"持続可能な生態系のための化学物質の生態リスク評価およびその管理のあり方について"
林 彬勒
産業技術総合研究所
環境情報科学, Vol.34 No.4 pp.16-23 (2006)
概要
私たちの日常生活や社会の経済活動は多種多様な化学物質によって支えられている。「化学物質のない社会、化学物質のない生活」は成り立たないといっても過言ではない。その有用性とは裏腹に、化学物質によるヒト健康および生態系への影響事例は枚挙にいとまがない。私の所属する研究センターでは「絶対的な安全は存在しない、リスクは必ずある」という理念のもとで、化学物質の共存利用をめざす環境管理政策を提案するための研究をおこなっている。化学物質が大気、水、底質、および土壌の環境媒体に排出されたあと、摂取媒体や食物連鎖を通じて人や生態系に影響を及ぼす可能性がある。こうした影響を適切に評価し管理をおこなうため、ヒト健康リスク評価、生態リスク評価、およびその費用対効果評価が不可欠である。本報では化学物質の生態リスク評価およびその管理のあり方について、これまでに取り組んできた研究や考えてきたことなどを含め紹介する。
キーワード
生態系、生態リスク評価、化学物質、管理