する際の基盤情報としての活用も期待されます。
表層土壌評価基本図は,現在九州地方の調査を開始しており、最終的には全国の整備を目指しています。