ゴム複合体の超高分解能観察・元素マッピングによる添加物の分散性評価

事例No.

AC-0045

概要

ナノセルロースとシリカで補強された天然ゴムを薄片化し、超高分解能の冷陰極電界放出形走査型電子顕微鏡(cold-FE-SEM)を用いて、走査型透過電子顕微鏡 (STEM)モードで観察すると共に、ウィンドウレスタイプで超高感度のエネルギー分散型X線分光法(EDS)検出器で添加物の分散状態を評価した。

お困りごと・要望

ナノセルロースで補強した試作サンプルの補強メカニズムを理解するため、ゴム複合体中におけるナノセルロースの分散状態を把握したい。
試作サンプルにはナノセルロース以外にも補強材としてシリカを添加していることに加え、加硫剤として複数の添加物が含まれているが、ナノセルロースと他の添加物とを見分けられる電子顕微鏡写真を取得したい。
一般的なSEMを用いた破断面の観察では、微分散したフィラーの分散状態を評価することができなかったが、前処理や使用する顕微鏡を検討することで、微分散したフィラーの観察像を捉えられるかどうか検討したい。

事例提供機関

分析方法

薄片化したサンプルのSTEMモードによるSEM観察、およびEDS分析による元素マッピング

分析結果

ゴムサンプルを薄片化してSTEMモードによる透過像を取得したところ、通常の表面像では観察できなかった母材の天然ゴムと電子密度の異なるフィラー類の分散状態が把握可能なFE-SEM像が得られた。また、ウィンドウレスタイプのEDS検出器で評価したところ、ナノセルロース、シリカ、その他の添加物の分散状態が把握可能な元素マッピング像が得られた。

関連装置

超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡 SU9000((株)日立ハイテク)
ウインドウレスEDS/EDX検出器 Ultim Extreme(オックスフォード・インストゥルメンツ(株))
ウルトラミクロトーム Leica EM UC7(ライカマイクロシステムズ(株))

コメント

低加速電圧で超高分解能の観察が可能なFE-SEMであるため、電子線照射に弱い有機系材料を対象にした形態・形状観察が可能です。
また、ウルトラミクロトームを用いて適切な薄片を作成することで、一般的な表面像だけでなく透過像の観察も可能です。
付属しているEDS検出器はウィンドウレスタイプで感度が高いため、軽元素から精度の高い元素マッピングを行うこともできます。

適用可能な材料

ゴム材料、樹脂材料