パルスNMRによる材料特性評価

事例No.

AC-0020

概要

パルスNMRを用いた緩和時間測定から、物質の分子レベルでの混合や架橋度合い、劣化による分子構造変化を評価。成分割合も算出可能。

お困りごと・要望

物質の混合・架橋度合いを評価したい。

事例提供機関

サンプル

ゴム、樹脂、分散体などを専用の試料管に入れ測定を行った。高分解能NMRでは必須の、微細化や重水素(D)化溶媒への溶解といった試料の前処理は必要ない。

分析方法

1. イソプレンゴムの加硫前後の緩和挙動の変化をスピンエコー法で測定し、横緩和時間T2を算出した。
2. セルロースナノファイバーの水分散液について、冷蔵庫中で保管したサンプル、冷凍庫中で一度凍結させたサンプル、液体窒素で一度急速冷凍したサンプルのT2をCPMG法で測定した。

分析結果

1. 加硫イソプレンゴムは未加硫ゴムと比較してT2が短くなっており、分子運動性が低下していた。これは、加硫処理によって弾性率が向上したことに関係している。架橋度合いの評価や架橋/非架橋部位の割合算出へ応用可能である。
2. 水の分子運動性を観測することで、分散液中のナノファイバーの凝集を評価した。分散液中の水分子は、分散体と強く相互作用している結合水とバルクで存在している自由水に別れる。凍結後の水分散液では横緩和時間T2が長くなった。これは、凍結中にセルロースナノファイバー同士の凝集が起こり、分子運動性の低い結合水が減少したためと考えられる。この手法を応用して、分散物の表面積を評価することも可能である。

関連装置

コメント

この分析は、サンプルの形状による制限が少ないこと、広い温度範囲に対応していること(minispec mq20では-100℃ - 200℃)に特徴がある。サンプル全体の分子運動性を測定することで、樹脂やゴムにおける架橋やフィラーの影響、熱による結晶化、溶液中での分散の評価等を行うことが可能である。研究開発はもとより、製品の品質管理にも有用な分析法である。

適用可能な材料

樹脂・ゴムサンプル、分散液等