実環境における発電量

統計データを活用して予測する

太陽光発電設備の発電量は、変換効率だけで決まるわけではありません。その地域の年間の日照量や設置角度など、様々な設置条件に影響を受けます。でも過去の統計データと設置条件から、導入前に年間の発電量をおおまかに見積もることができます。

年間の発電量に最も大きく影響する要因のひとつが、その地域の気候、特に年間の日照量です。日本では概して太平洋岸の年間日照時間が長く、より多くの発電量が期待できる地域が多くなっています(図1)。日本における年間の発電量は設備量1kWpあたり平均で1000kWh/年/kWpぐらいです。地域や年によって1~3割程度のばらつきがあります(図2)(*1)。

設備量あたりの発電量は、モジュール(パネル)の設置角度や方位でも変わります。設置地域の緯度や方角によって、最適な設置角度が変わります(図3)。最適角度から設置角度がずれるにつれて期待できる発電量は減りますが、その影響量は事前におおまかに見積もることができます(*2)。

季節によっても変動があります。日照時間が変わるほか、太陽電池は温度が高いときは変換効率が少し低くなる性質があります(*3)。夏期の日照量が多い時期より、5月ごろの比較的涼しい時期に発電量が多くなるケースも見られます(図4)。太陽電池の種類によって温度特性が異なるため、同じ設備量でも年間発電量に差がつく場合があります(太陽電池の種類については、こちらをご覧下さい)。なお原理上、雪がパネルにたくさん積もっていると発電できません。こちらは実用上差し支える場合が考えられますので、多雪地域では事前に積雪対策(*4)を含めた検討が必要です。

ホコリによる影響は、日本の平均的な環境と設置条件では定格性能の5%未満で、雨によって洗い流されて回復すると考えられます(図5)。このため、一般的には日常的な清掃が必要ありません。ただし水で落ちにくい汚れや落ち葉などが付着して取れない場合は、清掃した方が良い場合もあります。また通常は汚れが流れやすいようにある程度(たとえば15度以上)の傾斜をつけて設置しますが、デザイン上の都合などで水平または低い角度で設置したい場合(*5)は、設計時に周囲環境などを確認して汚れの影響がないことの確認をお勧めします。


(*1)…この発電量のデータには、設備の性能、設置角度や気温の違いなど、設置条件の違いを全て含む平均の値です。実際の発電量は、設置条件や設備の性能、その年の天候によってある程度増減します。

(*2)…この他、周囲の障害物がパネルに影を落としたりすると発電量が減ります。また、積雪にも影響を受けます。事前の検討は入念に行いましょう。

(*3)…半導体の禁制帯幅が狭まる性質に由来するもので、温度上昇10℃あたり、出力が2~5%程度減少します。ただし、恒久的なダメージを生じるものではありません。実際、砂漠や宇宙空間(いずれも、温度が100℃以上に上がる場合があります)といった過酷な環境でも、太陽電池は広く使われています。

(*4)…設置角度を急にして、雪が積もりにくくするなどの対策が用いられています。ただし太陽電池パネルは割雪機能を持たないため、雪の落下により屋根下の物損回避なども考慮した設計が必要です。また、太陽電池は積雪加重および落雪時のフレームへの影響などを考慮したものを利用しましょう。

(*5)…水平もしくはそれに近い角度で設置すると汚れがたまりやすくなり、周囲環境によっては10%程度の出力低下を起こす場合も考えられます。

(最終更新:2009年3月24日)

年間日照量の分布

↑図1 年間日照時間の分布(クリックで拡大します)

実際の発電量の例

↑図2 実際の年間発電量の例(クリックで拡大します)

設置角度・方位の影響

↑図3 設置角度や方位の影響(クリックで拡大します)

月別発電量の例

↑図4 月別の発電量の例(クリックで拡大します)

ホコリの影響

↑図5 ホコリの影響と雨による回復の模式図。設置傾斜角15度、東京都内での計測例による。(クリックで拡大します)

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