集積マイクロシステム研究センター
MEMS集積化プロセス研究チーム
ウェハレベルでの一括接合・実装技術と、大面積に微細な3次元構造を作製するためのナノインプリント技術を中心に、微細加工プロセスの研究開発を進めています。これにより、集積化MEMSデバイスの低コスト化をすすめ、様々な応用分野への展開を図ります。
チームメンバー
研究課題

(a) ウエハレベルパッケージング

(b) Ne高速原子ビームを用いた表面平滑化により
接合強度の向上と接合界面のひずみの大幅な低減
表面活性化常温接合によるウェハレベル実装技術の開発
表面活性化常温接合はMEMS(Micro Electro Mechanical Systems) をはじめ様々なデバイスのウェハレベルでのパッケージング(図(a)参照)への適用が期待されています。
このようなウェハの直接接合では、接合面に原子レベルの平滑性が求められます。そのため、MEMSやICの製造プロセスによりウェハの表面粗さが悪化してしまうと、接合部のひずみが大きくなりマイクロデバイスに悪影響を及ぼしたり、あるいは接合すらできないという課題があります。
これに対し、Ne高速原子ビームを用いることで、表面を荒らすことなく表面活性化を行う技術を開発しました。さらに、Neビームには接合面を原子レベルで平滑化する効果も確認しており、このような特性を利用して実用に耐えうるパッケージング技術の開発を進めています(図(b)参照)。

(a) SOI基板とSi基板を真空封止した際の
ダイヤフラム構造断面

(b) 真空気密封止された基板
中央部の凹んでいる部分の内部は真空状態
ウェハレベル接合による気密封止技術の開発
ジャイロセンサーのような共振型デバイスや絶対圧センサーなど、多くのMEMSデバイスで真空気密封止が要求されています。表面活性化常温接合をはじめ各種の低温接合プロセスにより、MEMSなどの低ダメージ気密封止技術の開発を進めています。図はSi基板上に金メッキ枠を形成して、金同士の常温接合により真空封止したサンプルです。ダイヤフラム部の凹みによりキャビティ内部が真空に封止されていることが確認できます。

(a) 気泡欠陥防止ナノインプリント技術

(b) 凝縮性ガス雰囲気下でナノインプリントした基盤とそのパターン形状
凝縮性ガスを利用した超高速光ナノインプリントプロセスの開発
光硬化樹脂液に石英モールドを押しつけ、紫外光により樹脂を硬化させる光ナノインプリントは、低コストのナノパターン形成技術として注目されています。しかしながら、大気バブルのかみ込みによる気泡欠陥の問題から、従来は真空環境でナノインプリントを行う必要があり、ランニングコストとプロセス時間が課題となっていました。
開発した本手法では、モールドと光硬化樹脂の間の空間に凝縮性ガスを吹き付け、空気を置換することにより気泡欠陥を防止することが可能です。さらに、凝縮性ガスを用いることにより離型性が向上し樹脂の引き剥がれ欠陥等の低減効果があるほか、モールドへの樹脂の充填速度を従来に比べて10倍以上高速化できることがわかっており、生産性を大幅に向上させることが可能です。

(a) 残留膜厚の均一性をシミュレーション

(b) 液中アライメントシステム開発
高精度ナノインプリントリソグラフィ技術の開発(残留膜厚の均一化手法・液中アライメントシステム)
ナノインプリントによる高解像度で低コストのリソグラフィを実現するため、樹脂の残留膜厚の均一性やモールドへの樹脂充填挙動等に関する研究を行っています。その中で開発した容積均一化モールドは、モールドの容積を制御して作り込むことにより、パターン密度が異なる場合でも残留膜の厚みを均一化できます。実際にモールド作製手法を確立し、実験実証及びシミュレーションによって最適化を行っています。
また、多くのデバイス作製においては高精度の位置合わせが必要です。このため、ナノインプリントプロセス用の低コストで高精度なアライメントシステムの開発を行っています。モールドを樹脂に接触させながら位置合わせを行うことができる液中アライメントシステムを搭載したナノインプリント装置を開発し、位置合わせ精度200nm以下を実証しました。

(a) 熱/光インプリントによるポリイミドの
低温微細成型(成形温度:100℃)

(b) 銅めっきおよびCMP技術を
併用した銅配線の形成
耐熱絶縁樹脂(ポリイミド)の低温微細成形技術
各種電子デバイスの小型化及び高性能化に対する要求の増大に伴い、信号高速化、高密度配線化、低消費電力化に対応できる三次元実装技術が注目されています。
本研究チームではナノインプリント技術を活用した微細な高密度配線の製造技術の研究を行っています。 その一例として、耐熱絶縁材料であるポリイミドの低温微細成形技術を構築し、従来は困難であった高精度なサブミクロンパターンの形成に成功しました(図a)。
また、この技術の応用例として、8インチウエハ上に形成したポリイミドパターンにダマシンプロセス(銅めっき、CMP)を行い、3μm幅の銅/ポリイミド配線の作製に成功しました(図b)。
(作成日:2018/4/9)
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