ゲルNMR法を用いた難溶解性ポリマーの化学構造解析

事例No.

AC-0049

概要

溶液NMRは化合物の化学構造解析に広く使われている分析法であるが、サンプルがNMR溶媒に溶解しない場合、感度と分解能が著しく低下する。一方で、ゲルNMR法は、適切なサンプル前処理を行うことで、難溶性化合物をNMR溶媒中に安定的に分散させ、溶液NMR並みの感度と分解能を実現させる手法である。ゲルNMR法は難溶解性ポリマーの化学構造解析に利用可能である。

お困りごと・要望

NMR溶媒に溶解しないポリマー材料の分子構造を調べたい。

事例提供機関

サンプル

架橋アクリルポリマー

分析方法

架橋PMMAを凍結粉砕により微細化、NMR溶媒中に高分散させたNMRサンプルを1H NMR、13C NMR、および13C-1H HSQC 溶液NMR測定に供し、スペクトルを取得した。

分析結果

架橋PMMAの分散溶媒としてクロロホルム、トルエン、テトラクロロエタンを検討した結果、テトラクロロエタンに分散させた際に最も分解能の高いNMRスペクトルが得られた。重水素化テトラクロロエタンに分散させた架橋PMMAのHSQC NMRスペクトルでは、主鎖に由来する交差ピークに加えて、架橋ユニット(EGDM残基)に由来する交差ピークが検出され、架橋部位を確認した。重合条件によっては未反応のEGDM残基に由来する交差ピークが検出される架橋体も確認しており、不完全な網目状構造が示唆された。

関連装置

溶液・固体核磁気共鳴装置(ブルカージャパン(株)Avance NEO 600、アジレントテクノロジー㈱400 MHz DD2 NMR)
凍結粉砕機(日本分析工業㈱ JFC-399)

コメント

本手法はサンプル調製工程がポイントであり、汎用のNMR装置でも行うことのできる技術です。

適用可能な材料

各種汎用樹脂(アクリル樹脂、エポキシ樹脂など)、エンジニアリングプラスチック、ゴム

分析事例討論会

R6年度 分析事例討論会