ポリカーボネート樹脂の高温多湿環境下における劣化挙動把握へのMALDI-TOFMSの適用
事例No.
HW-0018
概要
ポリカーボネート樹脂は、高温多湿環境下において加水分解を受けやすいことが知られているが、不具合事象における劣化状態や挙動の把握は容易ではない。ここでは、MALDI-TOFMSにより、実使用に近い負荷条件における長期の環境試験により、いかに早期の劣化挙動が検出できるか検討した。
お困りごと・要望
ポリカーボネート樹脂の、高温多湿環境下における劣化挙動が知りたい。
事例提供機関
サンプル
分析方法
MALDI-TOFMS(装置:JMS-S3000(日本電子(株)))
《分析条件》
マトリックス:DCTB、カチオン化剤:Na TFA、溶媒:THF、分析質量範囲: m/z 1300ー5100、ディレイタイム:400 ns、積算回数:約200回
《分析用試料作製方法》
・試験片を切断し、中心部付近から約1 mg を採集し、THFに溶解させて1 mg/mL溶液とする。
・同量のDCTB溶液(100 mg/mL)、Na TFA溶液(1 mg/mL)と混合し、測定用プレートにスポッティングし、乾固後に装置に導入する。
《定性方法》
・観測されたピークの質量数から分子の末端構造を推定し、分子構造(①両端封止、②片端水酸基、③両端水酸基、④円環型)を割り当てた(図1)。
《定量方法》
・m/z=3,000 付近における加水分解挙動に影響する①、②、③各分子構造のピーク高さから存在比率を算出し、組成比として経時変化をプロットした(図2、図3)。
分析結果
・80℃-90%RH雰囲気下、1ヵ月保持したMALDI-TOFMSスペクトルにおいて、①両端封止構造の存在比が減少し、③両端水酸基構造が増加したことから、加水分解劣化が示唆された(図2)。
・より穏和な60℃-70%RH雰囲気下、4ヵ月経過後のスペクトルにおいて、①両端封止構造の比率減少など、加水分解の兆候を示唆する結果が得られた(図3)。
・さらに穏和な50℃-98%RH雰囲気下では、4ヵ月経過後もスペクトルに加水分解の兆候は確認できなかった。
関連装置
MALDI-TOFMS(日本電子(株) JMS-S3000)
適用可能な材料
ポリカーボネート樹脂が対象であるが、分子構造上、加水分解劣化が生じるおそれのある樹脂(ポリエステルなど)に適用可能性がある。
分析事例討論会
R7年度 分析事例討論会



