エポキシ樹脂-シリカナノコンポジットコートによるポリカーボネートの劣化耐久性の向上

事例No.

AT-0024

概要

ポリカーボネート(PC)は優れた衝撃耐性や高透明性を有したエンジニアリングプラスチックであるが、紫外線劣化による黄変や表面が傷つき易いといった欠点がある。本研究では、PC表面と強固に接着するエポキシ樹脂-シリカナノコンポジットの構造解析、および、硬度評価を行うとともに、PCコートによる傷つき防止効果やUV照射による劣化抑制効果と、その機能発現メカニズムについて検証した。

お困りごと・要望

エポキシ樹脂とシリカからなるナノコンポジットの構造を知りたい。PCにコートした際の効果とそのメカニズムを知りたい。

事例提供機関

サンプル

エポキシ樹脂-シリカナノコンポジット、ならびに、ナノコンポジットコートPC

分析方法

無機有機ナノコンポジットコート剤は、TMOS (多摩化学工業製)、3-Aminopropyltriethoxysilane (APTES, 信越化学工業製)、Hydrogenated bisphenol A diglycidyl ether (ナガセケムテックス) 等を用いて調製した。PC検体は、PC (PC-1600、タキロンシーアイ製) にバーコーターNo.16を用いてコート剤を塗工し、20 ℃70%RHで7日以上硬化し作製した。接着性測定は、クロスカット法により行った。表面硬度測定は、島津製作所製ダイナミック超微小硬度計DUH-211を用いて行った。固体29Si-NMR測定は、Bruker製Ultrashield 400 WB Plusを用いて行った。顕微IR測定は、Bruker製Hyperion3000を用いて、透過モードで行った。UV照射処理は、スガ試験機製スーパーキセノンウェザーメーターMV-SX-2Dを用いて、放射照度60 W/m2 (波長300~400 nm) 、BP温度63 ℃、湿度50 %RH、照射日数24日で行った。

分析結果

29Si-NMR測定により、ケイ素の結合状態を解析したところ、Si源の加水分解・縮合の進行が確認され、ナノコンポジット中にシリカが生成したことを確認した(図1)。コートの有無による、UV照射への劣化耐久性について、顕微赤外分光法と二次元相関解析を組み合わせた方法により検証した。PC中の劣化生成物の分布状態を確認したところ、コート無しPCでは、UV照射により、PCの表面近傍に劣化成分が顕著に発生していることに加え、内部にも劣化成分がわずかに発生していることが示された。コート有りPCでは、コート無しPCと比べ、表面近傍と内部ともに劣化成分の濃度が低下していることが明らかとなった(図2)。以上の結果から、コート層による表面処理により、シリカ形成によるUV吸収効果が発現し、UV照射によるPCの構造変化を効果的に抑制したものと考えられる。二次元相関マップの活用により、劣化状態を深さ方向で視覚的に捉えることが可能であることを見出した。

関連装置

NMR(Bruker ULTRASHIELD 400WB PLUS)
顕微赤外分光法(Bruker Hyperion 3000 microscope)

コメント

複合材料の劣化構造解析に関するご相談をお待ちしています。
参考文献:Y. Nakai, Y. Teruuchi, M. Takeuchi, A. Nagatani, A. Oishi, H. Hagihara, R. Watanabe, Polym. Degrad. Stab. 238 (2025) 11329.

適用可能な材料

高分子複合材料、繊維強化樹脂

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R7年度 分析事例討論会