国立研究開発法人
産業技術総合研究所
つくばセンター(中央第五)
■ウェブサイト | :機能化学研究部門 | https://unit.aist.go.jp/ischem/ |
---|---|---|
:高分子化学グループ | https://unit.aist.go.jp/ischem/ischem-plc/ | |
:化学材料評価グループ | https://unit.aist.go.jp/ischem/ischem-cme/ |
■ 所在地:
〒305-8565 茨城県つくば市東1-1-1 中央第5
機能化学研究部門
佐 藤 浩 昭
Sato Hiroaki
研究部門長
出身 | 神奈川県 |
---|
- 得意な材料評価技術
- 高分解能質量分析法を用いた分子構造解析
企業連携を進めるうえでのポイントは何ですか?
まずは、企業の方とコミュニケーションをとって、どこに課題があるのかをしっかりと見極めることです。私たちは、目の前の課題に対するご要望やご相談にそのまま応えるのではなく、その課題の本質や企業活動上の制約まできちんと見極めて解決策を提案することを心がけています。課題解決の提案は研究者としての知識経験と洞察力が試される知的ゲームだと思いますので、簡単ではありませんがとてもやりがいがあります。
水 門 潤 治
Mizukado Junji
副研究部門長
出身 | 東京(新潟生まれ、鹿児島育ち) |
---|
- 得意な材料評価技術
- 高分子材料の劣化メカニズム解析
材料診断プラットフォームについて教えて下さい。
材料診断プラットフォームでは、様々な先端分析機器を駆使して樹脂やゴム材料等の総合的な分析評価を行います。その結果に基づいて材料特性を左右する構造情報や不具合の根本的な要因を明らかにして、開発指針や解決策を企業にご提案することを目的とします。私たちはサプライチェーン上の様々な企業との連携実績をもとに、産業界が抱える共通課題を俯瞰できることが強みです。材料診断プラットフォームによる企業連携を通じて、我が国の産業競争力の向上に貢献したいと考えています。
高分子材料の劣化解析について教えて下さい。
樹脂やゴム材料の劣化メカニズムの解析には、高分子特有の複雑な分子構造や高次構造、添加剤などの配合を理解する必要があります。高分子材料が熱や光などにより劣化すると、構造や組成が変化するため分析や解析が更に難しくなります。材料診断プラットフォームには、ミクロの化学構造からマクロの物性まで幅広い分析評価技術と専門知識を持つ研究者が集まっていることが強みです。企業の皆様と密接に連携して分析・評価を行い、結果を踏まえた議論を通じて劣化に関する課題の解決を目指します。
高分子化学グループ
萩 原 英 昭
Hagihara Hideaki
研究グループ長
出身 | 長野県 |
---|
- 得意な材料評価技術
- 陽電子消滅寿命測定による自由体積の評価
- ポリプロピレンの合成・構造・物性など
高分子化学グループの特徴について教えて下さい。
私たちグループの一番の特徴は、メンバーが多彩な研究背景を持っていることです。分析のみを専門としていたのではなく、以前は新材料の開発を行っていた者も多く、それゆえチームで材料評価を行う際には、それぞれが全く違った視点から解析を行い、意見を交わし合います。企業の方がお持ちになった未解決課題でも、シナジー・チームワークで突破できると実感しています。
産総研の材料評価が持つ「強み」は何ですか。
産業用材料の課題を解決するためには、一歩踏み込んだ分析が必要です。ただ分析のデータを提供するだけでは、本当の意味での企業連携とは呼べません。例えば劣化解析であれば、分析データのみならずその因果関係を考察し、なぜそうなってしまったのかメカニズムを解明する。そして更に、今後適切な機能を発現させるためにはどのような指針で材料設計を行うべきか・・・に至るまでご相談にのるのが役割だと思っています。企業の研究開発や経営戦略に寄り添った形で私たちの技術を提供できれば、本望です。
大 石 晃 広
Oishi Akihiro
主任研究員
出身 | 静岡県 |
---|
- 得意な材料評価技術
- 各県とのネットワークを活用した材料評価
産総研のネットワークについて教えて下さい。
地域企業の支援には、何より地域に根ざした公設試との連携が必要です。公設の試験研究機関等(公設試)と産総研は、相互連携を通じた産業の発展を目的とする「産業技術連携推進会議(産技連)」を組織しており、私は長年、その中の高分子分科会で、公設試の方々と連携しての材料評価を行っています。各研究機関が枠を超えてタッグを組むことで、これまでにも多くの課題を解決し、新たなイノベーションを産んでいます。
産技連を通じた連携による、具体例を教えて下さい。
例えば、福井県の地場産業の防草シートに関する事例があります。福井県公設試内のイノベーション拠点「福井サイト」に持ち込まれた事案でしたが、物性評価は公設試、植物の生育に関しては大学、化学構造解析や劣化試験の妥当性検証は産総研つくば、と複数の機関が連携して解明に当たりました。その結果、敷設されていた実際のサンプルと、加速劣化した耐候性試験との比較により、実環境での耐久性との相関について知見が得られております。
金 山 直 樹
Kanayama Naoki
主任研究員
出身 | 富山県 |
---|
- 得意な材料評価技術
- 材料表面の物性・構造評価、分散特性評価
主に行っている材料評価技術について教えて下さい。
各種分光法や光散乱法、ナノ力学計測法を駆使して、様々な材料の表面構造や特性を評価する手法の開発に取り組んできました。評価対象とする材料は、高分子材料や金属ナノ粒子などの人工材料からDNAやタンパク質に代表される生体材料まで、幅広く取り扱っています。最近では、物質の質量を正確に測定することが可能な質量分析法を取り入れ、樹脂材料の微細構造を評価する技術開発にも取り組んでいます。
今までに解析を行った事例を教えて下さい。
ポリエステル樹脂の構造解析法の開発に取り組んでいます。最近では質量分析法をもとに、複数のモノマー成分から構成されるポリエステル鎖において、特定のモノマー成分がどのように分布しているのかを明らかにする手法を開発しました。ポリエステル樹脂のなかには、自然環境で分解する生分解性プラスチックとして近年注目を集めているものがあります。開発した解析技術は、このようなポリエステル樹脂が生分解が進行する過程で、どのような変化が生じて崩壊・分解にいたるのかを理解する一助となるものと期待しています。
武 仲 能 子
Takenaka Yoshiko
主任研究員
出身 | 三重県 |
---|
- 得意な材料評価技術
- 食感評価
- カプセル化による材料への高付加価値付与
主に行っている材料評価技術について教えて下さい。
主にレオメータのボール治具やトライボロジーセルを用いて、食感評価を行います。口腔内を模倣したセッティングで食感の異なるサンプルを測定することで、異なる食感の特徴をデータとして取り出すことができます。またカプセル化技術では、食品をはじめ日用品、化学素材、化粧品等、マイクロメートルからセンチメートルサイズのカプセル内に材料を閉じ込めることで、機能成分の隔離や徐放性の制御、液体を空気中に取り出す等の付加価値を材料に付与することができます。
どのような企業の方に、貢献できると思いますか。
特に食感評価や食材のカプセル化を通して、食品の付加価値を向上させたいと考えておられる企業の方に貢献できると思います。例えば、食感評価によって、データを通してある食品の特徴を他食品と差別化することができます。また例えば、液体調味料をカプセルに閉じ込めることで、箸でつまめる調味料を作ることもできます。食感評価やカプセル化によってどのような価値が付与できる可能性があるか、といったご相談も歓迎します。お持ちの材料の特徴を見極めながら、きめ細かい支援を心がけています。
渡 邉 亮 太
Watanabe Ryota
主任研究員
出身 | 北海道 |
---|
- 得意な材料評価技術
- 複合材料界面の構造解析(分光法、質量分析技術、データマイニング)
主に行っている材料評価技術について教えて下さい。
高分子材料の機能発現や劣化に関する「なぜ」を化学構造の視点から解明するべく、分析技術の構築を行っています。材料の物性は界面構造に左右されることが多く、その解析は非常に重要なポイントとなりますが、従来の分析技術では解析が困難である場合があります。私たちは顕微分光や質量分析等の分析技術、そこから得られたスペクトルの解析に独自のデータ解析技術を組み合わせる、画期的な界面構造の解析技術を開発しています。
特に注目している材料がありますか。
以前は無機材料の合成を専門として研究していたこともあり、有機・無機2つの材料が複合した高分子複合材料に着目しています。代表的な複合材料として、繊維強化樹脂などが挙げられますが、高分子、無機材料それぞれを強化するだけでは機能は適切に発現しません。無機材料と高分子材料が接触する界面を正しく接着させることが非常に重要になります。高分子の専門家としての視点とともに、無機材料の視点からの解析も行うことができるのが私の強みだと思っています。
都 甲 梓
Togo Azusa
研究員
出身 | 佐賀県 |
---|
- 得意な材料評価技術
- X線回折や陽電子消滅寿命測定法による構造評価
主に行っている材料評価技術について教えて下さい。
主に、バイオマス資源から合成されたバイオマスプラスチックや、生分解性プラスチックについて研究を行っています。特に、高分子の高次構造とプラスチック材料の生分解速度や劣化速度との相関を中心に調べており、生分解速度制御技術の開発を試みています。X線回折では結晶化度や結晶構造、結晶配向度を、陽電子消滅寿命測定法では高分子の自由体積サイズを測定し、各種物性や機能性との相関解明を目指しています。
どのような企業の方に、貢献できると思いますか。
現在、マイクロプラスチックによる海洋汚染問題や石油資源の枯渇問題、地球温暖化問題など、多くの環境問題がプラスチックをとりまいています。このような背景から、現在の汎用プラスチックからバイオマスプラスチックや生分解性プラスチックへの転換を検討されている企業の方もいらっしゃると思います。私たちのグループで行っているバイオマスプラスチックや生分解性プラスチックの評価技術が、少しでもそういった企業の皆さんのお役に立てたら嬉しいです。
小 澤 大 樹
Ozawa Taiki
研究員
出身 | 茨城県 |
---|
- 得意な材料評価技術
- 質量分析法、分光法、データインフォマティクスによる構造解析
主に行っている材料評価技術について教えて下さい。
産業用のプラスチック・ゴム材料は、構造の異なるプラスチック材料、添加剤、無機フィラー等が用途に応じて複雑にブレンドされているため、従来の分析手法では、評価が困難である場合があります。私たちは、こうした産業用の材料の機能発現や劣化をもたらす分子構造の変化を解析・評価する分析技術の構築に取り組んでいます。例えば私が開発した、発生ガス-高分解能質量分析法とデータインフォマティクスを組み合わせた手法では、複合材料中に含まれる劣化成分の精密分子構造と存在比を同時に評価することができます。
どのような企業の方に、貢献できると思いますか。
プラスチック・ゴム材料を取り扱う材料メーカーの皆様に幅広く貢献できると考えています。私たちの分析技術をご活用いただくことで、材料の機能発現や劣化の要因となるメカニズムを化学構造の視点で解釈することが可能になります。高機能・高耐久性の材料開発の迅速化や、優れた製品であることの保証に役立ちます。ぜひお気軽にご相談ください。
化学材料評価グループ
新 澤 英 之
Shinzawa Hideyuki
研究グループ長
出身 | 大阪府 |
---|
- 得意な材料評価技術
- 分光法、データインフォマティクス
化学材料評価グループの特徴について教えて下さい。
化学材料評価グループでは、各種分光法や質量分析法等により得られる分析ビッグデータの解析に、人工知能・機械学習等のデータインフォマティクス技術を導入することにより、材料の劣化度や耐久性を高精度に予測する「材料診断インフォマティクス技術」を研究の柱としています。また、分析・評価技術を活用した企業連携にも力を入れており、多数の共同研究や技術コンサルティングを実施中です。
主に行っている材料評価技術について教えて下さい。
近赤外光や赤外光を使ってプラスチックの劣化状態を非破壊的に分析する技術の開発を行っています。プラスチックは近赤外や赤外の光を吸収しますが、劣化すると吸収の仕方が変化します。この変化を機械学習や人工知能と呼ばれる データ解析技術を使って詳しく調べることで、最終的には光を当てるだけで非破壊的にプラスチックの劣化状態を診断することができます。このようなプラスチックの劣化を簡便に調べる方法は、リサイクルを進める上では極めて有益な技術であり、現在はプラスチックを取り扱う複数の企業への技術提供を進めています。
滝 澤 賢 二
Takizawa Kenji
主任研究員
出身 | 群馬県 |
---|
- 得意な材料評価技術
- 低燃焼性の評価・評価技術開発
- 国際標準化(ISO)委員 高圧ガス保安法関連委員
主に行っている材料評価技術について教えて下さい。
冷凍空調機器の冷媒等に使用される、フルオロオレフィンなどのフロン代替物の燃焼性評価や、新たな燃焼性評価技術の開発を行っています。フロンガスの規制・全廃に応じて利用されていた代替ガスが温暖化効果を理由に削減対象となったことで、さらなるフロン代替物が必要とされるようになりました。しかし、環境に優しくかつ燃焼危険性の低い代替物を開発する際、とりわけ低燃焼性の評価は難しかったため、微小重力下で高精度に評価を行うことができる評価装置を開発しました。
具体的な事例について教えて下さい。
海外冷媒メーカーから、新しく開発した冷媒候補化合物の燃焼性について、微弱すぎて定量評価ができないという相談を受けました。火炎が微弱で浮力で浮かび上がり消えてしまうことから、微小重力下で評価を行う装置を作製。無浮力、非接触な自律的に伝播する火炎を得ることで、燃焼性の評価を行うことができました。現在、この化合物は環境性と安全性に優れた冷媒として、世界のカーエアコンで実用化されています。
山 根 祥 吾
Yamane Shogo
主任研究員
出身 | 栃木県 |
---|
- 得意な材料評価技術
- 質量分析、分光分析等を活用した高分子材料の劣化解析
主に行っている材料評価技術について教えて下さい。
分子の大きさを正確に知ることができる質量分析と、材料に光を当てることでその特性を明らかにする分光分析を組み合わせることで、複雑に絡み合う現象を相互的に捉え、高分子材料の劣化解析を行っています。熱、光、薬品等多様な条件にさらされる材料の化学構造を解析し、どのようなメカニズムで劣化が起こっているのかを解明することができれば、高耐久材料の開発に貢献することができます。
具体的な事例について教えて下さい。
非常に耐久性が高く一般的な条件下ではほとんど劣化しないエンプラについて、劣化の過程を知りたいという事例がありました。そこで、非常に強い光を照射させて解析を行い、劣化を示すマーカーを検出することに成功しました。材料中で実際に起こっている現象を考察し、適切な材料設計をすることが、さらなる高耐久材料の開発へとつながると考えています。高耐久プラスチックの開発は、環境意識の高まりとともにより社会的な意味を持つようになりました。我が子が生きる未来のための研究として目標をもって解析を行っています。
部門長として何を心がけていますか。
研究は「一人一人」が主人公です。部門メンバー皆に高いモチベーションで従事できる研究環境を提供するのが私の役割と考えています。また、社会の要請に応えられる適切な研究テーマを考える意識付けや、部門メンバーを外部機関へ派遣して視野を広げるなど、部門内の人材育成にも力を入れています。中国センターおよびつくばセンター両拠点の部門メンバーが緊密な一体感を持ち、そして、研究者個人の能力を高度に結集したチームでの突破力を駆使することで、企業連携を通じた社会課題の解決を最重要テーマとして取り組みます。