感染症の「その場検査」を実現する技術

ー 超高感度・高速バイオセンシング技術の開発 ー

研究のねらい

COVID-19のパンデミック被害に鑑み、今後のウイルス感染症対策には医療現場での診断に留まらず、広く様々なシーンで活用できる検査法が必要です。 この革新的な感染症防疫のための検査装置を実現するには、感染初期の患者などでもチェックできる超高感度と、 検査現場で結果が分かる迅速性を高度に両立したウイルス検出技術が必要です。 我々は、抗体と磁性粒子を利用して高感度検出を可能にするデジタルイムノアッセイ技術をベースに、「多粒子格納型デジタルイムノアッセイ(MCDIA)」という技術を開発しました。 現状、世界最高感度のイムノアッセイと言われているデジタルELISAと同等の感度を、簡易検査キットに近い30分で実現可能です。 唾液など採取が容易なサンプルを用いて、高齢者施設や食品工場など内部への感染症原因ウイルスの持ち込みを防ぎたい施設の入口に設置するなどの運用を想定し、 実用化へ向けた開発を進行中です。

主な成果

インフルエンザウイルス、ノロウイルス、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)などをターゲットとして、MCDIAをベースとしたウイルス検出系を構築し、 例えばSARS-CoV-2検出系では患者唾液からの検査には十分な検出限界(感染性ウイルス粒子濃度0.1個/µL)を実現しました。
また、ノロウイルス検出系では検出限界60個/µLを測定時間30分で実現し、 世界最高感度のイムノアッセイ系であるデジタルELISAと同等の検出能力を約1/4の測定時間で達成しました。

MCDIAの信号画像とマイクロウェルアレイ状況イメージ

試作自動装置(概念実証機)

試作小型装置

用途・展開先

感染症原因ウイルス、疾病マーカーの検出・定量技術
施設入口での入場者の検査、食品衛生管理のための検査

成果リスト

1) WO2022/202217、「ウエルアレイと粒子とを用いた生体物質検出方法、ウエルアレイ及び検出装置」
2)Hiroki Ashiba et al., Analytica Chimica Acta, Vol.1213, p.339926 (2022)
3)Masato Yasuura et al., Sensors, Vol.23, p. 6830 (2023)

外部リンク

1)産総研プレスリリース 「測定時間1分」と「超高感度」、2種のウイルス検出法を開発」

謝辞
※本研究成果の一部は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務・助成事業(JPNP19005)、JST/JICA SATREPS JPMJSA2201の中で得られました。
また、本研究成果の一部は、JSPS科研費JP21H01466によるものです。
本研究に用いたノロウイルス様粒子の一部は、国立健康危機管理研究機構 国立感染症研究所より提供を受けた培養系で生成しました。
マイクロウェルアレイチップの作製にあたり、技術的支援を頂きました産総研の小林健 博士、岡本有貴 博士に感謝申し上げます。

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