液体金属を用いた電子素子実装による高性能・高伸縮な電子デバイス

ー 硬く高性能な電子素子を用いた伸縮電子デバイス ー

研究のねらい

本研究では、硬く高性能な表面実装素子と伸縮可能な金属配線を組み合わせることで,高伸縮・高性能な電子デバイスの実現を目指しました。 従来の伸縮デバイスはすべての構成要素を有機材料などの柔軟素材で構成するため、電気特性が劣る課題がありました。 そこで、硬く高性能な電子素子を伸縮基板上の伸縮金属配線に実装する際の電気的接合部に液体金属を用いることを提案しました。 液体金属の接触抵抗の計測手法を新規構築し、接触抵抗要因の解明や低減手法の提案を行いました。 さらに液体金属自身の伸縮耐性の評価から,液体金属実装がデバイス全体の性能へ及ぼす影響の調査まで行いました。 従来は配線材料やセンサ素子として用いられていた液体金属が、接続材としても優れた特性を発揮することを明らかにすることで、 柔軟電子実装の新たな可能性を拓くことを狙いました。

主な成果

液体金属を用いた電子素子実装法により、高伸縮性と高性能を兼ね備えた電子デバイスを実現しました。
従来法では測定困難だった液体金属と金属配線間の接触抵抗に対し、電流密度分布を考慮した新しい計測手法を構築し、 酸化膜破壊や合金化による接触抵抗の低減(1/10)を定量的に示しました。
加えて、液体金属を実装に応用することで、200%以上の高伸縮性と安定した電気接続を両立した素子実装構造を実証しました。
本研究の成果は、IF>10の国際論文誌に2件、国際会議に12件採択され、6件の受賞を得ました。
また、JST ACT-X(採択率31%)への代表採択や企業との技術相談など、学術的・社会的に高い評価を受けています。

電流密度分布を考慮した接触抵抗計測手法

電気的接続材としての液体金属の高伸縮耐性

液体金属実装による200%伸縮可能なLEDアレイ

用途・展開先

医療・スポーツ・ロボティクス
(皮膚貼付型生体センサ、曲面対応ロボット皮膚、ウェアラブル無線給電システム、フレキシブルLEDディスプレイなど)

成果リスト

1) T. Sato et al., ACS Appl. Mater. Interfaces, 13, 18247-18254 (2021).
2) N. Morita et. al. Sensors, 23, 7658 (2023),
3)産経新聞 第37回先端技術大賞, フジテレビジョン賞, 2024.
4)日本機械学会 マイクロ・ナノ工学部門 若手優秀講演表彰, 2023.
5)JST戦略的創造研究推進事業(ACT-X), 2021.10-2025.3 (代表成果へ選出)

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