溶液NMRによる難溶解性サンプルの精密分子構造解析

事例No.

AC-0017

概要

微細化等の前処理と溶媒選択により、観測したい構造の運動性を向上させ、溶液NMRの専用のバルスシーケンスで精密二次元スペクトルを測定。誘導体の置換位置も解析可能。

お困りごと・要望

難溶解性サンプルを溶液NMRを用いて精密分子構造を解析したい。

事例提供機関

サンプル

溶液NMRでは、通常、NMR溶媒に不溶の試料は分析することができない。難溶性試料でも、前処理条件を工夫することで精密構造解析を可能にする改良型gel-state法を開発した。

分析方法

NMR溶媒に不溶な固体試料の可塑性に合わせた粉砕処理を行い、凝集構造を微細化した。その後、試料の親水・疎水性に合わせた溶媒中で膨潤処理を行い、分析を行いたい構造の分子運動性を向上させた。その後、溶液NMRの各種パルスシークエンスを用いて解析を行った。

分析結果

1. 市販セルロース(実際にはセルロースとキシランの混合物)のアセチル化物をHSQC-NMR測定に供し、アセチル基の導入位置を同定した。その結果をもとに、組成物の反応性について議論した。
2. 溶媒に溶けないため分析が不可能と考えられていた有機顔料の高分解能NMRスペクトル取得に成功した。これにより、分子間相互作用を議論するためのパルスシークエンス(2D NOESYや緩和時間測定)を適用可能になり、分散剤による顔料分散メカニズムについて分子レベルでの研究が可能になった。
3. セルロース繊維補強ポリプロピレンでは、相容化剤としてマレイン酸ポリプロピレンを添加すると強度が向上することが知られている。その理由として提唱されていたマレイン酸残基とセルロース間のエステル結合の存在を初めて分光学的に証明した。

関連装置

コメント

溶液NMRは、基本的に、試料が完全に溶解しないと感度と分解能が著しく低下する。しかしながら、適切な前処理と溶媒、パルスシークエンスを組み合わせることで、溶けないサンプルでも溶液NMR並みの化学構造解析が可能になる。適用可能な試料は、木粉、ゴム、オレフィン系ポリマー、顔料など芳香族化合物と幅広い。

適用可能な材料

オレフィン等ポリマー