太陽電池の原理

原理の概要 ― 上級編 ―

太陽電池は電子に光エネルギーを吸収させて、エネルギーを持った電子を外部に取り出します。エネルギーを持った電子を取り出す仕掛けには、「半導体」を使います。その仕掛けを、少しだけ専門的に解説します。

「半導体」とは、簡単に言いますと、条件によって電気を通したり通さなかったりする物質です。この半導体にはn型半導体と、p型半導体の2種類があります。太陽電池は基本的に、このn型とp型の半導体を積み重ねた構造をしています(図1 / *1)。

n型の半導体は”動きやすい”電子(伝導電子)がやや多く、接触した材料に電子が逃げ出しやすくなっています。逆にp型の半導体は伝導電子がやや少なめで、電子が足りない場所(正孔)を持っています。この2つを接合すると、n型半導体からp型半導体へと伝導電子が逃げ出して、正孔と打ち消し合います。

電子が逃げ出した後のn型半導体は電子が足りなくなりますので、プラスに帯電します。同様に、余分に電子をもらったp型半導体はマイナスに帯電します。このために接合部分に電界(内部電界)が生じます。内部電界は、n型半導体から逃げ出そうとする電子の流れを妨げるように働き、n型からp型へ電子が流れようとする力と釣り合った所で安定します。接合部分では電子と正孔が結びついた状態で動けなくなっていますが、そこには常に内部電界が働いています。伝導電子があれば、電界によってn型半導体へと押し流される状態になっています(図2)。

そこで接合部分の半導体に光が当たると、光のエネルギーによって新たに伝導電子と正孔が”叩き出され”ます(*2)。内部電界に導かれて、伝導電子はn型半導体へ、正孔はp型半導体へと移動します。その結果、電子を外部へ押し出す力(起電力)が生まれます。起電力は光を当てている間持続し、次々に電子が押し出されることで、外部の電気回路に電力が供給されます。押し出された電子は外部の電気回路を通じてp型半導体の側へ戻り、正孔と結合します(図3)。

まとめますと、太陽電池の仕組みは、

  1. 光のエネルギーを使って、半導体の内部で、動きやすい電子(伝導電子)を新たに発生させる。
  2. 半導体のpn接合の性質を用いて、伝導電子がエネルギーを失わないうちに、一方向に集めて取り出す。
と説明できます。

太陽電池のように、光を当てることで起電力が発生する現象は、光起電力効果(photovoltaic effect)と呼ばれます。

 

(*1)このようにp型とn型の半導体をくっつけた(接合した)構造はダイオードと呼ばれ、私たちの身の回りの機器で、整流やセンサー、発光(LEDやレーザー)などの用途に広く使われています。太陽電池は、とても大きなダイオードです。

(*2)専門的には、半導体の価電子が光(光子)によって励起される、と表現されます。

図1

↑図1 太陽電池は、薄いn型とp型の半導体を積み重ねた構造をしている

図2

↑図2 n型とp型の半導体を重ねると、接合部に空乏層と電界が出来て安定する

図3

↑図3 空乏層に光が入射すると、電子と正孔が叩き出されて流れ出す

▲ ページトップへ