"化学物質過敏症患者の症状発現時の行動および症状と化学物質への曝露との関係"
篠原 直秀1, 柳沢 幸雄2
1産業技術総合研究所
2東京大学
臨床環境医学, Vol.13 No.2 pp.93-101 (2004)
概要
化学物質過敏症患者38人を対象として,active sampling法とpassive sampling法を併用したAS/PS試験によって,過敏症状を誘発する化学物質とその濃度を測定した。行動や症状の記録も同時に行い,過敏症状を誘発した化学物質との関連を探った。
4分の1以上の患者において過敏症状を誘発する化学物質となったのは,ホルムアルデヒド,トルエン,アセトアルデヒドであった。主な症状は,頭痛,喉痛,吐き気,目の違和感,めまいであり,その際の行動は,排気ガス臭がした,閉めきった部屋にいた,タバコ臭がした,印刷物を読んだ,物置/押入れを開けたというものであった。
過敏症状を誘発した化学物質と症状の比較からは,両者の関係が患者ごとに大きく異なることが示唆された。過敏症状を誘発した化学物質と行動の関係では,p-ジクロロベンゼンおよびm/p-キシレンと物置/押入れを開けるという行動との間に有意な関係が認められた。
さらに患者の通常生活時の曝露濃度は,どの物質に関しても同居している健常者より有意に低い範囲に分布しており,患者の日常生活が不自由なものであることが明らかになった。
キーワード
Multiple chemical sensitivity (MCS), Behavior, Symptoms, Volatile chemicals, AS/PS method