"中国都市部における居住環境中のVOCs実態調査

倪悦勇、熊谷一清、吉永淳、吉野博2、篠原 直秀3、柳沢幸雄  

東京大学
2東北大学
3産業技術総合研究所

室内環境学会誌Vol.9 No.3 pp.61-1973 (2007)


概要

本研究では、中国における揮発性有機化合物(VOCs)とカルボニル化合物の個人曝露量を把握し、また個人曝露量への室内環境の影響を明らかにすることを目的として、中国の3都市で計40軒の住宅(成都30軒、北京5軒、長沙5軒)を対象として、VOCsとカルボニル化合物の室内濃度、屋外濃度、個人曝露量を調査した。その結果、ベンゼン、トルエン、キシレン、ホルムアルデヒドの室内濃度、室外濃度のいずれもが、既往の研究で報告されている他の先進国の都市より高かった。VOCs及びカルボニル化合物の個人曝露量と室内濃度は強く相関していた。ほとんどのVOCsとカルボニル化合物のI/O比(室内濃度/室外濃度)は1以上であった。さらに、成都市のデータを用いて、VOCs室内濃度、個人曝露量と内装のグレード、内装後の経過時間、床内装、壁内装、単位床面積あたり家具数、家具の平均使用年数、窓開け換気時間、喫煙などの因子との関係について検討した結果、内装の経過時間、内装のグレード、内装の材質、家具の平均使用年数が調査した住宅の室内環境中のVOCsとカルボニル化合物濃度に有意に影響することが判明した。また、個人曝露量を用いてベンゼンとホルムアルデヒドの吸入曝露による生涯発がんリスクを計算したところ、いずれも10-4オーダーの高いレベルであったため、中国の都市部の住宅における居住環境中ベンゼンとホルムアルデヒドへの曝露による発がんリスクの低減は早急に解決すべき課題である。

キーワード

China, volatile organic compounds, carbonyl compounds, indoor, outdoor, personal exposure


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