顕微赤外分光法による複合材料の界面構造解析

事例No.

AT-0010

概要

高機能複合材料の材料設計において、高分子とフィラー界面の構造の解析、および、界面構造-機能相関の解明が重要である。本事例発表では、顕微赤外分光法と独自データ解析法を活用した、複合材料界面の構造を解析する技術について紹介する。

お困りごと・要望

複合材料の界面相互作用や添加剤分布を調べたい。

事例提供機関

サンプル

高分子複合材料:無水マレイン酸変性ポリプロピレン(MAPP)とシリカフィラーを溶融混錬して作製

分析方法

顕微赤外分光法により、測定対象を数μmの微小領域に分割し、各領域でのスペクトル測定を行う。二次元相関法をスペクトル解析に適用し、注目する2波数間での吸光度変化の相関値をマッピングすることで、高分子-フィラー複合材料の異種相界面で形成する相互作用に関する情報を検出する。

分析結果

赤外吸収スペクトル中、1713 cm-1付近にMAPP中の無水マレイン酸変性基に由来するC=O伸縮の吸収ピークが観測された。MAPP/シリカの赤外吸収スペクトルを対象として二次元相関解析したところ、1713 cm-1と1695 cm-1において、明確な交差ピークが現われた。この交差ピークは、2波数間で吸光度変化が異なっている場合に発生することから、顕微共視野内で1713 cm-1と1695 cm-1に赤外吸収を示す2種のC=O成分が存在することを示す。ここで、1695 cm-1のピークは、C=OがHO-Siとの水素結合性の相互作用を形成した時の低波数シフトに起因する。顕微鏡視野内の全赤外吸収スペクトルを対象として、二次元相関マップを作成した。MAPP/シリカの界面において、C=OとHO-Si間の相互作用形成の境界領域を示すdisrelation値が増加した。これは、PPMA/シリカの界面での相互作用形成を示している。

関連装置

コメント

複合材料の機能発現のカギとなる界面相互作用の解析技術です。品質保証や、機能発現メカニズムの解明などをご支援したいと思いますので、お声がけください。

適用可能な材料

繊維強化樹脂などのマイクロスケールのフィラーが分散した複合材料

分析事例討論会

R5年度 分析事例討論会