出力変動と緩和策

燃料いらずの太陽光や風力を活かすために

太陽光発電や風力発電は日射や風次第で出力が変動します。しかしその一方で運転用の燃料が不要ですので、これら変動性の再生可能エネルギー電源(Variable Renewable Energy, VRE)からの電力をできる限り利用することが、他の電源の運転用燃料の節減に繋がります。このためには、下記のような対応策を組み合わせて実施する必要があります(*1)。

(1) 送電線や変電所の増強
 広域分散による均し効果(図1)を高めるほか、今まで一方通行だった電力の流れを双方向にすることも必要になります。

(2)VREの出力予測
 気象予報等を用いて、地域全体や国全体のVREの出力を予測します。これによって、起動に時間がかかる電源でも、需要の少ない時間に完全に停止させておくことが可能になります(図2) 。

(3)柔軟性の増強
 例えばガスタービン火力発電等、すばやく起動・出力調整できる電源を増強します。VREの出力が急減するような局面で、他の時間がかかる電源が起動できるまでの中継ぎ等に用います。稼働時間が比較的短い場合が多く、効率よりも柔軟性の高さが重視されます。また近年は蓄電池の価格も低下していることから、短時間・高速の柔軟性提供に用いられる例が増えています。

(4)需要の制御
 造湯や空調、工場での生産活動、蓄電池の充電等の需要のタイミングを、需給状況に応じてずらして貰います(図3)。これにより、柔軟な電源が増えるのと同様の効果が得られます。また将来的には、余剰電力で水素やメタンガスを生成する、Power-to-gas 技術の活用も期待されています。

(5)VREのモニタリングと出力制御
 VREのその時点での出力を正確に把握し、需給状況によって電圧・周波数・位相や出力電力を変えさせます。これによって、VREの出力が過大になることを防ぐ(出力抑制)だけでなく、そのときの気象が許す範囲内において、VREを系統の安定性を支える力(アンシラリーサービス)として活用することも可能になります。

(6)溜める
 VREの変動への対応策としては、揚水発電や蓄電池の利用も有効です。
 現時点では大規模かつ長時間の蓄電は、揚水発電が主に用いられています。しかし揚水発電は立地に制限があり、利用出来る量が限られます。
 蓄電池は出力を一瞬で変化させることが可能で、電圧や周波数の高速な変動への対策としても用いられます。また送配電網が無い、もしくは極めて貧弱な地域では、長時間の蓄電用途にも用いられます。しかし電力系統の規模が大きい場合は、長時間の蓄電はまだ比較的高コストなため、他の対応策が優先的に用いられます。現在の技術でも、VREが電力供給に占める割合が少なくとも25~40%程度になるまでは、長時間かつ大規模な蓄電池設備は基本的に不要とみられています(*1)。
 一方で蓄電池のコストも近年急激に低下しており、日射条件の良い国では太陽光と組み合わせることで、家庭用の系統電力より安く電力が得られる場合も出現しています。また電気自動車やプラグインハイブリッド車も、今後の普及が予測されています。このため将来的には、蓄電池もVREの活用に一役買うようになることが期待されます。
 この他、圧縮空気の形でエネルギーを溜めるCAES (Compressed Air Energy Storage) や、水素やメタンの形で溜める Power-to-gas等の技術開発も行われています。


(*1)…IEA, Power of Transformation, 2014年 (電力の変革

 

(最終更新:2018年1月11日)

家一軒分の設備での例

↑図1 分散配置による均し効果のイメージ(クリックで拡大します)

 

分散配置によるならし効果の例

↑図2 出力予測のイメージ(クリックで拡大します)

 

ならし効果の概念図

↑図3 需要制御のイメージ(クリックで拡大します)

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